2. 数値予報モデルを用いた海上風推算手法の検討
本章では、数値予報モデルを使った推算手法の検討を行った。
数値予報モデルは、ペンシルバニア州立大学と米国大気科学センターにより開発されたメソ気象モデルMM5を使用した。検討は、平成16年度事業「台風時の内湾海上風推算の研究」において、課題としてあげられた、(1)台風ボーガス、(2)同化手法について検討した。台風ボーガスは、気象庁ボーガスとMM5付属のボーガスの調査を行い、データ同化は、ナッジングとIAUについて調査を行った。
検討フローを図2.1に示す。
図2.1 検討フロー
本項では、八代海・周防灘に高波をもたらした台風事例を対象に、数値モデルの検討を行った。数値予報モデルの、(1)計算領域、(2)計算設定を以下に示す。
(1)計算領域
計算領域は、図2.2に示すように、計算領域1(大領域)は、水平解像度13.5km×13.5kmで140×140の格子数からなり、台風を含む環境場を覆い、台風の移動を推算することを目的とした。計算領域2(小領域)は、4.5km×4.5kmで271×181の格子数からなり、台風全体を含む領域を覆い、台風の内部構造を解像することを目的とした。平成16年度事業「台風時の内湾海上風推算の研究」では、241×181の格子数を使用していたが、初期の台風を捉えるため、計算領域を南に30格子分、広くとった。大領域と小領域は2way-nestingを行った。各領域とも、鉛直方向には、最下層をσ=0.997、最上層を70hPaとして、計32層を置き、800hPaより下層の大気境界層内に12層を集中させた。
図2.2 計算領域(左:大領域、右:小領域)
(2)計算設定
計算設定は、表2.1に示す計算設定を用いた。大領域の初期・境界条件には、大気は、気象庁発行の領域客観解析データ(RANAL、水平解像度20km)を、海水温は気象庁発行のアジア域客観解析データ(Near-goos、水平解像度0.25度)を用い、台風ボーガスを投入した。平成16年度事業「台風時の内湾海上風推算の研究」では、小領域の微物理過程は、Reisner graupel microphysics schemeを用いていたが、16年事業の調査で台風の気圧深度の推算精度のよかったSchultz graupel microphysics scheme に変更した。
表2.1 計算設定
項目 |
大領域 |
小領域 |
水平解像度 |
13.5km |
4.5km |
水平格子数 |
140×140 |
271×181 |
鉛直層 |
32 |
32 |
タイムステップ |
30秒 |
10秒 |
微物理 |
Simple ice |
Schultz graupel microphysics scheme |
積雲パラメタリゼーション |
Grell cumulus scheme |
none |
PBL scheme |
Eta PBL |
Eta PBL |
Radiation scheme |
Cloud radiation scheme |
Cloud radiation scheme |
Land-surface scheme |
Five-Layer soil model |
Five-Layer soil model |
初期・境界値 |
大気 |
RANAL |
- |
海水温 |
Near-goos |
- |
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