日本財団 図書館


4. 計算結果と考察
4.1 災害当日の氾濫状況の再現計算結果
 まず当日の氾濫状況の再現を試みるが,付近に海象観測所が存在しないため,計算上の外海との境界となる船溜開口部での流入条件(単位幅流量)の設定方法を検討する必要があり,本研究では,次式で与えることとした.
 
 
 ここに,qmaxは流量の振幅,Tfはその周期である.
 聞取り調査では,時間差はあるものの氾濫開始後約30分で県道と国道に囲まれた範囲が浸水し,その後約30分程度で水が引いたとのことであった.そこで、流量の周期Tfを90分と仮定し,流量振幅qmaxを数パターン変化させて計算を行い,氾濫開始後30分での浸水高を実測した痕跡高と比較することで,流入条件を決定した.
 図−7に氾濫開始後30分での浸水範囲(氾濫水のフロント)の計算結果を示す.図−1の浸水状況の調査結果と比較すると,浸水範囲は定性的によく一致していることがわかる.そこで計算結果の定量的な精度を検証するために,図−3中の10ヶ所の痕跡高実測点との比較結果を図−8に示す.図より,計算結果は全体的に実測値とよく一致しており,本計算手法は定量的にも十分な精度を有していることが確認できる.
 
図−7 浸水範囲(氾濫開始後30分:計算値)
 
図−8 計算結果の精度検証
 
 図−9は氾濫開始後10分までの流況を時系列で示したもので,氾濫水のフロントと流速ベクトルを重ねて描いている。これらの図より、仲西船溜を境にした西側と左側地区では氾濫水の広がり方に明確な相違が見られる。つまり,東側では氾濫水はまず国道堤防背後にある裸地や潮溜を中心に広がり,その後住宅地へと侵入しているのに対して,西側では氾濫水は直接住宅地に広がっている.表−1に示したように,東側に比べて西側で犠牲者や全壊家屋が多いのは,このような氾濫水の運動特性による氾濫水の持つ流体力の大きさの相違が影響していると考えられる。そこで次節では、氾濫水の流体力などの計算結果について考察する。
 
図−9 氾濫状況の計算結果
 
 


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION