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音楽(おんがく)のまち(3)――ウィーン
オーストリアの首都(しゅと)ウィーンは、ヨーロッパ文化(ぶんか)の交差点(こうさてん)と言われ(いわれ)ます。昔(むかし)のローマ帝国(ていこく)の北(きた)の境(さかい)にあったウィーンは、イタリア半島(はんとう)に栄えた(さかえた)ローマ文化(ぶんか)の北(きた)のはし。ドイツ語(ご)を話す(はなす)人々(ひとびと)にとっては、ドイツ語(ご)文化(ぶんか)の南東(なんとう)のはし。ハンガリーやチェコなど、東(ひがし)ヨーロッパの国々(くにぐに)にもとても近い(ちかい)場所(ばしょ)にあるこのまちには、ヨーロッパの東西南北(とうざいなんぼく)から、いろいろな言葉(ことば)や文化(ぶんか)を持った(もった)人々(ひとびと)が集まって(あつまって)きます。
ですから音楽家(おんがくか)たちにとって、このウィーンで認められる(みとめられる)ということは、世界中(せかいじゅう)から認め(みとめ)られるのと同じ(おなじ)くらいの、重要(じゅうよう)な意味(いみ)を持って(もって)います。ドイツから、フランスから、イタリアから、イギリスから、たくさんの音楽家(おんがくか)たちがウィーンのまちにやってきました。きょう聴いて(きいて)いただく作曲家(さっきょくか)たちのほかにも、ショパン、ロッシーニ、マーラーなど、このまちを一度(いちど)でも訪れ(おとずれ)なかった人(ひと)はいないのではないでしょうか。ウィーンで生まれた(うまれた)音楽家(おんがくか)たち、たとえば「ウィーンの心(こころ)」と言われる(いわれる)シューベルトや、ヨハン・シュトラウスの一家(いっか)は、人々(ひとびと)にとりわけ愛され(あいされ)ていて、まちのいたるところに、彼ら(かれら)の像(ぞう)などがあります。まちを流れる(ながれる)ドナウ川(がわ)、西(にし)に広がる(ひろがる)ウィーンの森(もり)・・・町中(まちじゅう)どこもかしこも、有名(ゆうめい)な音楽(おんがく)のふるさととなった場所(ばしょ)ばかりです。
ウィーンの人々(ひとびと)が大好き(だいすき)なコーヒーも、東(ひがし)のトルコからやってきた食(しょく)の文化(ぶんか)です。人々(ひとびと)がつどう伝統的(でんとうてき)なカフェハウスでは、コンサートも行なわれ(おこなわれ)、かつてはシューベルトやシュトラウスが演奏(えんそう)しました。とくにシュトラウスの音楽(おんがく)は、ヴァイオリン、ギター、クラリネットやアコーディオンを抱えた(かかえた)、楽しい(たのしい)「シュランメルン」の楽団(がくだん)によって演奏(えんそう)されることもあり、ウィーンのまちの生活(せいかつ)に欠かせない(かかせない)音楽(おんがく)でした。
ウィーンはまた、華やか(はなやか)な宮廷文化(きゅうていぶんか)が花開いた(はなひらいた)まちでもあります。現在(げんざい)でも、毎年(まいとし)冬(ふゆ)の舞踏会(ぶとうかい)シーズンには、美しい(うつくしい)ドレスに身(み)をつつんだ人々(ひとびと)が、オペラ劇場(げきじょう)やコンサートホール、王宮(おうきゅう)に集まり(あつまり)、まるでおとぎ話(ばなし)の世界(せかい)のように優雅(ゆうが)に踊り(おどり)ます。ウィーン・フィルハーモニーによる新年(しんねん)の「ニューイヤー・コンサート」や、舞踏会(ぶとうかい)の様子(ようす)は、日本(にほん)のテレビでも中継(ちゅうけい)されることがありますね。その一方(いっぽう)で、有名(ゆうめい)な現代音楽祭(げんだいおんがくさい)が盛大(せいだい)に開かれる(ひらかれる)など、ウィーンはまさに、伝統(でんとう)と新しさ(あたらしさ)のまちなのです。
このコーナーでは、みなさんからいただいた「オーケストラの質問(しつもん)」に大友直人(おおともなおと)さんやオーケストラの楽員(がくいん)さんがお返事(へんじ)をします。疑問(ぎもん)を解決(かいけつ)して、コンサートをますます楽しんで(たのしんで)くださいね。
■大友(おおとも)さんにとって音楽(おんがく)とはなんですか? (さとうまほさん 9才(さい))
神様(かみさま)がおつくりになったこの世(よ)にあるものの中(なか)で、最も(もっとも)素晴らしい(すばらしい)ものの一つ(ひとつ)だと思い(おもい)ます。 [大友直人(おおともなおと)]
■私(わたし)はピアノの先生(せんせい)に、「かわいらしく」とか「雰囲気(ふんいき)ががらりと変わる(かわる)ように弾き(ひき)ましょう」といわれます。どうしたらうまくできますか? (原 朋子(はら ともこ)さん 8才(さい))
音楽(おんがく)を演奏(えんそう)することは、演技(えんぎ)をすることに通じる(つうじる)ものがあると思い(おもい)ます。演奏(えんそう)するときはまず何(なに)を伝え(つたえ)たいか、音(おと)にどういう気持ち(きもち)をこめたいのかを考えて(かんがえて)ください。嬉しい(うれしい)なら弾き(ひき)ながら笑って(わらって)しまう位(くらい)に、悲しい(かなしい)なら涙(なみだ)を流し(ながし)ながら弾く(ひく)程(ほど)に、音楽(おんがく)に入り(はいり)こみましょう。ひとつひとつの音(おと)を大切(たいせつ)に、あなたの感情(かんじょう)を楽器(がっき)に投げ(なげ)つけ楽(らく)に演奏(えんそう)してみてください。 [フルート:高野成之(たかのしげゆき)]
■打楽器(だがっき)の人(ひと)は家(いえ)で練習(れんしゅう)したらうるさいと思う(おもう)のですが、どうやっているのですか? (原田弥央子(はらだみおこ)さん 9才(さい))
打楽器(だがっき)は全部(ぜんぶ)で何種類(なんしゅるい)ありますか?珍しい(めずらしい)打楽器(だがっき)は何(なに)ですか? (北沢早紀子(きたざわさきこ)さん 9才(さい))
ティンパニや大太鼓(おおだいこ)は、オーケストラの練習所(れんしゅうじょ)で練習(れんしゅう)しますが、マリンバやシンバルは音(おと)が出ない(でない)練習用(れんしゅうよう)の楽器(がっき)を使って(つかって)家(いえ)で練習(れんしゅう)します。でも高校生(こうこうせい)の頃(ころ)は、先生(せんせい)に「河原(かわら)で練習(れんしゅう)してこい!」と言われ(いわれ)て、昼間(ひるま)から河原(かわら)で小太鼓(こだいこ)をずっと叩いて(たたいて)練習(れんしゅう)していました。音(おと)を気(き)にせず思う存分(おもうぞんぶん)に練習(れんしゅう)できましたけど、周り(まわり)の人(ひと)はきっと驚いて(おどろいて)いたと思い(おもい)ます。(笑)「叩いて(たたいて)音(おと)がでるもの」はなんでも打楽器(だがっき)になりますので、数(かず)は無限大(むげんだい)で数える(かぞえる)ことはできません。私(わたし)の出身(しゅっしん)の音大(おんだい)だけでも300種類(しゅるい)以上(いじょう)あったかな。珍しい(めずらしい)楽器(がっき)や曲(きょく)がたくさんあって面白い(おもしろい)ですよ!鉄(てつ)くずやレールなど鉄(てつ)だけの楽器(がっき)で演奏(えんそう)する「アイアン・シンフォニー」という交響曲(こうきょうきょく)や、壊れた(こわれた)自転車(じてんしゃ)、空き缶(あきかん)、燃えない(もえない)ゴミ等(など)で演奏(えんそう)する「リサイクル」という曲(きょく)をやったことがあります。アフリカの曲(きょく)では、木の実(きのみ)を束ねた(たばねた)物(もの)やヤギの爪(つめ)を乾かした(かわかした)物(もの)を楽器(がっき)に使い(つかい)ました。[打楽器(だがっき):新澤義美(にいざわよしみ)]
■吹奏楽団(すいそうがくだん)でトランペットを吹いて(ふいて)いるのですが、高い(たかい)音(おと)がでません。どうやったら高い(たかい)音(おと)が出ます(でます)か。 (広木花奈(ひろきかな)さん 10才(さい))
練習(れんしゅう)をする時(とき)は、無理(むり)に高い(たかい)音(おと)を出そう(だそう)としてもいい音(おと)はでません。まずは、自分(じぶん)の吹ける(ふける)音域(おんいき)の音(おと)だけに集中(しゅうちゅう)し、その音(おと)を綺麗(きれい)に出す(だす)ようにと心がけ(こころがけ)ながら、毎日(まいにち)丁寧(ていねい)に練習(れんしゅう)をしてください。たくさん練習(れんしゅう)をして、余裕(よゆう)ができて楽(らく)に綺麗(きれい)な音(おと)が出る(でる)ようになったら、少し(すこし)ずつ音域(おんいき)を広げて(ひろげて)いくとよいと思い(おもい)ます。[トランペット:野沢岳史(のざわたけふみ)]
■オーケストラにはたくさんヴァイオリンの人(ひと)がいて、音(おと)を合わせる(あわせる)のは難しく(むずかしく)ありませんか? (矢島莉紗(やじまりさ)さん 9才(さい))
難しい(むずかしい)時(とき)もありますよ(笑)。大勢(おおぜい)のヴァイオリニストが音(おと)を合わせる(あわせる)には、「目(め)」と「耳(みみ)」をたくさん使い(つかい)ます。目(め)で指揮者(しきしゃ)とコンサートマスターをみながら、耳(みみ)で周り(まわり)の音(おと)を一生懸命(いっしょうけんめい)きいているんです。周り(まわり)の演奏(えんそう)にあわせたり、主題(しゅだい)を弾いて(ひいて)いるパートがどこなのかを常に(つねに)考えて(かんがえて)います。目(め)と耳(みみ)を同時(どうじ)に働かせて(はたらかせて)大忙し(おおいそがし)(笑)。そして一番(いちばん)大切(たいせつ)なのは、「みんなで音(おと)を合わせ(あわせ)て、一緒(いっしょ)にいい演奏(えんそう)をしよう」という気持ち(きもち)を心の中(なか)に持って(もって)いることだと思い(おもい)ます。 [ヴァイオリン:廣岡克隆(ひろおかよしたか)]
■私(わたし)はオーボエを始めた(はじめた)ばかりです。すぐリードが減って(へって)しまいますが、どうすればこわれずに吹け(ふけ)ますか? 素早く(すばやく)キーを押さえる(おさえる)方法(ほうほう)はありますか? 上手(じょうず)になるにはどんな練習(れんしゅう)をしたらいいか教えて(おしえて)ください。 (小林桃莉さん 10才(さい))
リードはとても壊れ(こわれ)やすいものなので、歯(は)にぶつけたりしないように、それから出し入れ(だしいれ)の時(とき)もケースにあてたりしないよう大切(たいせつ)に扱い(あつかい)ましょう。キーを押さえる(おさえる)ときは、力(ちから)を抜いて(ぬいて)指(ゆび)を動かした(うごかした)方(ほう)が、指(ゆび)が楽(らく)に早く(はやく)動く(うごく)と思い(おもい)ます。まだ手(て)が小さい(ちいさい)かもしれないので、無理(むり)をしすぎず楽しんで(たのしんで)練習(れんしゅう)をつづけてください。上手(じょうず)になる練習方法(れんしゅうほうほう)は、私(わたし)も知りたい(しりたい)くらい(笑)。でも少し(すこし)ずつでもよいので毎日(まいにち)楽器(がっき)を吹く(ふく)ことが一番(いちばん)かな。そして色んな(いろんな)演奏(えんそう)をたくさんきいて、「こういう音(おと)を出し(だし)たい」という憧れ(あこがれ)の音(おと)を見つけて(みつけて)ください。その音(おと)を思い描いて(おもいえがいて)、近づく(ちかづく)ように練習(れんしゅう)してみるとよいと思い(おもい)ます。[オーボエ:福井貴子(ふくいたかこ)]
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