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(3)実験結果
 図2.2-4は台風10号(左)と台風15号(右)の風応力を与えたときの15m深の密度と流速ベクトルの分布を示している。図中の時間表示は台風による風が吹き始めてからの経過時間である。台風の経路の違いにより、発生する流れや密度変化は全く異なる応答を示していることがわかる。これは、台風10号に伴いモデル海域には主に南風が吹いたことに対して、台風15号の場合では北風が吹いたことによる。両ケースで風向は異なるが、風が吹いている期間の密度の分布形態に関しては、多くの共通点が見つけられる。たとえば、最も大きな密度の変動が生じる場所は房総半島の東側で、その次に東京湾奥部や駿河湾、相模湾の奥東部でも大きな密度変化が生じているが、変動は房総半島東岸と逆である。以上のように風が吹いている時間帯には共通点が多く見られたが、台風による風が弱まると、台風10号の場合には強い流れの分布だけが岸に沿って西方へ伝播するのに対し、台風15号の場合には軽い水(暖水)を伴った強い流れの分布が岸に沿って、西方へ伝播していることが分かる。台風15号による暖水の大半は東京湾口を横断し相模湾、駿河湾と西方へ伝播するが、140時間後には東京湾の湾口東部には暖水が波及していることが分かる。
 
図2.2-3 テスト実験を行った台風の経路.
 台風10号は四国に上陸し、その後、本州を縦断するように北上した。台風15号は九州の南方で急に進路を変え、本州南岸を北東方向に進んだ。
 
図2.2-4  台風10号(左)と台風15号(右)の外力を与えた場合の計算結果.
 カラーは密度偏差(基本となる密度場からの偏差)を示し、暖色系は軽くなっていること(高温化)を示す。図中の矢印は流速を示す。


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