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1.2.2 レーダ画面上における舶舶映像画素数からの舶体長の推定
 海上交通の解析を行う場合、船舶の位置、進路、速力の他、船体長も重要な要素である。本システムで得られる情報は、前節までに示したように、レーダ画像から船舶の位置、進路、速力とAISから船種、船体長の情報を得ることが出来る。しかし、AIS搭載船は、一日70隻〜80隻程度であるため、東京湾を航行する全船舶の船体長を直接知ることは出来ない。しかし、レーダ画面上における船舶映像の大きさと船体長の間に比例関係があるすれば、船舶影像の大きさから船体長を推定することが可能となる。
 
図1.2-21  レーダによる連続観測を行った場合の船舶影像画素数の変化
 
 レーダ画面上の船舶影像画素数は、図1.2-21に示したように、船舶の大きさやレーダ局と船舶との位置関係によって異なる。船舶が大きく船舶からのレーダ波の反射が強いほど、レーダ画面上の船舶映像は大きく示される、また、レーダ局から離れた場所では、レーダのビーム幅の影響で大きく表示される。
 上記の性質を考慮し、船体長の推定には次の手順を踏んだ。
 防衛大局での目視観測をした船舶を元に、防衛大、東扇島レーダ画面上から船舶の全長を推定できるように、船舶の全長と船舶の映像輝点画素数との関係から長さ推定式を求めた。
 防衛大でレーダ観測と目視観測、及び航行船舶の写真撮影を行い、あらかじめ設定しておいた目視観測線を通過する時刻により目視観測した船舶とレーダ画面上の船舶映像との同定を行った。
 図1.2-22の上図は防衛大局における写真撮影をした船舶である。図1.2-22の下図に示すように写真に写った船体長(X)と、レーダによって計測した距離(D)から実際の船舶の船体長を求めることが出来る。
 
図1.2-22 防衛大学校付近における目視観測
 
 次に、レーダ画面上においてレーダ局から船舶までの距離と船舶映像画素数との関係を調べる。図1.2-23に、防衛大のレーダ画面上で、防衛大のレーダ局より4〜6mileの間を航行した船舶のレーダ局からの距離と船舶映像画素数から、距離と画素数の関係を最小二乗法をもちいて求めた回帰直線を示す。この回帰直線を用いて5mile地点の映像画素数を求める。
 多くの船舶について防衛大から5mileの地点の映像画素数と船体長をプロットし、これらの関係を求めたものを図1.2-24に示す。なお、図中にはAISにより船体長を取得したデータも含まれている。
 
 東扇島局については、レーダ局より3〜5mileの間を航行した船舶のレーダ局からの距離と船舶映像画素数から、距離と画素数の関係を最小二乗法をもちいて求めた回帰直線を図1.2-25に示す。この回帰直線を用いて4mile地点の映像画素数を求める。
 多くの船舶について東扇島局から4mileの地点の映像画素数と船体長をプロットし、これらの関係を求めたものを図1.2-26に示す。図中にはAISにより船体長を取得したデータも含まれている。
 
図1.2-23  防衛大局から4〜6mileを航行中の船舶映像画素数と距離
 
図1.2-24  防衛大局から5mileの距離における船舶映像画素数と船長との関係
 
図1.2-25  東扇島局から3〜5mileを航行中の船舶映像画素数と距離の関係
 
図1.2-26  東扇島局から4mileの距離における船舶映像画素数と船長との関係
 
 これら推定式から、防衛大局から4〜6mile、東扇島局から3〜5mileの間を航行した船舶については、防衛大局から5mile、東扇島局から4mileの距離における船舶映像画素数を図1.2-23、図1.2-25に示すような回帰直線をもちいて決定し、船体長を図1.2-24、図1.2-26に示した式により求めることが可能となる。
 
 防衛大局から4〜6mile以外の範囲を航行した船舶については、レーダ局から任意の距離にある船舶映像画素数をレーダ局から5mileの距離にある船舶映像画素数に変換する回帰式を作り、5mileの距離における船舶映像画素数を求めた。そして図1.2-24の回帰式により船体長を推定した。東扇
 この方法により東京湾内を航行する全船舶の船体長の推定が可能となる。


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