(2)レーダ画像とAIS情報の転送
2局のレーダ画像とAISデータは次の順で処理される。
A. 生データ出力:レーダ画像、AISデータファイルの出力
B. コンテンツ加工:レーダ画像、AISデータファイルの出力
C. コンテンツ圧縮:画像ファイルの圧縮
D. コンテンツ転送:レーダ画像とAISテキストデータの転送
また、処理されるデータの設定は次の通りである。
レーダ画像ファイル
●サイズ
x[Pixcel]×y[Pixcel]=512×512,768×768,1024×1024,1280×1280
●画像形式
Windows BMP形式:8bit、モノクロ256形式
●ファイル名
記録開始時に指定するフォーマット形式により決まる。図1.1-17に監視局とWEBサーバ内のファイル構成を示す。
AISデータファイル
●ファイリ形式 テキスト:CSV 改行コード:LF+CR 文字コード:SJIS
●出力タイミング 5秒、10秒、15秒、30秒、60秒
クラスA目標は、Message 1,2,3の動的データとMessage 5の静的データを組み合わせたものである。各目標データの受信が設定時間以上ない場合、その目標データを消去する。
図1.1-17 監視局とWEBサーバファイル管理
WEBでデータを公開するため、ファイルは、年月日時で名付けられたフォルダに、2局のレーダ画像と合成画像(png形式とgif形式)を保存する。レーダ画像は図1.1-16に示したものと同様のファイルである。AISデータは、任意の時刻毎にファイルに保存される。(図1.1-17参照)
AISのデータには、1行目にファイルを作成した日時、2行目に受信した船舶の隻数、3行目以降に示した船舶のデータを書き出されている。
(3)AISを利用した海上交通流解析
一般にAISは、国際VHFの周波数帯のうち、国際共通周波数を使用して船舶同士又は船舶と陸上施設との間で通信を行うが、我が国ではこの国際共通周波数がマリンVHFの無線局で使用されている。そのため東京湾内でAISを使用する場合、湾入り口付近で地域周波数に切り替わり運用されている。今後、国際的、国内的に、AISの国際共通周波数の利用が要請されていることから、地域周波数による運用を中止して、国際共通周波数による運用が可能となるよう、マリンVHF無線局の周波数を移行することとなった。
その移行が完了するまでは、東京湾内は地域周波数で運用されているため、東扇島AISは東京湾で使用されている地域周波数のみを受信できる設定とし観測を始めている。
図1.1-18は、2006年2月11日(10:00〜11:00を除く)に観測されたAIS位置情報をプロットした図である。東京湾入り口付近から東京湾内全域をカバーしていることがわかる。この日のAIS受信データのうち、静的データまで毎回受信することが出来たのは全隻数の半分程度であった。
図1.1-19は、1時間毎に受信した隻数の平均値を示し、図1.1-20は「航行状態」から船舶の航行状態の割合を示したグラフである。夕方になるにつれ、錨泊船が多くなるものの、データの中には錨泊中と思われる状態でも「機関航行中」と表示される船舶もあり、この割合がそのまま東京湾内の航行状態を示すとは言い難い。航行状態には、操縦制限、操縦不能という信号を出す船もあったが、これらは乗組員がAISを設定している最中に、この信号を出してしまったと思われる。
図1.1-21は船種別の船舶の割合、図1.1-22は船体長別に割合で示したグラフである。
AIS情報はテキストデータで受信できるため、サーバでさまざまな処理を行いやすい。WEBで公開する場合、これらAIS情報を用いて図1.1-19〜図1.1-22の内容をリアルタイムで配信することが可能である。
図1.1-18 AIS位置プロット図
図1.1-19 1時間毎の平均隻数
図1.1-20 1時間毎の航海状態分布
図1.1-21 種類別船舶の割合
図1.1-22 船体長別の割合
(4)ホームページの作成
これらのデータを用いてレーダ情報の公開に向けてホームページの作成を行った。これらのデータを用いて考えられるコンテンツとして
(1)レーダネットワークシステム概要
(2)レーダ仕様
(3)AIS仕様
(4)リアルタイムレーダ画像表示
(5)リアルタイムAISプロット画像の表示、AISデータを用いた解析結果の表示
(6)レーダ画像とAIS位置情報のプロット重畳表示
が考えられる。この内、(1)〜(3)レーダネットワークシステム概要、レーダ仕様、AIS仕様についてはハードウェアの構成を示すことになるため、機器を変更しない限り変える必要はない。しかし(4)以降は自動的に最新版のレーダ画像とAIS情報を読み込み表示させることになる。
レーダ画像とAIS情報をリアルタイムに近い状態で表示させるためにJavaアプレットを利用することにした。
Javaアプレットとは、WebページのHTMLソースコードから参照されるプログラムであり、Webサーバからブラウザに動的にダウンロードされる。ダウンロードされたアプレットは、ブラウザの環境で実行される。
最新のレーダ画像を読み込むプログラムの場合、ホームページ閲覧者がWEBサーバにアクセスすると、HTMLファイルと、その中に含まれるJavaアプレットもダウンロードされる。
図1.1-23の左側は、閲覧者のパソコンを示し、右側がレーダネットワークシステムに接続されたWEBサーバを示す。この閲覧者側のパソコンにダウンロードされたJavaアプレットは一定間隔でサーバにあるレーダ画像ファイルとAISデータを読み込む。WEBサーバ側のレーダ合成画像とAISデータは、監視局の設定で任意の間隔で更新されるため、最新の、または任意時刻の画像およびAISデータを読み込み、Javaアプレットの表示エリアに表示させることで、インターネットに接続されたパソコンのブラウザで閲覧することが可能である。
図1.1-23 ブラウザとWEBサーバのデータ通信概念
|