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1.1.2 リモートAIS観測システムの構築
 東扇島にはレーダアンテナとともにAIS受信機が設置されている。(図1.1-6に設置されたAISトランスポンダを示す。)
 
図1.1-6 AISトランスポンダ設置状況
 
 AISトランスポンダは、レーダアンテナの近く(設置場所の高さは地上から約50m)に設置されている。このAISは船舶に搭載される製品を使用しているが、送信は行わないように設定している。AISトランスポンダの仕様を次に示す。
 
周波数範囲 156.025MHz〜162.025MHz
デフォルトチャンネル 161.975MHz, 162.025MHz(現在は東京湾の地域周波数に設定)
電波形式 F1D, F2B
変調方式 GMSK, FSK
送信出力 12.5W/2W(送信機能は使用しない)
 
 東扇島レーダ局のサーバと併設して、AISコントローラ、接続箱を設置している。
 AISコントローラで、さまざまな設定(国際周波数と地域周波数の設定など)を行うことが可能であるが、AISコントローラはネットワークに接続されていないため、AISの設定を変える場合には、東扇島のレーダ局まで行き、直接設定しなければならない。
 図1.1-7にAISトランスポンダから東京海洋大学内にある監視局に設置されたAIS記録装置までのデータの流れを示す。
 東京湾内のAISを搭載した船舶が情報を発信すると、東扇島局に設置したAISトランスポンダが受信したNMEAデータは接続箱とRS422-RS232Cコンバータを介して通信用コンピュータに送られる。通信用コンピュータからはインターネットを介して東京海洋大学の監視局(レーダ画像合成アプリがインストールされているサーバ)におくられ、監視局に設置されたAIS記録装置で保存される。
 
図1.1-7 AISデータの流れ
 
図1.1-8 AIS記録装置
 
 図1.1-8に監視局に設置されたAIS監視装置のモニタを示す。モニタにはAIS情報を受信したときのタイムスタンプとVDM伝文が表示されている。
 送られてきたAIS情報は受信バッファに保存され、設定した時間間隔でAISデータのデコードが行われファイルヘ書き出される。
 デコードされたAIS情報には、船の識別番号、位置、進路、速力、船名、船体長他、船舶運航に必要とされる情報が含まれている。
 
1.1.3 船舶航行監視用Webサイトの構築
 ここでは、レーダ画像転送システムによって収集されるレーダ画像、AIS情報を利用したホームページを作成するまでの手順、方法について報告する。図1.1-9に示すように、防衛大レーダ局の画像と東扇島レーダ局の画像、AIS受信機で受信した情報は、インターネットを介して東京海洋大学に設置した監視局側に送られる。
 今回、WEB公開を目指して、WEBサーバを設置した。WEBサーバでは、監視局側から必要なデータを転送してもらい、閲覧者はインターネットを介して、このWEBサーバにアクセスすることで、WEBサーバのレーダ画像とAISデータを利用した様々なコンテンツの閲覧が可能となる。
 
図1.1-9 レーダ画像管理サーバとWEBサーバの構成
 
(1)レーダ画像のホームページ用ファイルヘ変換
 レーダ画像は、図1.1-10に示すように、レーダ局側で観測された画像が、任意の角度毎に分割され、監視局側に転送される。
 
図1.1-10 レーダ画像ファイルの転送
 
 もしレーダ局側の送信画像が更新されても、分割されたレーダ画像が未送信だった場合、その未送信の部分は新しい画像に更新される。そのため監視局側では、最新の受信画像データを受け取ることが可能である。そのため、監視局の画像を受信する回線は容量の上限まで使用されると予想される。
 ホームページを公開した場合、多くのパソコンからWEBサーバヘアクセスが発生する。そこで、本年度はWEB用の回線を設置した。図1.1-9に示した監視局とWEBサーバが接続しているRouterには2本の回線が接続されているが、1つがレーダ局からの画像データ、AISデータの通信専用回線、もう一つがWEB公開用の回線である。
 監視局のWEB公開のためのソフトウェア構成を図1.1-11に示す。レーダ局A、Bの通信制御クライアント(RcceCli.exe)は、既設のソフトウェアである。WEBにあたって2つのレーダ画像を合成するソフトウェア(レーダ画像合成アプリ:RxMerge.exe)を作成した。
 
図1.1-11 レーダ画像の流れ


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