平成17年度 新作紹介
わらって!リッキ
原作:ヒド・ファン・ヘネヒテン 脚色:さかぐちふみ
演出:櫻田欣之 音楽:川端清 美術:伊草梨津子
『わらって!リッキ』脚色にあたって
さかぐち ふみ
「みんなと違う」
それは、子どもたちにとって、大事です。いえ、大人たちにとってもそうかもしれません。理屈では、違っていて当たり前だと分かっていても、実際には「なんで自分だけ・・・」と思い悩んでしまうことがあります。
このおはなしの主人公、ウサギのリッキも、左の耳がみんなと違ってたれています。そんなリッキのたれた耳を仲間のウサギたちは容赦なくからかい、リッキは自分のたれた耳に自信が持てず、みんなのように両耳共ピンと立っている耳に強い憧れを持ってしまいます。
そこでリッキは、帽子をかぶったり、枯れ枝で耳を支えてみたり、あの手この手を使ってたれた耳を立たせようと苦心するのですが、それは自分を偽ることでしかなく、何の解決にもなりません。むしろ、そんなことをすればするほど、仲間たちから余計に面白がられ笑いものにされてしまうのです。それはどんなに辛く切ないことでしょう。からかう方は軽い気侍ちだったとしても、本人にとっては耐え難いことです。リッキの小さな胸に押し込められていた怒りや悲しみ、どうすることもできない無力感などが遂にこらえきれず爆発してしまいます。
そんなリッキやリッキと同じように悩んでいる全ての人に向けて、「そのままでいいんだよ。君はそのままで素晴らしいんだよ」
と伝えたくて、その思いをリッキのお父さんとお母さんに託し、この人形劇を脚色しました。
みんなと比べることをやめ、ありのままの自分を受け人れられるようになったとき、きっと誰もが自分の中にある宝物に気付くことができると思います。
「みんなと違っていたっていい」
この人形劇をご覧になって、そんな風に心から思えるようになってもらえたら、最高の喜びです。
演出ノート
櫻田欣之
人形芝居『わらって!リッキ』の観客の多くは、家から園へ生活の場を広げ、団体生活を通じて社会性を身につけようとしている子どもたちです。中には、多くの仲間たちとはどうしても馴染めない子どももいるでしょう。
社会性を身につけるとはどういうことでしょう?
いろいろある中で、周りの人たちとうまく同調していく術を体得することも大きな要素として考えられます。このとき、どうしても陥りがちなのが、みんなと同じことが正しく価値あることであると思い込んでしまうことではないでしょうか?
たれ耳のリッキは、両方の耳がピンと立っているマジョリティーなうさぎ仲間から見れば、まさにマイノリティーな存在で、リッキには自分のたれ耳が大変なハンディに思えるのも無理のないところでしょう。いじけて仲間から遠ざかってしまう子どもの中には、リッキのようにみんなと違うことをハンディと思い込んでしまう子どももいることでしょう。
リッキは自分のたれ耳が実はすばらしい特技を発揮してくれることに勇気を得ました。
一人ひとりがそれぞれの個性を尊重し誇りに思う気持ちが、子どもたちの心の奥の奥に残りますように・・・
作品制作にあたって
下村あきら
文部科学省の資料をみると、平成15年度のいじめ発生件数は2万3千件以上で8年ぶりに増加し、年々低年齢化してきています
その理由の一つに、自分と価値観の違うものは否定するという、自分本位な考え方があるのではないでしょうか。
他の人と比べて優劣をつけることではなく、違いを認識した上で、それぞれの個性を大切にし、認め合い、相手の立場に立って物事を考え理解しあう人間性豊かな心を育めたならと思い、制作しました。
「ひとり、ひとり、ちがっていてもいいんだよ!」
今回の新作「わらって!リッキ」と出合った子どもたちが、そして大人たちが、どのように感じとってくれるのか、今から楽しみです。
「わらって!リッキ」ご期待ください。
平成17年度 助成事業経過報告
本年度もご支援いただきありがとうございます
平成17年度も全国の熱いご期待にお応えして、日本財団の競艇公益金による助成事業「幼児に対する情操教育活動」が、多くの方々のご協力を得ながら順調に進行しています。
本助成事業では、北は北海道から南は沖縄まで、「すぎのこ巡回劇場」を待ち望む多くの子どもたちに、ナマの人形舞台の感動をお届けしています。
市町村合併や園児数の減少に伴う予算削減が進む中、日本財団のご支援により全国の小規模施設や山間僻地の子どもたちに、ナマの舞台の感動に触れてもらう機会を提供できますことを、深く感謝しています。
9月末までの助成事業の実施同数はつぎの通りです。
北海道9/青森4/岩手1/新潟11/島根1/福岡3/佐賀3
合計32回公演
◆講習会報告◆
9月14日〜15日両日、文京社会福祉専門学校に於いて、2年生を対象とした「影絵紙芝居」が行われ、当財団の文化部/道廣英彦と創造部/下村あきらの2名が指導に当たりました。
初日は、『マッチ売りの少女』や『一休さん』『アンパンマン』などの紙芝居を参考に、班毎に影絵作品を製作。2日目は、その作品の発表を行いました。
受講された学生のみなさん全員熱心に取り組まれ、それぞれが個性的で素敵な作品ができあがり、2日目の作品発表では下村の演技指導のもと、熱のこもった発表が行われました。
本講習で学ばれたことを、さらに工夫を加えながら卒業後、福祉の現場に役立てていただけることを期待しています。
なお、影絵紙芝居講習会は今後、すぎのこの事業のひとつの柱として積極的に展開して参ります。
開催ご希望の方は、事務局までご連絡ください。
◆活動記録◆
7/23 |
第一学期全国巡回公演終了 |
9/1 |
第二学期全国巡回公演開始 |
|
|