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5 波浪中船体運動
 ノンバラスト船型の波浪中諸性能を把握すべく、スエズマックスタンカーの在来船型とノンバラスト船型について各種の波浪中試験を実施した。波浪中性能は未だ絶対評価が難しいことから、主として在来船型に対する相対比較を行った。
 
図10 満載状態の波浪中船体運動の比較
スエズマックスタンカー
4m模型船 正面向波
 
図11 空荷状態の波浪中船体運動の比較
スエズマックスタンカー
在来船型:バラスト状態
ノンバラスト船型:ノンバラスト状態
4m模型船
 
 波浪中の船体縦運動に関する模型試験結果、計算結果を図10、11に示す。○印等は模型試験結果、実線等はストリップ法による計算結果である。図10は満載状態、図11は空荷状態の比較である。空荷状態においては波向を3種変えたときの比較を示している。これらの図によると、ノンバラスト船型の縦揺れは、満載状態では、在来船型に比べて小さいが、空荷状態では、在来船型に比べて少し大きい。しかし、その差は小さく、ノンバラスト船型の縦揺れは在来船型と同等であると言える。
 次に、横揺れ性能の比較として自由横揺れ試験結果を図12に示す。在来船型にはビルジキールが設置されているが、ノンバラスト船型においてはビルジキールを付けても横揺れ特性がほとんど変化しなかったことから、本図にはビルジキールを装備しない場合のデータを示している。本図から、ノンバラスト船型の固有周期が在来船型に比べて小さく、2/3程度となっている。これはノンバラスト船型のメタセンタ半径が非常に大きいことによる。このため、乗り心地が悪くなることが予想されるが、図で示されるように、ノンバラスト船型の減衰が大きく、固有周期が短い問題はかなり緩和されるものと考えられる。
 
図12 自由横揺れ試験結果の比較
スエズマックスタンカー
空荷状態
在来船型:バラスト状態
ノンバラスト船型:ノンバラスト状態
6.2m模型船 実船時間に換算
 
6 波浪中縦曲げモーメント
 構造強度に重要な影響を与える船体中央の縦曲げモーメントについて、在来船型とノンバラスト船型を比較する。
 図13の上図の○は、在来船型、ノンバラスト船型の満載状態、空荷状態について、4m模型船を用いた規則波中の模型試験結果を示す。実線、点線はスラミング衝撃荷重推定システムによる計算結果(スラミングが発生しない小波高で計算。剛体)を示す。下の図は波高1m当たりの縦曲げモーメント、上の図は船の長さ、幅も用いた無次元係数である。
 
図13 船体中央の縦曲げモーメント
(スエズマックスタンカー)
 
規則波中
 
不規則波中
 
 図13の下図は同じ模型船を用いた不規則波中の模型試験結果を示す。横軸は有義波高である。縦曲げモーメントの無次元化等にも有義波高を用いた。縦軸の縦曲げモーメントも有義波高と同じ考えで1/3有義値で表わした。
 満載状態においては、ノンバラスト船型の縦曲げモーメントは在来船型に比べて大きいが、船長、船幅を用いた無次元係数では同程度であり、(船長)2×(船幅)に比例していると言える。
 空荷状態の縦曲げモーメントを在来船型と比べると、規則波中の試験結果では同程度、不規則波中の試験結果ではノンバラスト船型の方が少し小さいことが判る。
 以上の試験結果をノンバラスト船型全体へ一般化するにはデータ不足であり、更なる検討・研究が必要と考えられるが、本研究開発においては、ノンバラスト船型の波浪中縦曲げモーメントMwは在来船型のそれをベースに(船長)2×(船幅)に比例するとして算定することとした。試設計に使用したノンバラスト船型の縦曲げモーメントを在来船型のそれと併せて図14に示す。
 
図14  在来船型の縦曲げモーメントと試設計に使用したノンバラスト船型の縦曲げモーメントの比較
 
スエズマックスタンカー
 
VLCC


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