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(3)職員の業務内容に関すること・職員の資格
・有給職員と実際に支援活動を行うボランティアで構成されている。
・有給職員は約1,000人がVS本部に登録され、370支部でマネージメントやコーディネートを担当している。
・有給職員の場合は、特別に専門的な知識を持っている人で、特殊な訓練を受けた方が支援に直接あたる。職員がボランティアを監督指導する。
・VS本部は、全国支援に関するマニュアル基準を設け、ばらつきのないようなサービスを行うが、この場合、スタッフがチームを作り、その基準どおりサービスが行われているかどうかのチェックをする。この期間が3ヶ月程で、全国同じサービスが実施されているかどうかは、97.3%確認できる。
・事件・事故が起こった場合、警察と協定の範囲内で警察が支援組織に対して管轄の警察から被害者情報が提供される。この間に提供を忘れた場合でも、コンピューターに自動的に入力されるシステムがとられている。その日に必ずVSには報告されるので、以前のような報告されていないミスはない。報告された中からVSのスタッフは情報に基づいて各支部のボランティアを照会する。支援の照会を受けた後、ボランティアと連絡をとり24時間以内に当事者とボランティアの時間調整を行う。
・インターネットの活用
 情報公開、ボランティアのリクルート、研修開発、財務管理、資金調達など全ての人が情報を共有できる(法律に関する被害者の権利等)。
・報告義務に関して
 警察から被害者情報が提供され、支援終了後、警察に対しての報告義務はない。
・活動内容について
(1)地域社会に対するサービス
(2)裁判所・証人に対するサービス
(3)サポートライン(AM9:00〜PM9:00)
 
* 被害者の情報は出来るだけ多く集めコーディネートする。
* 被害者支援をするボランティアは1名で、事件発生から24時間以内に支援するための連絡をいれる。連絡には手紙を書く。
* 2〜3日以内に被害者のところに訪問する。時間・支援内容も伝える。
* 支援にあたるボランティアは常に1名なので、孤立感がないようにサポートする側が注意をする。何か問題があれば、即解決するように常にチェックすることが大切。
* ボランティアがこれ以上続けられないことが報告された場合には、ケースはどうか、支援を続けることの困難な原因はどこにあるか、どこに責任があるか、コミュニケーションをとり精神面からきているか、家庭内にその原因があるのか、などを調べる。必要があれば、聞いたことを守秘義務の範囲内で聞く場合もある。
* 1ヶ月に1回スーパービジョンを行い、ボランティアの仕事内容などのチェックをし、ファイルを作成し問題をクリアしておく。
* セラピーも行う。自助グループを作る。
 
(4)ボランティアの業務内容・勤務・活動について
・実際に支援活動を行うボランティアは約1万人で、650人のボランティアが常に登録されている。支援のサービスに関わる人たちは、実務面は全て無償のボランティアが行っている。ボランティアは、大きな組織から給料をもらっている人よりも、被害者の立場からすると一番話しやすい相手だからである。
・支援内容には、家庭訪問(実務支援)・精神面(感情面支援)がある。
 精神面サポートは2段階ある。
レベル1: お話の相手をする。
レベル2: 資格のあるボランティアのカウンセラー(特別研修を受けた者)が対応する。
☆ 精神面・感情面の支援に関してはカウンセリングをし、お話をして聞くこと、そして共感する。決して指示はしないこと。
実務面
 業務面に関しては、活動の内容でサービスが違っている。
 保険会社への請求補助、保障の申請補助、外鍵の取り付け等までに2〜3日かかる場合もあるが、立場によって弱い人達には一日も早く支援をする。
 業者を使う場合は、被害者に行うサービスの提供が無料のために、助成金・慈善事業団からの資金調達したものから補助することになる。
 
・活動頻度について
 250人が証人支援サービスを行う。1週間に1日。裁判の前後を含めて支援活動を行う。支援の時間は、週に2時間のサポートが主であるが、訪れるのは1週間以内。回数に関しては、被害の状況・支援の内容によっても違う。
 それぞれの支部には地域委員会があり、6人の委員とその他ボランティアが、センターがうまく効率的にサービスが出来るようにサポートしている。仕事を持ちながらボランティアに関わる人は、時間のやりくりをして週4日関わる人もいる。
 24時間以内に連絡がとってあるので、安心して2〜3日後には支援に向かうことができる。
 基本的には、最初に被害者に関わった人が支援をするが、被害者自身がその方がいやだと言った場合のみ相談員を変更できる。被害者が特に同姓がよいと希望した場合以外は、特にこちらでは人選については考えない。
 
(5)広報啓発活動について
 イギリスVSの視察を終えて、30年間の活動実績を学べたことは、これからのあらゆる活動に大きな影響があることは述べるまでもない。
 英国の代表的な被害者援助組織VSが最初に作られたのは、1974年ブリストル地方である。運営は司法機関やソーシャルワーカーのプロによって行われた。その後、英国各地に同様の組織が作られ、1979年には全国被害者援助組織協会として全国組織となり、80年にロンドンに現在の本部事務所が置かれた。87年にはイングランドとウェールズの全州にVSが設置され、96年には370の地方組織が活動している。89年から新たなサービスとして裁判に関わる被害者および家庭への支援として証人サービスのパイロットが刑事裁判所において行われ、その有効性が認められ、96年にはイングランドとウェールズの全ての刑事裁判所に証人サービスが配置されることになった。証人サービスについては、日本ではまだ実施されてはいないが、弱い高齢者や未成年などサポートが必要とされている者に対して、証人で事実を証明する際、どれだけ大切な支援かを感じた。また、証人で事実を証明する以前に事前のケアが実行されており、証明する前、証明した後も、精神的なケアが完璧に実行されているところに驚いた。
 「証言すること」は一つ間違えれば、犯人からの逆恨みやお礼参りなど、証言した者に心の負担がかかってくるので、その点についてきめ細かい配慮がなされている。日本でも「証人サービス」を考えていけたらよいのではと思う。ビデオリンクや遮へいなど公判では行われているが、証人サービスについても将来的に期待したい。
 グレイター・マンチェスターVSでの活動内容ではイギリスは42地区あり、マンチェスターの本部でもある。マンチェスターには10の事務所がある。10の証人サービスがある。10が下級裁判で、2が上級裁判で裁判所は2つある。下級裁判では軽犯罪の裁判。ここでは一般の人が3人選ばれ、12ヶ月以下の懲役の言い渡しができる。上級裁判には裁判官がいて、重犯罪を審議し、取り扱います。以前にマンチェスターは15の区域があり、事務所があったが、2001年から1つの組織になりここの本部が統括することになった。
 一方、ロンドンは34の事務所があり、それぞれ活動を行っている。また、42地区エリアには委員会があり、グレイター・マンチェスターVSもその委員会のメンバーである。マンチェスターでは刑事裁判委員会があり、そこには本部の長が出席する。その他に刑務所長、警察署長、自治体の会長、裁判長、検察のサービスを行っているリーダー、保護観察官の長がそのメンバーになっている。
 さらに委員会では、「被害者への対応を、声を大きくして言っている。」さらにそのうち小さな委員会があり、被害者委員会の長をしている。小委員会では最近できた法令「被害者行動基準」について検討している。「被害者行動基準」は2006年4月に施行する。
 
被害者行動基準について
 かなり厳しい基準になっている。4月以降、諸官庁を含めて個人がこの法律に基づいて決められたサービスをおこなっているか、調査され、行っていない場合には解雇など、罰せられる。
 統括部は人事、支部のスタッフ採用、財務管理、資金調達など、全ての人に対してインターネットを通しての情報公開、ボランティアのリクルート、研修、開発などを行っている。その他、特別職として(人種犯罪、年齢、文化、障害者、性的、宗教に絡んだ犯罪)がある。ここには15人、マンチェスターには120人のスタッフ、700人のボランティアがいる。
 毎年、14万5,000件を扱っている。そのうちの90%は警察からである。その他、個人から、福祉関係や医者、市民相談所から来る。約80%は殺人、レイプ、泥棒、侵入犯、強盗である。これらサービスのうち、最小限のサービスは被害者に手紙を出していることである。約60%は直接会って支援をしている。被害者に対して手紙を出して支援を呼びかけることはとても大事なことであり、被害者が支援をしてくれることで安心感を持つことに繋がる。手紙から被害者によっては直接会うことになる場合もあるのではないか。手紙は大切な支援である。
 
証人支援について
 全てのボランティア採用は厳しいチェックを受ける。身辺調査、面接があり、申請書、紹介状、推薦状2通、警察のチェックを要する。ボランティアは4日間すべての研修を受けなくてはいけない。その後、もう1度面接が行われる。
 
ボランティア採用報告
 新聞掲載で行うが、高額なので記事に書いてもらう。ラジオ、TV、バスの広告。刑事裁判委員会17,000万ポンドがボランティア求人に対する補助。
 
広報啓発活動
・チャリティ
・キャンペーン
・VS本部での図書室の公開(被害者関係の資料の充実した図書)
・パンフレット
・ポスターの掲示
・リーフレットの配布
・各種のコミュニティへの参加
・各種の報道関係の取材の対応
・人々の関わりの中でセンターを知ることもある
※ 広報啓発については討議された時間が少なかったように思いました。
 
感想
 英国被害者支援視察を終えて、支援の組織と支援内容が充実していたこと、また、人材についても高度な研修を重ね、ボランティアの人々の支援レベルに合わせてレベルを選択することが素晴らしいと思った。日本でもレベル選択が出来ればスムーズな支援が可能になるのではないか。お互いに無理をしながら支援をしているのが実状ではないだろうか。これからの日本も全国ネットワークの組織の充実に力を入れてもらいたい。
 英国・VSの連携のすばらしさ、徹底した支援体制、ボランティアの高度なレベル研修内容は学ぶところが多い。高度な研修を重ねたボランティアは最初からひとりで行く。採用が終わったら、ひとりで行く力があるので、一人ひとりの個性があるので、それに任せるとのことである。2回目も基本的に同じ人が行く。日本の支援体制とは違いがある。英国の被害者支援に感じたことは、チームワークのすばらしさに感動した。まず、一人ひとりに心のあたたかさを感じた。私自身も学びたい。
 これからの支援も、犯罪被害者等基本法を基に、日本の犯罪被害者及び遺族のためにもあたたかい支援を行っていきたいと思います。
 あたたかく迎えていただいた英国の犯罪被害者支援センターの皆さまには、心からのお礼と感謝の気持ちで一杯です。また、日本から英国視察団に参加された各支援センターの方々と学び共有できたことを嬉しく思いました。大変、お世話様になりました。


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