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 ここでは波長200m、振幅20mのカスプ上で入射波の波向きを変化させることでどのような流況の変化が生じるのかを検討する。入射波には波高0.75m、周期6.0sの波を用い、波向きを10°、20°、30°とした計算を行った。計算結果を図−2.3.50に示す。
 結果を見ると、波向きが10°の場合では沖向きの流れも存在し、また沖に出た流れがまた向岸流によって岸に帰ってくるカスプを中心とした循環が見られる。また図−2.3.46と比べると同じ入射波高、周期にもかかわらず流速が約1.7倍にもなっていることが分かる。つまり純粋に沖方向への離岸流が発生する図−2.3.46のような場合よりも、むしろ今回のケースのように波向きによってやや斜め向きの離岸流が発生している場合の方がより早い流速が発生し、より海水浴には危険な流れであると考えられる。さらに波向きを増加させた20°、30°のケースでは沖方向の流れを伴う循環は発生せずに、沿岸流が蛇行する流れとなる。波向きが20°以上で離岸流が発生しなくなることは現地観測数を統計的に分析した結果とよく一致する。つまり離岸流の発生において波向きは非常に重要な要素であり、約10°〜20°が離岸流の発生限界であると考えられる。また流速に関しては波向きの増加に伴ってますます流速が増加し、30°の入射の場合では約1.0m/sと非常に強い流れとなる。近年は水難事故の原因として離岸流が取り上げられることが多いが、今回の計算ケースのように沿岸流も流速が約1.0m/sになる場合、海水浴には非常に危険な流況であると考えられる。
 
図−2.3.50 波向きによる流況の変化
(a)α=10°
 
(b)α=20°
 
(c)α=30°


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