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◆『ヨットファルコン沈没事件』詳報
 平成15年9月15日に発生した「ヨットファルコン沈没事件」の採決が平成17年3月3日神戸地方海難審判庁から言い渡されました。
 本事件は琵琶湖における海難ですが、海におけるプレジャーボート・ヨットの安全運航にも多くの教訓があると思われますので、採決の詳細をマイアニュースレターから転載します。 【事務局】
1 事件の概要
 ファルコンは、大人7人と子供5人を乗せて琵琶湖でクルージング中、北寄りの強風を受けて転覆・沈没し、乗船者全員が湖面に投げ出され、子供3人を含む7人が死亡・行方不明となった。
 当時、ライフジャケットを着用していたのは子供2人だけで、この2人は無事救助されました。
2 原因
 採決では、ファルコンがタッキング中に強風を受けた際、メインセールに受けた風圧を逃がすことができずに大傾斜して転覆を招き、艇が起きあがるときにキャビン上部に設けられた換気孔から空気が抜け、キャビン出入口から大量の水が入って浮力を失い、沈没に至ったとされ、また、多くの犠牲者が出たのは、乗船者に対する救命胴衣の着用などについての適切な指示がなされていなかったこと等による旨の原因が摘示されました。
3 事件の分析
≪船体の状況≫
 
 
【水密性能】
 キャビン出入口は、コンパニオンハッチ垂直差し板で閉鎖可能でしたが、非水密構造のうえ、垂直差し板には通風用スリットが設けられました。
 換気孔は、通常、プラスチック製の蓋がガムテープで止められていました。
<本件当時>
 換気孔、コンパニオンハッチ、垂直差し板は、全て開放されていました。
【ライフジャケット】
 艇内には、大人用10着(固定式5、手動膨張式5)と小児用1着が常備されていました。
<本件当時>
 ライフジャケットを着用していたのは、子供2人だけでした。
 
≪発生の経過≫
(拡大画面:153KB)
 
≪ファルコン船長≫
・平成10年に免許取得、ファルコンを購入。それまではヨット操船の経験なし。その後、徐々に操船の技量を身につけ、琵琶湖で開催されるヨットレースにも参加していました。
<本件当日>
・昼頃、ヨットクラブの敷地内でバーベキューパーティーを始め、クルージング前に、ビール等を飲んでいました。
・パーティーの合間に行っていたクルージング時には、乗船者にライフジャケットを着用するよう声を掛けたものの、自らは着用せず、子供2人だけが着用していました。
 
 「ヨットファルコン沈没事件」の審判では、転覆・沈没原因について、科学的な解明が必要であったことから、
・非浸水時及び浸水時における復原力の計算
・タッキング後、転覆に至る条件の計算
・模型実験による転覆・復原・沈没に至る条件の推定
の各項目について鑑定が行われました。この鑑定では、実物の約6分の1の模型を製作して水槽実験などが繰り返し行われ、転覆・沈没に至るメカニズムが解明されました。
 
ファルコンの模型
 
◆ファルコン沈没事件からの教訓
 ヨットファルコン沈没事件は、身近なところに多くの危険が潜んでいることやライフジャケットの着用の大切さ等を教訓として残しています。
⇒『ライフジャケットの着用』・『飲酒』と死傷者発生との関係
 ファルコン沈没事件は乗船者12名のうち7名が死亡・行方不明という悲惨な事故でしたが、救命胴衣を着用していた子供2名は無事救助されています。
 採決でも多数の犠牲者が出た要因として救命胴衣の着用の適切な指示がなされていなかったことが指摘されています。
 平成8〜12年の5年間におけるプレジャーボート海難の採決データから、ライフジャケットの着用及び船長の飲酒の有無と海難での死傷者発生との関係をみると・・・
 
 
平成17年ゴールデンウィーク中のライフジャケット着用調査結果
 平成17年4月29日〜5月8日までの間、第六管区海上保安本部の航空機により小型船舶のライフジャケット着用の状況が調査されました。その結果、プレジャーボートは25%(昨年比2.5倍)、ヨットは82%(昨年比1.4倍)と着用率がアップしております。
 当協会は今後とも「救命胴衣の常時着用」を小型船舶ユーザーに呼びかけることとしており、本年8月、下のポスターを作製して関係先に配付しました。
 
 
小安協からのお願い!
 
“小安協会員艇はいつも救命胴衣を着けている、やっぱり違う”
 
 が定着するよう、会員の皆様のご協力をお願いいたします。
【事務局】


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