| 海難審判庁 マイア(*) ニュースレターから (*)Marine Accident Inquiry Agency ◆海難審判の裁決にみるプレジャーボート海難(平成16年) 1 海難の状況  平成16年のプレジャーボート海難は、125件147隻で、死亡・行方不明者は12人となっています。  海難の種類では、衝突が89隻(60%)で最も多く、次いで転覆が11隻(7%)、死傷等が10隻(7%)、乗揚が10隻(7%)となっており、前年と比べ、乗揚が7隻減少したもの、転覆が3隻増加して第2位となったのが目立っています。  また、死亡・行方不明者12人のうち、11人はライフジャケットを着用していませんでした。  やはり、明暗を分けたのは、ライフジャケットの着用でした。   
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|  |    2 衝突の原因  衝突の89隻では、「見張り不十分」が最も多く、次いで「航法不遵守」、「信号不履行」となっています。  航走中のプレジャーボートは、白い航走波が遠くからでも良く見えますが、錨泊・漂泊すると、航走波が消えて、他船から見えにくくなり、錨泊・漂泊中に衝突されるケースが多くなっています。   衝突の原因   3. 転覆の原因  転覆した11隻では、全船に「気象・海象に対する注意不足」が挙げられており、特に、帰航時は、波が高くなる海岸付近を追い波状態で航走することが多くなるので、風や波の影響を受けやすいプレジャーボートにとって注意が必要です。出航前の気象・海象情報の入手や荒天が予想される場合の出航の中止または早期帰航が求められています。   転覆の原因   プレジャーボート海難の“防止”には   ◆海難事例 帰港時期が遅れて風が強くなり、高波に船尾が押し上げられて転覆 P号:船外機付きプレジャーボート 全長3.30m 幅1.52m 乗組員1人 同乗者1人 発生日時・場所: 平成15年12月7日11時20分 明石海峡北部舞子漁港南方沖合 気象等: 晴 西風 風力4 視界良好 低潮時 東流1ノット 波高1.5m 海難の概要  P号は、舞子漁港南方沖合において魚釣り中、風向が北から西に変わり、風が強くなって波も高くなってきたが、すぐに帰港せずに魚釣りを続けた。その後、西風が更に強くなり帰港することにしたが、左舷後方からの波に船尾が押し上げられ転覆した。   
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|  |    船幅を目安に!  波高が船幅に近くなると転覆の危険性が高まります。  船幅を危険ラインの目安にして、早めの帰港を心がけましょう。   帰りは追い波になることが多いので注意!   錨索を船尾に係止して錨泊中、船尾から波が打ち込んで転覆 S丸:船外機付きブレジャーボート 0.2トン 全長3.30m 幅1.35m 乗組員1人 同乗者3人(うち幼児1人) 発生日時・場所: 平成15年8月15日13時30分 福岡県加里布港内のーノ瀬 気象等:曇 曇 北北東風 風力4 視界良好 下げ潮中央期 波高約0.5m   海難の概要  S丸は、強風、波浪注意報が発表されている状況のもと近くの岩場に釣りに向かった。釣場に到着後、船外機の操作がしやすい船尾から投錨し、錨索を左舷船尾傾斜部のアイピースに係止して釣りを開始した。やがて風が強くなり、波が高くなって船体の縦揺れが始まり、錨索が緊張して船尾が下がり、波が船尾から打ち込んで水船状態となって転覆した。     明暗を分けたライフジャケットの着用  S丸船長は、当日夕刻にUターン予定の帰省中の家族に、帰りの土産として釣った魚を持たせるため、天気予報を確認せずに、幼児を含む家族4人で急いで釣りに出かけた。  錨泊中のS丸が、波の打ち込みで水船となったので、ライフジャケットを着用していた同乗者1人が、幼児を抱きかかえて泳ぎだし、無事陸岸に泳ぎ着いた。他の2人は、ライフジャケットを着用していなかったので、転覆したS丸につかまっていたが、携帯電話を入れた防水バックが流れていくのを見た同乗者が、船長である父親の制止を聞かずに、バックを追って泳ぎだした。しかし、流れるバックに追いつくことができず、力尽きて行方不明となった。   船尾からの波浪に注意!  船は船首で波を切って進みます。そのため船首からの波には強く造られていますが船尾からの波には弱いものです。  たとえ海上が平穏でも、錨索は必ず船首部に係止して錨泊しましょう! |