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調査官の権限
第19条
(1)調査官が正当な根拠によって、運輸事故の調査の実施に関係する物件がどこかにある、又は、ある可能性を信じている場合、その調査官は、第(2)項に従って、現場の立入捜査、また、捜索中に発見した物件の押収を行うことができる。
第(1)項における権限行使の条件
(2)調査官は、第(1)項に示される特定の場所に関して、あきらかに当該場所の責任者である者の同意なしに権限を行使することはできない。ただし、以下の場合は除く。
(a)令状の権限下で当該特定な場所に関連して、そのような権限を行使する場合
(b)緊急事態のために、調査官の令状取得が実際的でない場合
第(1)項の権限の行使を認める令状の発行
(3)治安判事(justice of the peace)が、調査官が正当な根拠によって運輸事故の調査の実施に関係する物件がどこかにある、又はある可能性を信じていると宣誓のうえ通知したことを納得した場合、当該判事は一方的申請によって、当該調査官による現場立入捜査、捜索中に発見された物件の押収を承認する判事の署名を記した令状を発行することができる。
電話などによる令状の取得
(4)刑法第487. 1条に定められる手続は、第34条(1)項(h)の規定に従い、本条に基づく令状の取得に適用される。
押収物件などの検査権限
(5)第(1)項に基づき調査官が何らかの物件を押収した場合、その調査官は、
(a)当該調査に関して押収された物件は当該調査の目的のために必要な場合、(b)節に基づき、当該物件に対し、破壊検査(tests to destruction)を含めた検査を行うことができる。
(b)かかる検査が、現実的かつ安全であり、調査の進展を不当に妨げない限りにおいて、
(i)当該物件の所有者、及び、正当な理由により所有者としての資格を持つ者を、(a)節に示されるいかなる検査にも立会わせるために招聘すべく、あらゆる適切な手段を講じなければならない。
(ii)上記(i)に示される者が、そのような検査に立ち合うことを許可しなければならない
(c)かかる検査の実施が必要な場合、当該物件が第20条に従って返却されるまで保管しなければならない。
特定領域を立入禁止にする権限
(6)運輸事故に関与する、又は、関与の可能性がある物件を保存、保護する目的において、当該物件が本条に基づいて押収されたものであるかどうかにかかわらず、調査官は、運輸事故の調査に必要な期間中、当該物件が存する場所の周辺領域への立入を禁止、又は制限することができる。
混乱の最小化
(7)調査官は、第(6)項で付与された権限の行使に際し、運輸機関に及ぶ混乱をできるだけ最小限にとどめるよう考慮しなければならない。
立入禁止命令の違反
(8)何人も、第(6)項で定められた立入の禁止又は制限を知りながら、これに違反して領域に入ってはならない。
調査官のその他の権限
(9)運輸事故の調査をする調査官は、
(a)当該調査官が正当な理由により、ある者が調査に関する情報を所有していると信じる場合、
(i)当該調査官の署名のある書面通知をもって、その情報を調査官に提供するよう求めるか、あるいは、調査官の要求に応じ、宣誓又は厳粛な断言のもとに、調査官の前で第30条に示される陳述を行うよう求めることができる。
(ii)当該調査官が調査にとって必要であると考える場合は、情報の複写、あるいは抜粋をとることができる。
(b)調査官が正当な理由により、航空機、船舶、車両、パイプラインの運航に直接・間接に関与する人の健康診断が、当該調査に関係する、又は関係する可能性があると信じる場合は、当該調査官の署名する書面通知をもって、健康診断の受診をその者に求めることができる。
(c)調査官が正当な理由により、医師又は、その他の保健開業医が、当該調査に関連する患者の情報を持っていると信じる場合、当該調査官の署名する書面通知をもって、その情報を調査官に提供することを当該医師又は保健開業医に求めることができる。
(d)調査官が正当な理由により、死体の解剖、又はその他の遺骸の医学検査を行うことが、当該調査の実施に関係する、又は、関係する可能性があると信じる場合は、当該調査官の署名する書面通知をもって、そのような解剖又は医学検査を行うことを、その死体又は遺骸の保管者に許可させることができる。
第(9)項(a)(c)(d)で課せられる要件の遵守
(10)何人も、第(9)項(a)の要件に従って調査官に情報を提供すること、あるいは、調査官の前で陳述を行うこと、第(9)項(c)の要件に従って情報を提供すること、あるいは、第(9)項(d)の要件に従って死体の解剖、あるいは遺骸の医学検査を承認することを、拒否あるいは怠ってはならない。
第(9)項(b)で課せられる要件の遵守
(11)何人も、第(9)項(b)の要件に従って健康診断を受けることを拒否、あるいは怠ってはならないが、当該検査によって得た情報は免責特権(privileged)があり、委員会が運輸の安全の利益のために必要であると考えた場合は、その情報を利用する委員会の権限に従って、何人も、
(a)意図的に当該情報を他人に伝えたり、他人に伝えることを許可してはならない。
(b)法的手続、懲戒手続、その他の手続において、当該情報を提出すること、又は、それに関して証言することを強要してはならない。
提出すべき証明書
(12)調査官は本条に基づいて行動する前に、要請に応じ、調査相手に調査官任命証明書を提出しなければならない。
特定の目的に対する健康診断の意味
(13)第(9)項の健康診断を受けるという要件は、外科手術、皮膚や外部組織の切開、薬物や異物の身体への投入を伴う処置を受けるという要件とはみなされない。
同上
(14)本条は以下を意味しない。
(a)第(1)項により押収した物件が、航空機、船舶、車両、パイプライン、又はそれらの部品でない可能性があると示唆すること。
(b)調査官の権限の行使が第18条に相反している状況において、そのような権限の行使を許可すること。
武力行使
(15)本条に基づく令状執行に際し、調査官が治安官を同行し、武力行使が当該令状で明白に認められていない限り、武力行使をしてはならない。
文書などの不提出
(15. 1)調査官が、第(9)項(a)(b)(c)(d)に基づく事柄を行うよう人に要求し、当該人物が要求に応じない場合、調査官は連邦裁判所(the Federal Court)又は州の高等裁判所に対して、その事実を明白に述べた事実告知書を提出することができる。当該裁判所はその事柄を調べ、当該人物に要求に従う機会を与えた後、当該人物を法廷侮辱罪(guilty of contempt of the court)として罰する措置をとるか、又は、適切と思われるその他の命令を発することができる。
定義
(16)本条においては、以下の定義とする。
「文書」[撤廃、1998, c. 20, s. 13]
「情報(information)」(renseignement)
「情報」には、形式にかかわらず記録、及び、記録の複写を含む。
「場所(place)」(lieu)
「場所」には以下が含まれる。
(a)航空機、船舶、車両、その他の輸送手段、パイプライン、及び
(b)施設、建造物、その他それら施設上に建設されたもの
1989, c. 3, s. 19; 1998, c. 20, ss. 13, 24.
 
押収物の返却
第20条
(1)第19条により押収した物件は、第28条(1)項で定義される記録(recording)を除き、その押収の目的達成後できるだけ速やかに、当該物件の所有主、又は物件が押収された者に返却しなければならない。ただし、以下の場合はこの限りではない。
(a)当該所有者、又は正当な理由により所有権を持つと思われる者が、書面により別に同意する場合
(b)管轄権を有する裁判所が別に命令する場合
返却の申請
(2)第19条により第28条(1)項で定義されるレコーディングを除く物件を押収された者、又は、その所有者、あるいは、又は正当な理由によりその所有権を持つと思われる者は、管轄権を有する裁判所に対し、当該押収物件の返却を命じるよう申請することができる。
返却命令
(3)第(2)項による申請について、当該裁判所が、押収物件が押収の目的を達成したか、あるいは公正の利益のためにその申請者に返却すべきであると考える場合、本法に基づいて委員会が当該物件を後に要求する場合に備え、物権の保護、保全に必要な、あるいは望ましいとされる諸条件に従い、裁判所は当該申請を認め、申請者へ押収物件を返却するよう命じることができる。
例外
(4)本条は、第19条(5)項に従って押収、破壊試験されたいかなる物件にも適用されない。
 
公開審理
第21条
(1)運輸事故の調査中、当該運輸事故に公開審理が必要であると委員会が考え、総督が調査法(Inquiry Act)第1部(Part I)に定める公開審理を開始していない場合、委員長は第34条の規定に従って運輸事故の公開審理を実施し、当該公開審理を委員会に報告する者を、委員長自身も含めて一人か複数人、第18条に基づいて任命することができる。
公開審理実施者の権限
(2)第(1)項の公開審理の実施を任命される者はいずれも、調査法第1部に定められる長官(commissioner)に任命される者とし、当該任命で規定される制限に準じた権限を有し、それを行使することができる。
 
管理(ADMINISTRATION)
 
委員会の通知
第22条
(1)本法において、委員会が調査権限をもつ運輸事故について省庁に通知があった場合、当該省庁は、
(a)直ちに委員会に当該運輸事故の詳細を通知しなければならない。
(b)(a)節を満たした後、直ちに委員会に対して、当該省庁が実施予定の調査、及び、是正措置について通達しなければならない。
立会人としての調査官
(2)委員長によって承認された調査官は、第(1)項に示される省庁が実施する調査に、あるいは、当該運輸事故に伴って当該省庁がとる是正措置期間は、立会人として参加することができる。
委員会による検討及び見解
(3)この他の法律に従い、要請に応じて、第(1)項に示される省庁による調査の中間報告又は最終報告について、委員会は検討し、見解を表明することができる。
 
委員会の通知
第23条
(1)委員会に運輸事故の通知があった場合、委員会は、
(a)直ちに、当該事故に直接の利害関係を持つ省庁の担当大臣に、事故に関する詳細を提供しなければならない。
(b)(a)節を満たした後は、(a)節に示される大臣に対して、委員会が実施予定の調査、及び、是正措置について通達しなければならない。
立会人
(3)委員会が課す条件に従って、この者は以下の条件において、立会人として委員会の実施する運輸事故の調査に同席することができる。
(a)[撤廃1998, c. 20, s. 14]
(b)当該調査の懸案事項に直接の利害関係を持つ省庁の担当大臣に、立会人として指名された場合
(c)カナダが当事国となっている運輸に関する協定又は条約によって、立会人としての地位を与えられているか、公認代表又は公認代表顧問となっている場合
(d)当該人物が当該調査の懸案事項に直接の利害関係を持ち、委員会の目的達成に貢献すると委員会が考え、委員会によって立会人として同席することを求められている場合
委員会による立会人の除外
(3)委員会が立会人の同席に関して課した条件に違反したり、あるいは、調査の実施を妨害するような利害の衝突に立会人が関与していると委員会が判断した場合、委員会は立会人を調査から除外することができる。
1989, c. 3, s. 23; 1998, c. 20, s. 14


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