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航空事故調査法
1998年8月26日
<SUG本文より適用範囲を抜粋>
 航空事故調査法第5条〜第29条が適用される。但し、第6条、第7条、第14条第5項、第21条、第24条、第26条第4項第2文を除く。
 
第2章
組織
第5条 他国との協力
(1)本法適用地域外で発生した本法の適用対象となる航空機事故・インシデントが外国当局の調査を受ける場合で、ドイツ連邦共和国内において類似の事故調査では概況調査報告書をまとめることができないと思われる場合は、当連邦官庁は全権委任代表者を派遣し調査に参加することができる。この事例においては、運航業者から提案があれば、全権委任代表者を補佐する1名若しくは数名のアドバイザーを指名して調査実施国に派遣しなければならない。これは、機体やその部品のメーカーの代表者が参加する場合においても同様に適用する。当連邦官庁は、その外国当局に全ての提供可能な必要情報を送らなければならない。受信者は、送られたデータはその提供目的の履行のためにのみ処理し利用することができるということに注意を払わなければならない。
(2)必要であれば、当連邦官庁は他国の所轄官署に下記の提供を求めることができる。
1. 下記のための設備、装置、機器
a)残がい、飛行機機材等、調査に重要な物品の技術的調査
b)フライトレコーダーの記録の処理
c)事故データの電子ファイルと処理
2. 特に重要でかつ重大な事故調査の場合、特定任務の専門調査官
(3)当連邦官庁は、要請を受けた場合、外国にこれらの支援を供与することができる。それは相互支援の理念により、無償で提供され、第1項第4文の規則が適用される。
 
(*6、7条は適用範囲外)
 
第3章
調査
第8条 調査の法的地位
(1)当連邦官庁による調査は、原則として、第3条に記した目的や目標以外のために行う他のあらゆる専門技術調査に対して優位にある。訴追当局及び訴追を扱う裁判所の権限には抵触しない。
(2)個々の事件において異なる利害がぶつかる場合、連邦官庁と他の関係当局は目的に即した合理的な協力によってそれを解決しなければならない。
 
第9条 調査の手続
(1)調査の手続は、事故やインシデントの因果関係の究明並びに主原因の確定を目的とする当連邦官庁の全職務に及ぶ。調査は、結果を調査報告書に総括し公表することで終了するものとする。
(2)当連邦官庁は、事故やインシデントの程度や種類によって、安全性の向上の可能性を認識した上で調査の範囲を決定する。本法に定めがない限り、調査の形式に拘束されるものではない。調査の手続は簡便かつ合理的に行われなければならない。
 
第10条 調査の開始
(1)当連邦官庁は、事件ごとに調査を指揮する主任調査官を指名する。
(2)主任調査官は直ちに調査の目的に必要な措置を講じる。
 
第11条 調査官の法的権限
(1)主任調査官、調査官、委託調査官は、現地の所轄の訴追当局との協議のもとで、第3条に基づく調査任務の達成のため、本調査目的を達成するために必要である限りにおいて、下記をはじめとする全ての措置を講じる権限を持つ。
1. 事故やインシデントの現場並びに機体とその積荷、残がい、部品に、自由に立ち入ること。土地や被害を受けた住宅に立ち入り視察すること。住居不可侵の基本的権利(基本法第13条)は、この限りにおいては制限される。
2. 検査と分析を目的とし、直ちに証拠のリストを作成し、がれきや建材、積荷の撤去を管理すること。
3. 機内及び航空管制所における記録装置、記録メディアをはじめとする記録を迅速に入手すること。また、それらを分析するために保管すること、及びその他の記録を分析するために入手すること。
4. 犠牲者(死者、負傷者)又は類する者の検査結果を入手すること。
5. 航空機の運航に関係する者又は類する者の検査結果を入手すること。
6. 機体とその部品の所有者、運航者、製造者、及び民間航空と飛行場の操業を所轄する当局に関する具体的な文書資料を妨害なく閲覧して関連する情報を入手し、必要であればコピーをとること。
(2)主任調査官は、健康障害が事故原因である可能性を疑う根拠がある場合や、致命傷に対する乗員保護調査(救難保命対策)が必要な場合は、該当訴追当局との協議のもとで、航空機の乗員乗客の遺体の検死を求める権限を有する。埋葬された遺体を解剖して再び埋葬することは、地方裁判所の裁判官が指示を出すが、遅滞によって調査の成果が損なわれる可能性があると思われる場合は、主任調査官が指示する権限を有する。これには、刑事訴訟法第87条第1〜3項、第4項第2文が適用される。
(3)物的証拠として適切な痕跡や物体の確保は、所轄の訴追当局との密接な協力のもとで行われる。特に、犠牲者の身元の確認と医学的検査及び記録装置など、調査が問題なく終了するためには、迅速に確保し、分析しなければならない証拠が当てはまる。
 
第12条 事故現場
(1)事故現場は第三者が立ち入ることができないよう、できるだけ早く封鎖しなければならない。権限のない者は事故現場に立ち入ることはできない。封鎖された事故現場の立ち入りについては、主任調査官が所轄の訴追当局との密接な協力のもとで決定する。
(2)事故現場、事故の痕跡、全ての残がい、がれき、その他の航空機の部品は、主任調査官が引き渡し(第13条)をするまで、触れたり変化を加えてはならない。許可されるのは下記の行為のみである。
a)第1文に記した物品の位置を可能な限り変えることなく、消火措置を行うこと
b)差し迫った危険を防止するために行動すること
c)負傷者の救助と応急処置を、可能な限り同時に書面と写真によって事故現場における彼らの位置又は事故現場との位置関係を記録したうえで行うこと
 死亡が確認された者の遺体や遺留品は、主任調査官が引渡しを行うまで変化を加えずに置いておくこととする。
 
第13条 事故現場への立ち入りと機体の引渡し
 事故現場への立ち入り及び機体、残がい、部品、積荷、犠牲者の引き渡しについては、主任調査官が所轄の訴追当局との密接な協力のもとで決定する。
 
第14条 調査手続への参加者
(1)調査手続には、求めに応じて、下記の各1名のドイツ国以外の全権委任代表者が参加する(参加者)。
1. 登録国、設計国、製造国、運航国
2. 当連邦官庁が同意したその他の国
(2)全権委任代表者はアドバイザーに助言を求める権限を有し、アドバイザーは主任調査官の監督のもとで、全権委任代表者ができる限り効率的に調査活動を行うことができる範囲内において調査に参加することができる。
(3)主任調査官の監督のもとで参加する調査は、下記をはじめとした調査の全領域におよぶ。
1. 事故現場の視察
2. 機体や残がいの検査
3. さらに疑問が残る部分がある場合にそれを提案することを前提に行う目撃者への聞き取り調査結果の点検
4. 可能な限り迅速に全ての関連する証拠を完全に入手
5. 全ての関連資料のコピーの受領
6. 指示された記録の読み出しへの参加
7. 結果、原因、安全勧告についての協議などその後の調査への参加
8. 調査のさまざまな要素についての提案
 第1項の第2号に記した国からの代表者については、当連邦官庁が同意を与えた領域の調査にのみ参加するように制限できる。
(4)主任調査官は、専門家とアシスタントに補助的な意見を求めることができる。その協力範囲は、主任調査官が決定する。
 
(*(5)適用範囲外)
 
(6)事故現場において調査を開始し、行うにあたっては、参加者とそのアドバイザーの出欠に左右されない。
(7)当連邦官庁の明確な同意が無ければ、参加者とそのアドバイザー、専門家、アシスタントは、調査の進捗状況や個々の結果について公言してはならず、この点について厳重に指示を受けておかなければならない。当連邦官庁の職員、主任調査官、調査官には、特に守秘義務が課せられている。
(8)参加者とそのアドバイザー、外部専門家、アシスタントは、本法の規則に違反した場合、調査へ参加することができなくなる。
(9)第1〜8項に記した者が個人情報を入手する場合は、第26条第4項が適用される。
 
第15条 不公平への懸念
 調査の参加者が公平性に欠けているという疑いに対してそれを裏付けるに足る根拠がある場合、若しくは、調査の参加者の一人がそのような根拠の存在を主張する場合は(不公平への懸念)当該参加者は当連邦官庁長官にその旨を報告し、調査への参加を当面見合わせ、当連邦官庁長官の指示に従うものとする。すでに実施された調査行為は効力を失わない。不公平の可能性が当連邦官庁の長官や副長官にある場合、その監督官庁が必要な指示を発する。
 
第16条 証拠
(1)主任調査官及び調査官は事故原因を証明するために使用可能なあらゆる手段(証拠)を用いる、調査に必要であれば、特に下記の行為が認められる。
1. 情報を捜し求めること
2. 目撃者を調べ、専門家など調査にとって重要な人物に助言を求め、陳述書を入手すること。
3. 特に利用制限がない限りにおいて、証書や調書を援用、閲覧すること
(2)第14条の定めるところによる全権委任代表者とそのアドバイザー、専門家、アシスタントは、その事件の調査について知り得た重要な事実や証拠を当連邦官庁からの要請がない場合においても報告する義務を負う。
(3)事件及びその経過、あるいは推定される経過の目撃者は真実を述べ、外部専門家は求めに応じて鑑定書を作成することが義務づけられる。目撃者は、発言することにより、自分自身あるいは民事訴訟法第383条第1項第1〜3号で定めるところの親族が起訴されたり、あるいは秩序違反法(the Gesetz über Ordnungswidrigkeiten)の訴訟手続を受ける危険性がある質問に対しては黙秘することができる。
(4)目撃者と専門家は、申請があれば、目撃者及び外部専門家を補償する法律(Gesetz über die Entschädigung von Zeugen und Sachverständigen)の規定に従って補償されることとする。


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