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第4章
報告書と公表
第17条 調査報告書完成前の聴聞
(1)調査報告書完成前に、事故の状況に応じて、航空機の運航者、機体及び部品の製造者、乗務員、監督官署、航空管制を所轄する当局、ドイツ気象庁、第14条による全権委任代表者に、原因の確定に重要な事実や結果を書述する機会が与えられる。その目的のために、調査報告書の草案が送達されることとする。
(2)十分に根拠のある重要な意見は、最終的な調査報告書において考慮されることとする。第14条で定めるところの全権委任代表者による主流ではない意見は、調査報告書の中で考慮されない場合においては、その付録として添付される。調査報告書の草案送付後60日以内に意見書が到着しない場合は、最終的な調査報告書が仕上げられる。
(3)概況調査においては(第18条第4、5項)、聴聞は行われない。
 
第18条 調査報告書
(1)それぞれの調査について、当連邦官庁の報告書はインシデントの種類や程度に適した形式でまとめられる。この報告書は第3条の調査目的に関することのみを記述するものである。
(2)報告書では、事故やインシデントに関与した人物の匿名性を確保したうえで、事故やインシデントの経緯の詳細、当該航空機、外観状況、調査行動及び鑑定の結果、調査の妨害とその理由、当該事故・インシデントの全ての結果の分析と確定原因並びに推定原因についての情報を掲載する。また、可能な限りにおいて、安全勧告(第19条)を報告書に含め、差し迫った危険があったため、あるいは公共の利益に関わる危険があったために事前に発行したものもここで再度記載される。
(3)当連邦官庁は最終報告書を可能な限り事故発生後12ヶ月以内に下記に一部ずつ送達する。
1. 第17条第1項に記した送付先
2. 機体重量が5700kgを超える場合、国際民間航空会社
3. 欧州共同体委員会
 その他、連邦交通省の交通官報における関連文書の欄でこの報告書が公表される。
(4)事故やインシデントにおいてその調査結果が航空安全には特に重要ではない場合、概況調査報告書にまとめられる。
(5)第4項に基づく概況報告書は、事故やインシデントの当該航空機や事故の経緯についての情報のみを与えるものである。
 
第19条 安全勧告
(1)安全勧告は、当連邦官庁の長官によって発せられる。
(2)差し迫った危険があるため同様の原因による事故やインシデントを遅滞なく未然に防ぐことが求められる場合、安全勧告は調査手続の進捗状況とは無関係に発せられる。
(3)安全勧告の内容は勧告するに至った原因に合致するものでなければならず、その原因を取り除くために必要な最低限の措置を超えるものであってはならない。
(4)安全勧告はいかなる場合においても事故やインシデントヘの非難や賠償責任を求めるものであってはならない。
(5)欧州共同体委員会は安全勧告のコピーを受け取る。
 
第20条 外国の調査報告書
(1)第5条第1項の事例においては、外国の調査報告書の草案とその一部、及び当連邦官庁が調査へ参加して入手した文書は、外国の調査当局の明確な同意を得ることなく公表したり、あるいは第三者の目に触れるようにしてはならない、但し、外国の調査当局がその文書をすでに公表、公開した場合はこの限りではない。
(2)当連邦官庁は外国の調査報告書を公表する義務はない。公表する事例においては、第18条第2項を適用する。
 
(*第21条は適用範囲外)
 
第22条 調査手続の再開
 調査報告書の公開後10年以内に重要な新事実が明らかになった場合は、当連邦官庁は自発的に、若しくは第14条の定めるところの全権委任代表者からの、あるいは第17条第1項に記した人物及び官署からの申請があった場合に報告書の完成後半年を経過していれば、調査手続を再開する。再開申請の拒否に対しては、30日以内に当連邦官庁の所在地を所轄する高等行政裁判所に抗告することができ、その判決に対しては上告できない。
 
第5章
調査委員会
第23条 権能
(1)調査がその種類と規模において通常の程度を超え、複数の調査結果を組み合わせて分析することでは明確な結果を出せないような特に重要かつ重大な事故、インシデントにおいては、当連邦当局が第17条による聴聞に応じて調査委員会を設置する。
(2)調査委員会は、第18条の規定に基づく最終的な調査報告書を作成する。また、第1項の事例においては、第22条に基づく再開手続を実施する。
(3)調査委員会は、5人のメンバーから構成される。4人のメンバーの出席を以って定足数とする。主任調査官が委員長を務め、再開された調査においては当連邦官庁の長官が委員長を決定する。その他のメンバー及びその代理人は航空技術、航空機の運航や航空管制の分野において特に専門的な経験のある者でなければならず、当連邦官庁や第4条第2項に記した官署や航空機及びその部品のメーカーに属する者であってはならない。
(4)調査委員会は、できる限り全員一致の結果を得ることとする。同数票の場合は、委員長の票により決定する。反対意見は、調査報告書に別添で記すこととする。
(5)調査委員会はメンバーの独自責任において任務を整理し分担する。但し、対外的には調査委員会としてのみ行動する。
 
第6章
総則
 
(*第24条は適用範囲外)
 
第25条 データの収集、処理及び利用
(1)当連邦官庁、第11条による調査権所有者、第14条による参加者は、第11条〜第16条に基づく権限の範囲内において、第3条に基づく調査目的に必要であれば、全ての事故やインシデントの関与者や当事者並びに目撃者や事故・インシデントの証言者の個人データを収集、処理、利用することができる。同様に、事故に関与した航空機の型式や登録記号、機内の荷物や貨物の特徴を確定しなければならない。
(2)特に機密の陳述については、許可なく閲覧されぬよう技術的な対策を講じて保護しなければならない。
(3)第1項に基づき収集したデータは、電子ファイルに保存するか、あるいは文書ファイルに保管されなければならない。
 
第26条 公官署へのデータ送信
(1)航空安全、航空機の運航に関する航空法による許認可の付与、訴訟手続の執行、違反の訴追、事故や事件に関連する法律上の請求権の確定、主張、拒否についての裁判手続、並びに、事故当事者への情報提供の目的に必要であれば、当連邦官庁は、第25条によるデータを公官署へ送信することができる。
(2)データ送信に過度の費用を要する場合や、文書の閲覧を求めた官署がデータ送信ではその任務の遂行に十分ではないことを根拠を挙げて言明した場合は、第1項の前提のもとで、文書の閲覧が許可される。ここでは刑事訴訟法第96条第1文が抵触することなく適用される。
(3)刑事訴訟法の目的、司法目的、インシデントとその結果に直接の関係がある行政手続に必要な場合は、第1項、第2項の前提のもとで、当連邦官庁の文書並びに報告書を閲覧請求により公官署に送付することができる。刑事訴訟法第96条第1文が抵触することなく適用されることとする。第22条に基づく再開の事例においては、行政当局並びに裁判所は、当連邦官庁の申請により文書を直ちに返却する義務を負う。
(4)受信する官署の所轄任務の履行に必要でありかつ、特に受信者側に適切なデータ保護の水準が保証されているなどで、当事者の保護すべき利益を損なわない限り、当連邦官庁は第25条に基づくデータを第1項に記した目的のために第6条第1項に記した官署に送信することができる。受信者は、送信されたデータはその送信目的にのみ処理し利用することができるとの注意を受けておかなければならない。
 
第27条 保管及び削除の期間
(1)文書の保管期間は、死者を伴う事故においては30年とする。その他の全ての文書は20年間保管される。
(2)電子ファイルに保存したデータは、死者を伴う事故においては30年、その他においては20年を過ぎた後に削除する。
(3)第1項及び第2項に定めた期間は、手続の終了時を起点とする。民法第187条第1項及び連邦公文書法(Bundesarchivgesetz)第2条第1項〜第6項、第8項、第9項が適用される。
 
第28条 航空安全活動
(1)当連邦官庁は、航空事故の防止を目的として、統計分析評価、航空事故情報の公表、講演への参加による航空安全活動を行う
(2)当連邦官庁は、事故や重度のインシデントについての匿名の統計を取り、毎年公表する。それは、その対象となる事故の構成と傾向についての最新の包括的で信頼性のあるデータベースを作成するのに役立つ。
(3)統計は下記の点を盛り込む
1. 関与した航空機の国籍、型式、製造者、機体の損壊の性質、第三者の損害の性質、危険物の輸送の場合は危険物の種類
2. 搭乗者数
3. 事故で犠牲となった搭乗者の数と内訳(死者、重傷者、その他の負傷者)
4. 事故の発生地、日付、経緯、事故の状況(飛行段階、インシデントの性質)、究明された事故原因
(4)当連邦官庁はドイツ及び外国の事故やインシデント統計の分析を行う。評価結果やそこから導かれた事故情報は公表される。当連邦官庁は、本来の任務の履行に支障がない限りにおいて、求めに応じて統計及び分析資料を実費で作成することができる。
(5)政府機関及び航空安全作業を実施する公認組織は第2項、第4項の刊行物を無償で受け取る。
(6)当連邦官庁は、本来の任務の履行に支障がない限りにおいて、航空安全等に関する催事にあたり、求めに応じて報告者を警察や災害対策救援隊に派遣することができる。
 
第29条 捜索救助活動への参加
 当連邦官庁は、必要な情報の収集、提供、助言を行うことで、捜索救助活動に協力する。行方不明になった航空機の捜索開始前に、捜索救助活動と当連邦官庁は互いの了解を得るものとする。


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