第三節
海事審問委員会の手続
第27条 証拠収集
(1)それが必要と判断される対象案件である場合や、審理において証拠の収集が不可能あるいは特に困難と思われる場合は、口頭審理の他で、証拠収集を行わなければならない。証拠収集には常任陪席員、そしてインシデントの状況によっては追加の審判官が招集される。第29条第7項、第8項が適用される。海事審問委員会は、対象案件の調査において宣誓に代わる確約を行う権限を有する。
(2)その業務範囲が対象案件に直接該当する官庁や役所は、証拠収集の予定について連絡を受けるべきである。つまり、外国籍の船舶に調査が及ぶ場合や、所管の領事館に報告されるような第28条第1項第2文に基づく命令を執行する場合を指す。
第28条 情報開示、引渡し、保管の義務
(1)有効な船舶保安法に基づく船舶安全責任者は、この責任により、海事審問委員会の求めに応じて対象案件に関わる船舶の性質、乗組員、位置、航行計画について情報を開示する義務を有する。調査のための多大な資料などは、その保管者や使用権を持つ者の求めに応じて引き渡さなければならない。これは特に、使用している海図、航海日誌、技術的記録・資料が該当する。第2文に基づき要求される資料は、引渡し義務を有する者が海事審問委員会の調査の終了まで保管しなければならない。
(2)連邦国防省が軍事的保安上の理由から必要と見なした場合、資料の引渡しを拒否することができる。
第29条 口頭審理
(1)関係人全員が委員長に最終的に反対を表明した場合を除き、海事審問委員会の調査手続において口頭審理が実施される。
(2)関係人は書面で適切な期間に口頭審理に召喚され、出頭の義務を有する。口頭審理への召喚状を適時に出すことが不可能な場合は、電話、電報、テレタイプ、ファックス、メッセンジャーを使うことも可能である。召喚状には、関係人が陪席員の助けを行使することができる、また、出頭義務のある関係人が無断欠席をした場合は強制的拘引を命ずることができる旨が記されている。
(3)審理の期日は管轄官庁に報告しなければならない。外国の資格証明を持つ者が関与する場合、審理の期日は所管の領事館に報告しなければならない。
(4)海事審問委員会は、審理ができるだけ同日で終了するよう配慮すべきである。
(5)当事者が委員長に反対を表明した場合を除き、口頭審理は公開で行われる。下記の場合、海事審問委員会は審理やその一部を非公開にすることもできる。
1. 公共の安全と秩序の危険が懸念される場合
2. 軍事機密保持や、重要な営業機密、企業活動の機密を擁護する場合
軍事機密の保持や重要な営業機密や企業活動の機密の擁護以外での非公開の理由には、外国の公的代表者の出席が該当する。
(6)委員長は開会を宣言し、口頭審理の長を務める。本法に手続規定がなければ、委員長が義務に則った裁量により審理の経過を決定する。行政手続法第66条、第68条第2項第3項、第71条が適用される。口頭審理中になって初めて関係人となった者は、特にその者が陪席員や資料の閲覧を希望する場合は口頭審理の中断を求めることができる。関係人は、これを知らされていなければならない。
(7)目撃者に関する規則が関係人にも該当するとの条件付で、行政手続法第65条が目撃者や専門家の手続への参加に適用される。関係人は、答弁を行うことによって第31条第1項第2項第4項に基づく処分を受ける可能性がある質問への回答を拒否することができる。宣誓を伴う事情聴取は、口頭審理が行われた地域の裁判所によって行われる。関係人は宣誓を伴う尋問を受けない。
(8)口頭審理の記録を作成しなければならない。記録には下記を盛り込まなくてはならない。
1. 審理の場所と日付
2. 海事審問委員会の委員長、書記、陪席員の名前、出頭した関係人、目撃者、専門家
3. 対象案件の状況
4. 関係人、目撃者、専門家の発言内容の要旨
5. 検証の結果
記録は、首席審判官と書記の署名を付けるものとする。
第30条 海事審問委員会の裁決
(1)調査手続は裁決を以って終了する。海事審問委員会は手続の全ての結果を尊重して決定する。
(2)裁決には下記が含まれる。
1. 対象案件の確認
2. 調査で明らかになった場合、関係人に過失がある旨の決定
3. 第31条第1〜4項に基づく前提基準
a.有期あるいは無期の権能行使の禁止(操縦禁止)
(第31条第1項、第4項)
必要な場合は付帯条件を付ける(第31条第2項)
b. 資格取消(第31条第2項)
c. 制限付き資格の発行許可(第31条第3項)
4. 第3号aの場合、12ヶ月を超える期間の操縦禁止を資格証に付記するか否かの決定
5. 第3号a及びbの場合、資格証の一時的押収と役所による保管あるいは第4号に基づく付記のための押収を行うか否かの決定
第20〜23条の要件に該当しないことが明らかになった場合、手続中止の裁決となる。裁決には費用の決定も含まれる。
(3)裁決は、当該決定に第2項第1文第3号も含まれる場合にのみ、第2項第1文第2号による決定を含めることが許される。海事審問委員会が関係人の過失を確定できるのは、この者が法規、行政命令、ガイドライン、あるいはその責任範囲に適用される、船舶操縦、船舶運行技術、無線業務、航行の安全、海上環境保護の一般原則や公認の技術規定を始めとする一般的な原則を守らなかったと海事審問委員会が確信した場合である。
(4)下記の場合にのみ、裁決に第2項第1文第2号又は第3号による決定を含めることが許される。
1. 海事審問委員会が口頭や書面で討議した場合
2. 関係人が十分に海事審問委員会に対する意見表明の機会があり、口頭審理に合法的に召喚したにもかかわらず口頭審理に出席しなかった場合。関係人が口頭審理に欠席の場合は、裁決に第2項第1文第2号又は第3号を含める可能性があることを関係人が前もって知らされていれば、裁決にそれを含めてもよい。
(5)裁決は書面で作成し、委員長や陪席員が署名しなければならず、一ヶ月以内に完成して提出されなければならない。裁決の根拠には、対象案件に関する事実が記載されなければならない。関係人とその資格や操縦免許を正確に記さなければならない。証拠収集の結果を尊重しなければならない。裁決の基準となった情状を示さなければならない。
(6)裁決は全ての関係人に送達しなければならない。申請により、関係人は口頭審理の記録の複本を受け取ることができる。
(7)海事審問委員会は第2項第1文第3〜5号の趣旨における執行可能な裁決を下記の当局にも通達する。
1. 関係する資格の授与あるいは証明書の交付を行った役所。ドイツで登録されているプレジャーボートの操縦免許においては北西部水路・船舶管理局
2. 海事審問委員会が付記の記入や時的押収及び役所による保管を命令しない事例では、海上任務法の範囲内で水上警察の任務の執行を委託された当局
(8)海事審問委員会によりなされた上訴の余地がない裁決は、公判集において完全版(本章の公的任務の遂行に必要な場合は船名も含めて)若しくは簡略版で公開することができる(自然人の名前をいかなる場合も匿名とする。)。裁決が非公開手続による場合は、その決定に当たっては、非公開手続となった状況について考慮しなければならない。
第31条 資格停止と行使制限
(1)海事審問委員会は裁決において、その措置が第1条の趣旨における航海の安全に必要との確信に至った場合、最高30ヶ月間の操縦停止を言い渡さなければならない。なぜなら、その資格所持者は、その期間は船舶操縦士としての活動やその他の航海責任者に必要な肉体的精神的適性や、この活動に必要な責任の自覚を持ち合わせないからである。同所持者がアルコール飲料や他の興奮剤を喫することにより、船上における任務を安全に遂行できなくなるとの瑕疵が発生することは、一般的に予想できる。同所持者が二つ以上の資格証明を所持している場合は、片方だけの権能の行使は制限を受けないことを裁決で通告することができる。
(2)海事審問委員会は、第1項に基づく措置を特別な理由により航海の安全のために十分ではないとみなす場合、追加条件を命じたり資格を長期にわたって停止することができる。
(3)取消し、あるいは行使を制限された資格の中に含まれる権能の資格の交付は許可されうる。
(4)第1項第1文及び第2文の要件を満たす場合、ドイツ連邦共和国の当局から交付された資格証明や外国のプレジャーボート等の操縦免許証やドイツ領内の全部あるいは一部の内陸舟航資格証明の取得者に対して、操縦禁止を通告することができる。
(5)第1項又は第4項の趣旨において資格の行使が制限される場合は、次のように効力が停止される。それに関連した権能は、裁決の時点から(法廷において操縦制限の決定取りやめの申立て、及びその他の法的救済の申立てがなされた場合は、それらが棄却された時点から)法的救済の棄却時点における法廷での否認訴訟やその他の法的手段の申し立ての後に(その資格について裁決に記された期間が経過し第2項の命令が履行されるまで)、行使してはならない。第30条第2項第4号、第5号の事例において、その資格について交付された証書が海事審問委員会に保管されていない場合は、その所持者から直ちに海事審問委員会に送達されることとし、また、操縦禁止の事例においてはその記入のために提出しなければならない。刑事訴訟法第111条a第5項が相応して適用される。
(6)ドイツ民主共和国の当局から発行された資格証明及びプレジャーボートの操縦免許証は、この規則の趣旨においてはドイツ連邦共和国の当局から発行されたものとみなされる。
第四節
費用
第32条 料金と経費
(1)第30条第2項第1文第3号に基づく公務審理には料金が課せられる。
(2)料金は却下された異議にも課せられる。
(3)経費は、海事審問委員会が第31条第1項、第2項、又は第4項に基づく措置を命じられた関係人から徴収される。
(4)連邦交通・建設・住宅省は、法規により料金の構成要件と金額を決定する権限を持つ。そこでは、固定額と範囲額を決めなければならない。
第五節
法的救済
第33条 異議申し立ての手続
海事審問委員会の行政行為に対して、その通告から1ヶ月以内に異議を申し立てることができる。異議申し立て書の提出先官庁は、北部水路・船舶管理局である。海事審問委員会は、行政裁判所規則第72条に基づき、その異議に手を加えてはならない。
第五章
過料規定(最終及び移行規定)
第一節
過料規定
第34条 過料規定
(1)下記の行為は意図の有無を問わず違法として扱われる。
1. 航空事故調査法第12条第2項第1文との関連にある第15条第1項に反して、明け渡し前に事故現場又は事故の痕跡を変えたり、船舶の部品や材料のサンプルなどの内容物を隠蔽したり変化を加えたりすること
2. 航空事故調査法第14条第7項第1文との関連にある第15条第1項に基づく同意無しに調査の状況や個々の結果を公言すること
3. 航空事故調査法第16条第3項第1文との関連にある第15条第1項に反して、真実を供述する義務や鑑定書の作成義務に従わないこと
4. 第28条第1項に反して、情報を正確、完全、適時に与えないこと。資料や物を適時に引き渡さないこと。また、資料を定められた期間が過ぎるまで保管しないこと。
5. 第31条第4項に基づき執行可能な操縦禁止に違反すること
6. 第31条第5項第2文に反して、それに記された証書を適時に送達あるいは提出しないこと。
(2)違法行為には罰として過料を課す。
(3)違法行為に関する本法第36条第1条第1号の趣旨にある行政当局は、北部・北西部水路・船舶管理局である。
第二節
終末規定
第35条 連邦と沿海州との間の執行協定
本法では、水上警察の任務の執行に関して発布された下記の州の法律の行使についての協定には触れない。
1. ブレーメン 1955年4月12日付け(自由ハンザ都市ブレーメン法律公報59頁)、1983年6月28日付け(ブレーメン州法律公報405頁)
2. ハンブルク州法 1956年5月5日(ハンブルク州法規公報83頁)、1982年12月16日付け(ハンブルク州法規公報387頁)
3. メクレンブルク・フォアポメルン 1992年11月12日(メクレンブルク・フォアポメルン州法規公報660頁)
4. ニーダーザクセン 1955年12月23日(ニーダーザクセン州法規公報293頁)、1982年6月2日(ニーダーザクセン州法規公報153頁)
5. シュレスヴィヒ・ホルシュタイン 1955年7月15日(シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州法規公報137頁)、1984年12月10日(シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州法規公報247頁)
第36条 基本的権利の制限
住宅不可侵の基本的権利(憲法第13条)は、本法の定めにより制限される。
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