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第三節
調査の実施
第14条 外国及び国際海事機関(IMO)への通知
 国連海洋法条約第7章第94条又は第221条第2項(連邦官報1994年II 1798頁)に規定される海難事故がドイツ領内で発生したり、国外においてドイツ国籍の船舶がそのような海難事故に関わった場合、連邦当局は直ちに下記に通知する。
1. 船籍国
2. 海難事故調査における主要利害当事国
3. 海難事故・インシデントの調査に関するIMOコード(交通官報2000年128頁、付録集B8124 21頁)の定めにより、国際海事機関
 
第15条 航空事故調査法(Flugunfall-Untersuchungs- Gesetzes)の適用
(1)航空事故調査法第5条〜第29条が適用される。但し、第6条、第7条、第14条第5項、第21条、第24条、第26条第4項第2文を除く。本章に基づく調査手続は、個々の事例には外国法が強制的に適用できることを前提として、相応に実施される。下記に対応する用語を示す。
1. 「インシデント」は、航空事故調査法第11条第2項を例外として、「その他のインシデント」とする。
2. 「航空機」は「船舶」とする。
3. 「所有主」は「運航主」とする。
4. 「フライトレコーダー」は「航海情報記録装置」とする。
5. 「航空管制」は「海上交通管制(maritime Verkehrssicherungsdienste)」とする。
6. 「空の安全」、「飛行の安全」、「航空の安全」は「海上の安全」とする。
7. 「民間航空」は「民間海運」とする。
8. 「空港の操業を管轄する官庁」は「港湾の操業を管轄する官庁」とする。
9. 「航空機への搭乗者」は「船舶への乗船者」とする。
10. 「登録国」は「船籍国」とする。
11. 「所有国」は「運航主の所在国」とする。
12. 「航空機の残骸や破片、機体の一部に触れたり変化を加えること」は「船舶の部品、原材料のサンプル、船体の一部に触れたり隠蔽したり変化を加えること」とする。
13. 「航空機の乗務員」は「船長及び直接責任を担う乗組員」とする。
14. 「飛行技術」は「海上技術」とする。
15. 「航空会社」は「海運会社」とする。
16. 「航空事故」は「第1条第2項において規定されたインシデント」とする。
(2)航空事故調査法第5条第1項第4文及び第3項第3文、第14条第9項、第26条における管轄官庁への伝達、あるいは航空事故調査法第26条第2項及び第3項における文書並びに報告書の閲覧承認は、第19条に抵触しない場合にのみ許可される。航空事故調査法第26条第4項第1文の中の同法第6条第1文に記した箇所に関連した部分は、第14条に記した箇所に関連する。
(3)同法第3条に基づく調査依頼や調査目的は、第9条第2項の調査目的に置き換える。
(4)航空事故調査法第11条第1項第1号における「土地」とは、海上任務法(Das Seeaufgabengesetz第8条第1項及び第2項におけるドイツの主権下にある土地における船舶の操業やそのための施設、機器の製造に使用する操業・事業空間も含む。
(5)航空事故調査法第12条第1項第1文における事故現場への立ち入りを防ぐための封鎖及び同法第12条第1項第3文における封鎖された事故現場への立ち入りの決定についての箇所は、封鎖がドイツ領海内で実施可能な場合は、事故現場の封鎖及び封鎖された事故現場への立ち入りについての決定に置き換える。
(6)ドイツ領海内のおける海難事故においては、当該航海区域の専門的知識を持つ専門家へ航空事故調査法第12条第4項の趣旨に基づく委託や同法第14条第4項の趣旨に基づく諮問をすることによって正確な情報が得られるかどうかを連邦当局が調査する。
(7)航空事故調査法第16条第3項第2文に基づき、本法第4章に基づく海事審問委員会の訴訟手続の対象となるおそれや、航空事故調査法第10条第3項の記載に属する者に適用されるかなりの法的不利益を被るおそれがあると思われる質問に対し、目撃者は回答を拒否することができる。この点につき該当者に通知されていなければならない。
(8)航空事故調査法第17条における聴聞権を持つ者、同法第18条第3項第1号における名宛人、同法第22条の趣旨にある告訴権を持つ者とは、第7条に記した船級協会及び第1項第2文第13号にある乗組員の死亡事故の際には死亡者の配偶者又は事実婚のパートナー、成人の子孫も指す。
(9)航空事故調査法第18条第3項第2号における事故調査報告書の送達の箇所は、国際海事機関への送達に置き換える。海上における事故やインシデントの調査について定めたIMOコードがそれらの送達を定めていない場合は行われない。
(10)航空事故調査法第19条第2項の趣旨における「機関」には、安全協力の枠組みの中で個人、企業、団体も当てはめることができる。
 
第16条 調査主導国及び調査参加国の指名
(1)外国が主要利害当事国となる海難事故・インシデント等の調査手続を連邦当局が実施する場合、その国の要請により相互の了解のもとで下記が指名される。
1. 調査主導国
2. 調査主導国としてドイツが指名される場合、航空事故調査法第14条との関連にある本法第15条第1項の趣旨における参加国。
(2)ドイツが調査主導国である場合、連邦当局は、共同の調査手法を打ち出して調査の執行とそれに関連する調整を委託する人物や機関が指名されるように取り計らう。
(3)ドイツが調査主導国として実施する連邦当局の調査は、第2項の手続が完了していない場合においても先に進めることができる。
(4)連邦当局は外国の主要利害当事国との合意のもとで、本章に基づく調査を同時にその国のためにも執行することができる。
 
第17条 外国の調査への参加
 連邦当局は、外国の調査において調査目的の達成のために、航空事故調査法第5条に関連して本法第15条第1項が規定するところの協力が十分であるとみなす場合、ドイツを調査主導国としての指名対象から除外することができる。
 
第18条 IMOの手続への付託
 第11条、第14条、第16条、第17条にある「主要利害当事国」、「調査主導国」、「海難事故」の概念は、海上インシデント事故調査のためのIMOコードにあるものと同じ意味を持つ。
 
第19条 記録の返却と供述の評価
(1)連邦当局は収集した下記の記録を本章の趣旨における調査の目的以外に提供してはならない。
1. 個人の発言や意見
2. 船舶の運航に関与した者同士で交換した情報
3. 海上の事故やインシデントに関与した者に関する健康上のデータや写真を含む医学的な個人的内容の情報
 但し、その目的が、国連海洋法条約第94条第5項に関する附属書第1章にある国際調査規則や本法第14条第3号に記したIMOコード第10章に基づく国際調査規則の適用範囲になく、欧州共同体加盟国の所管の司法官庁の決定、又はその適用範囲外においては航空事故調査法第8条第1項第2文に関連する本法第15条の枠組みの中にあるドイツの司法官庁のその他の決定と矛盾しない場合は、この限りではない。
(2)これらの記録は、最終報告書や付録に要約された形式で、調査対象のインシデントの分析に重要である場合に限り記載される。個人的なデータは匿名で記録される。但し、第1項に基づき許可された提供目的に合致しない場合はこの限りではない。第1文の趣旨において重要ではないとみなされ最終報告書に含まれない記録部分は、提供されない。
(3)連邦当局が、航空事故調査法第14条に関連する本法第15条第1項に基づき外国の全権委任代表者の参加に合意するのは、他の規則がなければ、この国が物的証拠を相互に自由に利用可能とする点を認め、第2項、第3項の制限下で許可される限りにおいて、海難インシデント事故調査のためのIMOコード第10章の趣旨に基づき入手した資料や知識の提供を行うことを確約した場合に限る。
(4)本章に基づく調査中における個人の発言は、発言者へ重圧をかけるような利用をしてはならない。
 
第四章
行政手続における有責乗組員に対する法規の執行
 
第一節
原則、予備調査
第20条 第四章の行政手続の具体的な適用範囲
 本章は、破損や危険を引き起こすインシデントの原因の調査と評価の際に、下記(資格)の所持者
1. その時点において有効な海上任務法第2条に基づき連邦の任務の範囲内で交付した資格
2. 海上任務法の範囲内で交付されたプレジャーボートなどの乗り物の操縦免許並びに外国の官庁が発行している、あるいは内陸水域における舟航のための資格証明や操縦免許の取得者に対して、行政手続法第9条の趣旨における手続として適用される。
 
第21条 第四章における国際調査規則
 本法が該当する場合、本章の範囲内において付録C、Dにある国際海難調査規則が適用される。
 
第22条 調査の公的利害
(1)資格取消しや資格証明及び操縦免許の権能の行使を制限することにおいて十分な根拠がある場合、北西部水路・船舶管理局は、適切な調査により公益を確定するための手続を直ちに開始しなければならない。
(2)第1項における十分な根拠とは、付録C、Dに含まれる国際調査規則に基づいて状況を検証しなければならない場合においては、特に考慮を必要とする。
(3)当局の調査が第1項における措置が見込まれることを想定するのに十分な外的理由を呈する場合、当局は直ちに所管の海事審問委員会に、被疑資格者(当事者)との関連において本章に基づく調査の実施を申請しなければならない。
(4)連邦航行管理局の職を遂行する資格を行使した場合、北西部水路・船舶管理局は第1項に規定された既知の根拠について連邦交通・建設・住宅省に報告する。管理局は同省から、第3項における申請の提出指示を受けることができる。
(5)資格の取消、資格の行使の制限、しかるべき証書の確保や押収に関する他の法規に基づく管轄と権限については、ここでは触れない。
 
第23条 第四章における調査の実施義務又は中止義務
(1)北西部水路・船舶管理局が第22条第3項に基づく申請を提出した場合、本章に基づく調査が実施されなければならない。
(2)本章に基づく調査は、関係人が本章に基づき管轄する官庁に書面にて、その資格を向こう30ヶ月の間は行使しないことを最終的に通知した場合、あるいは第22条第1項に基づき第31条第1項第1文に記した主観的特徴の恒久的欠点があるとの疑いを当局が持ち、その資格を恒久的に行使しないことを最終的に通知した場合、また、関係人が定められた期間が過ぎるまで相応の資格証書をこの当局に最終的に預けた場合は、中止されなければならない。管轄官庁はその指令を出し、特別の理由が提示された場合は、第1文に定められた期間を短縮することができる。第31条第5項が相応して適用される。
 
第二節
海事審問委員会の調査機関
第24条 海事審問委員会の権能
(1)本章に基づく調査は、北部・北西部水路・船舶管理局の任務である。当局は調査委員会(海事審問委員会)をハンブルク、キール、ロストック、ブレーマーハーフェン、エムデンに設置する。
(2)連邦交通・建設・住宅省は、法規によって海事審問委員会の管轄区域を定める権限を持つ。
(3)連邦交通・建設・住宅省は、海事審問委員会の業務規則を発布する。公布前に沿海州にヒアリングを行わなければならない。その業務規則は交通官報で公示される。
 
第25条 海事審問委員会の構成
(1)海事審問委員会は、委員長1名、常任陪席員1名、名誉陪席員2名の役職を決定する。
(2)決定は多数決とする。同数票の場合は、委員長の票で決める。委員長及び陪席員は裁決の内容についてのいかなる指図(第30条)も受けない。口頭審理(第29条)以外での決定は、委員長が下す。
(3)海事審問委員会の委員長は、ドイツ裁判官法に基づき、裁判官の資格を有していなければならない。海事審問委員会の常任陪席員は、商船の海技資格を扱う場合は、相応する船舶の船長の資格を所持し、船舶の指揮における十分な経験がなければならない。
 
第26条 名誉陪席員
(1)北部・北西部水路・船舶管理局は、その管轄区域の海事審問委員会の名誉陪席員の推薦リストを作成する。そのリストは、所管の連邦及び州の官庁や同業団体や利益団体から指名された者がからなる。
(2)各水路・船舶管理局は、その推薦リストから必要数の名誉陪席員を選定し(名誉陪席員リスト)、その名誉陪席員に名誉職としての活動を委嘱する。
(3)連邦交通・建設・住宅省は、法規により下記を決定する権限を有する。
1. 名誉陪席員候補者群
2. 名誉陪席員への専門的な要件
3. 名誉陪席員リストに盛り込まなくてはならない事項
(4)名誉陪席員は、委員長によって名誉陪席員リストの中から審理に召集されることとする。その際、関係者の船内での役割や対象インシデントの場所や性質を考慮した上で、専門性と独立性のある人事を確実に行わなければならない。名誉陪席員は、調査結果を報告する権利と義務を有する。


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