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第2部 調査
第41条
1. 委員会は、第5条の規定を損なうことなく、調査実施の是非を決定する。
2. 委員会の委員長は、第1項に示される委員会の決定を見越して、暫定調査(provisional investigation)の実施を決定することができる。委員長はその他の委員会メンバー又は事務局長に対し、代理決定権を与えることができる。
3. 調査又は暫定調査実施の決定は、インシデントの発生日から起算して5日以内に行わなければならない。ただし、以下の場合を除く。
a. 当該インシデントが他のインシデントと関連して調査されている場合。
b. 後日、調査を正当化する事実や状況が見つかった場合。
c. 調査が、専らインシデントの被害処理に関係する場合。
4. 委員会は、関連大臣、地方又は自治体の適切な行政府に対し、調査の実施について報告しなければならない。
 
第42条
 オランダ王国全領域の治安、又は、国際法及び国際秩序の維持、進捗に関する重要な理由によって、当省大臣が調査を実施しないことを決めた場合、委員会はこれに従わなければならない。
 
第43条
1. オランダの関連大臣、女王弁務官(Queen's Commissioner)、又は知事は、委員会に対して書面による調査実施の要請を提出することができる。
2. 委員会はそのような要請について、早急に決定しなければならず、要請受領後4週間以内に決定について請願者に通知しなければならない。委員会は当該期間を1度に限って4週間延長することができる。委員会は請願者に対し、延長の旨を通知しなければならない。第41条3項は適用されない。
3. 要請に対して委員会が否定的な決定を下した場合、決定の理由を提示しなければならない。
 
第44条
 調査開始の通知、及び、外国や国際機関への暫定通達の送付に関しては、省規定に従って規則を定めなければならない。
 
第45条
1. 委員会は、ある国家から要請があれば、その国の代表1名以上を調査に参加させることができる。関連大臣は、外務大臣の介入を通じて、そのような要請を他国に知らせることができる。
2. オランダ軍の兵器、人員、施設のほか、北大西洋条約機構加盟国の兵器、人員、施設が関与する軍事インシデントの調査においては、委員会は当該国の代表に対し、調査への参加の機会を与えなければならない。
3. 蘭領アンティル諸島又はアルバが関与するインシデントの調査においては、委員会は、蘭領アンティル諸島又はアルバの各政府の要請に応じて、蘭領アンティル諸島又はアルバの代表1名以上が調査に参加することを認めることができる。
4. 当該代表は、専門家の支援を求めることができる。
5. 当該代表及び専門家は、調査で収集したデータ及び情報へのアクセス権を与えられなければならない。ただし、本人たちには機密保持が義務づけられ、本人が代表する国家において、かかるデータに対して本国家法に定められている以上の公開性を義務付けられていないことを条件とする。
6. 委員会が国際協定に関連して第1項を適用しなければならない場合については、省規定によって決定される。さらに、オランダの関連大臣が第1項に示される要請を提出しなければならない場合についても、省規定によって決定される。
7. 代表及び支援を提供する専門家の追って明記される権限に関しては、枢密院王国令又は枢密院令に従って、詳細な規則を定めなければならない。
 
第46条
 追って明記される事例においては、追って明記される傷害を負った市民の属する国家に対し、調査に関連する省規定により、追って明記される特定権利が与えられる。
 
第47条
 我国又は外国軍の軍用機以外の航空機インシデントを調査する場合、委員会は、欧州連合加盟国又は欧州経済領域(European Economic Area)に関する条約の締約国から、専門家又は組織の支援を要請し、以下を利用する権限を有する。
a. 以下のための設備、施設、機器:
1. 残骸、搭載装置、その他調査に重要な物件の技術的調査
2. フライトレコーダーからの情報処理
3. 航空事故に関するデータの電子ファイリング及び処理
b. 特定の任務を任された、事故又はインシデント調査に精通した専門家。これは専ら重大な航空事故に関わる調査に限られる。
 
第48条
1. 委員会は聴聞会を開催することができる。
2. 委員会は以下に対し、聴聞会の場所及び日時を書面によって通知しなければならない。
a. その行為や不作為がインシデントの発生に影響したと委員会が暫定的に判断した自然人、法人、行政機関、又は、上記の自然人の生存遺族。
b. 調査に参加した、第45条に示される代表。
c. 第4条3、4項に示されるインシデントの調査の場合は、国防大臣。
d. その旨の要請があった当省大臣又は法務大臣
3. 聴聞会の場所及び日時は、オランダ政府官報でも公表しなければならない。
 
第49条
 委員会は聴聞会を開催するにあたり、真実にたどりつくために必要であると判断した場合、第48条2項a節に示される者がインシデント関連書類を閲覧することを認めるか否かを決定することができる。聴聞会準備のために議事項目に接触するときばかりではなく、当該書類を調べる者は機密保持の義務を守ら存ければならない。
 
第50条
1. 委員会の聴聞会は公開しなければならない。
2. 重大な理由がある場合、委員会は、取り扱う問題、あるいはその一部の議論を非公開とすることを決定することができる。それが審理される(being heard)者の明確な希望であり、公開審理によって、本人又は、直系尊属、卑属又は傍系第2、3親等の血族、姻族、配偶者又は元配偶者、登録共同出資者又は元登録共同出資者が、刑罰懲罰又は不利な判決にさらされる可能性があるとその者が判断した場合、委員会はそのような決定をする義務を負う。委員会は、この可能性について審理される者に知らせなければならない。
3. 委員会聴聞会中の手続に関しては、枢密院王国令又は枢密院令に従って、詳細な規則を定めなければならない。
 
第51条
1. 委員会委員長は、証人又は専門家としての審問を必要とする場合、その者を召喚する。委員長は必要に応じて、行政官(bailiff)通知をもって招集することができる。会議開催日は、招集日から最低2週間後とする。
2. 証人又は専門家として召喚された者は全員出席しなければならない。
3. 招集された証人又は専門家が出席しない場合は、召喚の正確な記述を委員長の署名とともに、正式報告書に記録する。
4. 反証(proof to contrary)のない限りにおいて、欠席の正式報告が記載事項の全てであることを証明する。
5. 証人又は専門家が委員会聴聞会に出席しない場合は、委員長は委員会の管轄地方裁判所の検事に対し、証人又は専門家を召喚し、法廷への召喚状を付加するよう要請することができる。
6. 第48条2項に示される自然人及び、法人、行政機関の代表は、委員会に召喚されない場合、自らの要請によって証人として聴聞会で意見を述べる権利を有する。
 
第52条
1. 証人は16歳以上であるという条件の下、真実を、真実そのものを、そして真実だけを語ることを委員長の立会いのもとに宣誓又は厳粛に確約したあとに、審理される。証人が知的障害又は知的能力の発達不足によって宣誓の重要性を十分に理解しないと委員会が判断した場合は、宣誓又は厳粛な確約をさせることはなく、処罰を無効にする条件で、証人には、真実を、真実そのものを、そして真実だけを語ることが求められる。
2. 専門家は知りうる限りのことを話すことを、委員長の立会いのもとに宣誓又は厳粛に確約したあとに、審理される。
3. 委員長による要請があった場合、証人及び専門家は、証言すること、又は専門家として貢献することを、宣誓又は厳粛に確約しなければならないが、公式な、又は職業上の機密保持が関わる場合はこの限りではない。
4. 証人及び専門家の審理については正式報告書を作成し、委員長及び事務局長の署名を添えなければならない。
 
第53条
 委員会は、委員長により召喚された証人、専門家、及び委員長が任命した通訳に対し、省規定で定められた報酬を支払うことができる。
 
第54条
 委員会の調査に関しては、枢密院王国令に従って詳細な規則を定めなければならない。
 
第55条
1. 委員会は、調査完了時に報告書を作成しなければならない。
2. 調査が及ぶ限り、当該報告書には必ず、以下を収録しなければならない。
a. インシデントの事実分析、被害の処理法、分析の基となるデータ。
b. インシデントの原因又は推定原因、及び、その被害の範囲。
c. 安全性に構造的な欠陥があると考えるに足る理由がある場合は、その欠陥とそれに関する勧告。
3. 第69条1項a〜e節に示される文書及びその他のデータ記憶媒体は、インシデントの事実分析又は結論の構築に必要な場合に限り、報告書に収録する。事故又はインシデントに関与した人に関する名前、住所、身元を示す同様のデータは、報告書に収録してはならない。
4. インシデント及びその被害の両方を調査する場合は、委員会は2部に分けて報告書を発行することができる。2部構成の報告書を発行する場合、報告書に関する規定はどちらかの部分に適用するものでなければならない。
5. 報告書に関しては、省規定によって詳細な規則を定めることができる。
 
第56条
1. 委員会は第48条1項a節に示される当事者に対し、報告書草案を送付しなければならない。当該当事者は、報告書草案が送付された日から4週間は、書面によって意見を提出することができる。報告書草案に関しては機密保持の義務を負う。委員会は、第55条2項c節に示される報告書部分については、送付する報告書草案に収録しないことを決定することができる。
2. 意見を求めるための、他国又は、蘭領アンティル諸島及びアルバに対する報告書草案の送付、及び、意見提出期間に関しては、枢密院王国令によって、又は従って規則を定めなければならない。
3. 意見が提出された場合は、委員会は報告書に調整を加えることができる。報告書が意見の趣旨に沿って調整されない場合は、委員会は報告書にその理由を示さなければならない。
 
第57条
1. 委員会は、収集した以下の情報を報告書に収録してはならない。
a. 王位統一を脅かす可能性のある情報
b. オランダ王国の治安を害する可能性のある情報
c. 自然人又は法人によって極秘に提供された会社や製造データに関する情報
d. 個人データ保護法(Personal Data Protection Act)の第2章第2項に示される個人的データに関する情報。ただし、提供されたデータが個人のプライバシーを明らかに侵害していない場合を除く。
2. また、委員会は収集した情報の重要性が以下の利益と平衡しない限り、それを報告書に収録してはならない。
a. オランダ王国又はオランダ王国領と、他国又は国際機関との関係
b. オランダ王国、オランダ王国領の特殊法人、政府情報一般公開法(Government Information Public Access Act)第1条a、c、dに示される行政機関の経済的、財政的利益
c. 犯罪の発見及び告発
d. オランダ王国領の行政機関による査察、監祖、監督
e. プライバシーの尊重
f. 当該事例に関与する自然人、法人、第三者に対する過度の優先や損害の防止
3. 第1項第1文及びc節は、環境中への排出に関する環境管理法(Environmental Management Act)第19.1a条に示される環境情報には適用されない。さらに、上述の規定の特例として、環境情報は、報告書に収録することの重要性がそこに述べられている利益と平衡しない限りは、報告書から除外する。
4. 第2項第1文及びb節は、環境管理法第19.1a条に示される環境情報を報告書に収録することが機密行為に関わる場合は適用されない。
5. 第2項第1文及びe節は、当事者が当該情報を報告書に収録することに同意した場合は適用されない。
6. 第2項第1文及びf節は、環境管理法第19.1a条に示される環境情報の報告書への収録には適用されない。
7. 環境管理法第19.1a条に示される環境情報は、その重要性が以下の利益と平衡しない限り、報告書に収録してはならない。
a. 当該情報が言及する環境の保護
b. 会社の安全及び生産妨害の防止
8. 第1、2、7項を環境情報に適用するにあたっては、本情報が環境中への排出に言及しているか否かを考慮に入れる。
9. 第3〜8項は、蘭領アンティル諸島及びアルバに関する環境情報には適用されない。
 
第58条
1. 委員会は、調査ができるだけ効率的に、またできるだけ短期間に実施されるよう取り計らわなければならない。
2. 個人的なインシデントの調査の場合、委員会は出来るだけ早く、どんなことがあってもインシデント発生日から12ヶ月以内に、報告書を発行することを目標としなければならない。


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