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調査の報告
13-(1)第(3)項を条件に、主席検査官は、連合王国以外の国のために実施される調査の対象となる事故以外の事故の第10条(8)項(a)号に基づく調査の報告書を大臣に提出させることができ、これをできるだけ最短の期間で、かつ適当と思われる方法で一般に公表させることができる。
(2)当該報告書には、以下を記載するものとする。
(a)事故の事実に関する結論、
(b)事実関係を明確に証明することが不可能である場合は、事実関係を推定するための分析と専門的判断、及び、
(c)将来の安全に対する勧告
(3)主席検査官は自らが以下を行うまでは報告書を公表することはできない。
(a)当該報告書により悪影響を受ける人物又は組織、あるいは当該人物が死亡している場合は、本項に基づき通知を与えようとする時点で当該死亡している人物の当該事案に関する利益又は名誉を保護するにもっともふさわしいと主席検査官が判断する一人又は複数の人物に本条に基づき通知を送付し、かつ、
(b)当該通知を受けた者又はその代理の者により第(5)項に基づきなされた報告書中に記載される事実又は分析に関する表明を考慮し、適当と思われる形で報告書を変更するまで。
(4)第(3)項(a)号の通知には報告書案のコピーを添付しなければならない。
(5)第(3)項(b)号の表明は書面でなされなければならず、第(3)項(a)号の通知の送達後28日以内又は第16条によりそれよりも長い期間が許される場合はその期間までに主席検査官宛に送付しなければならない。
(6)第12条の裁判所命令によるものを除き、いかなる者も、以下の情報を、主席検査官の書面による事前の合意なしに、第(3)項(b)号に記載する主席検査官に表明を行うために必要な顧問以外の者に開示し、また、開示することを許可してはならない。ただし、当該顧問は同様の情報を開示しない又はさせない義務を負うものとする。
(a)本条第(4)項に基づき提供された情報、又は、
(b)主席検査官又はその代理の者により報告書の公表の前に提供された情報で第12条によりその秘密が保護される情報
(7)主席検査官は一般に公表された報告書のコピーを以下の者に与えなければならない。
(a)第(3)項(a)号に基づく通知の送達を受けた者、
(b)当該報告書において勧告がなされている相手方の人物又は機関、
(c)国務大臣、
(d)IMO、
(e)当該調査に第11条(1)項が適用される場合は、欧州委員会(European Commission)、及び、
(f)当該報告書が有用又は有益であると主席検査官が思量する人物又は組織
(8)調査の対象となる事故後に検視又は死亡事故調査が実施される場合は、主席検査官は機密文書として報告書案を検視官又は検察官の縦覧に供することができる。
(9)報告書又は報告書中の分析のいずれかの部分が、商船法第259条又は第267条(8)項に基づく検査官の権限を行使することによって取得された情報に基づくものである場合は、裁判所又は審判機関が第12条(5)項(b)号又は(c)号に記載する事実を考慮して必要と認める場合を除き、当該報告書は責任を決定し又は配分することを目的とする、又は目的の一部とする司法手続においては証拠として認められない。
(10)本条において、「司法手続」とは、裁判所、審判機関、法律により審査、宣誓の上での証拠を審理し、取得し及び審問する権限を与えられた者による民事、刑事手続等をいう。
 
調査報告以外の公表
14-(1)主席検査官は、その裁量で、学んだ教訓を広げるため、第13条(1)項により公表される報告の対象とならない事故の総括的な簡易報告書を適宜発表することができる。
(2)主席検査官は、その裁量で、国務大臣に海難事故調査の分析により明確になった事項につき報告書を提出することができる。
 
勧告
15-(1)主席検査官は、完了しているか否かにかかわらず一件又は数件の調査の結果に基づき、いつでも将来事故を防止するための勧告を行うことができる。
(2)勧告される手段は、主席検査官がこれを実施するのに最も適していると考える人物又は機関に対して申し入れられるものとする。
(3)主席検査官が一般公表することが安全及び汚染防止に役立つと考慮する場合はこれを一般公表しなければならない。
(4)第(2)項に基づき勧告が申し入れられた相手方は、遅滞なく以下を行わなければならない。
(a)当該勧告を考慮に入れること、
(b)主席検査官に以下を送付すること、
(i)当該勧告を実施するために取った、又は取ることを予定する措置がある場合はその詳細、及び、当該措置を取ることを予定する場合はその実施を確保するための予定表、又は、
(ii)勧告を実施するために手段を取らない場合はその理由
 第(i)号による詳細又は予定表、又は第(ii)号による説明は、勧告受領後28日以内に主席検査官宛にこれを提出しなければならない。
 (c)第(4)項(b)号(i)により主席検査官に提出した、取る予定であるとした措置又は実施を確保するための予定表が状況の変化により正しくないと判明した場合はこれを主席検査官に通知する。
(5)第(6)項、第(7)項を条件に、主席検査官は、毎年又は適当と思われる間隔で、連絡を受けた第(4)項(b)号又は(c)号に規定する説明を含む事項にかかわる情報を一般に公表しなければならず、また、大臣にこれら事項について連絡をしなければならない。
(6)主席検査官は、まず情報中に記載される人物に通知を行い、通知を受けた人物又はその代理人が第(7)項に基づき主席検査官に行った当該情報に関する表明を考慮し、主席検査官が適当と考える形でこれを変更した後でなければ、当該情報を一般に公表してはならない。
(7)第(6)項に基づきなされる表明は書面によるものでなければならず、同項に規定する通知受領後28日以内又は第16条によりそれよりも長い期間が許される場合はその期間までに主席検査官宛に送付しなければならない。
 
期間の延長
16-(1)主席検査官は第13条(5)項に規定する28日という期間を延長する権限を有すものとするが、第13条(1)項の調査報告をできる限り短期間に公表すべきであるという要件を考慮した上で、期間の延長を与えるに適当な理由があると考える場合のみに期間の延長を許すものとする。
(2)主席検査官は第15条(4)項(b)号に規定する28日という期間を延長することが適当であると考える場合には当該延長を許す権限を有すものとする。
(3)本条に基づく権限は、規定の期間が経過した後にも行使することができる。
 
書類の送達
17 本規則の規定により何らかの者に送達又は与えられることが必要とされる、又は許される通知その他の書類は、以下の方法でこれを行うことができる。
(a)相手方に配達する、
(b)連合王国の内外にかかわらず、相手方の通常の又は最後に分かっている居住地又は事業所に残す、
(c)当該住所に郵送する、又は、
(d)テレックス、ファックス、その他の通信内容を記載する書類を再生する通信方法、又は、電子メールにより送信する。この場合は、書類は送信がなされた時点で送付されたものとする。
 
罰則
18.(1)以下の者は違法行為を犯したこととされ、略式有罪判決(summary conviction)により標準等級(standard scale)第5級以下の罰金に処す。
(a)第6条(1)項、(2)項(a)号、(2)項(b)号に記載する者が、正当な理由なく第6条により必要とされる事故報告を怠った場合、
(b)船長又は船舶の所有者が正当な理由なく第6条(5)項に違反した場合、
(c)(a)号に規定する者が、正当な理由なく第7条(3)項により必要とされる情報の提供を怠った場合、又は、
(d)前記の者が事故又は重大な傷害に関する追加情報又は新しい証拠を有しているとの虚偽の申し立てをした場合。
(2)何人も正当な理由なく第9条(1)項、(2)項、又は(5)項から(7)項までに規定する要件、義務、又は禁止事項に違反した場合は、違法行為を犯したことにより略式有罪判決による法律上の最高額の罰金及び起訴の上、略式有罪判決による罰金刑に処す。
(3)何人も、正当な理由なく第12条(1)項又は第13条(6)項に違反して情報を開示し、又は開示を許した場合、又は、第12条(2)項に違反して書類又は記録を入手可能とした場合は、違法行為を犯したことにより略式有罪判決により標準等級第5級以下の罰金に処す。
 
運輸大臣の権限にて署名
ディビッド・ジェイミソン(David Jamieson)
運輸省、政務次官 2005年3月22日
 

注記
(本注記は規則を構成するものではない)
 
 本規則は1999年商船(事故報告及び調査)規則(S.I. 1999/2567)と差し替えられるものである。
 本規則においては、1999年規則を、運輸省海難調査部(Marine Accident Investigation Branch-MAIB)の現況を反映するため、及び、他の輸送手段における事故調査に適用される実務とできるだけ整合するよう改正した。
 主な改正点は以下のとおりである。
・「予備調査」、「生存する上級船舶職員」、「連合王国の水域」、「航海データレコーダー」の定義が新たに挿入され、「プレジャーベッセル」の定義は2004年シビル・パートナーシップ法(Civil Partnership Act 2004)の施行時にシビル・パートナーの概念を考慮するよう変更された。(第2条(1)項)
・「安全について過去の経験を生かす」というMAIBの最大の懸案事項が調査の目的に関する規定の改正に反映されており、本規則では事故調査の唯一の目的は将来の事故防止とされ、また一方で、この目的を達成するにあたり、原因と状況を解明することが確認されている。(第5条)
・事故の報告義務は船舶の船長、小型船船長のみならず、所有者(管理者を含む)、生存する上級船舶職員にまで拡大された。更に、海事沿岸警備庁(Maritime and Coastguard Agency-MCA)のみならず港湾当局その他の管理当局に対しても事故を認知した場合にこれを報告する義務が加えられた。(第6条)
・調査命令を発する状況が修正され、特に自殺又は自然死による死亡及び自殺未遂による重大な傷害の場合はこれより除外することとした。大臣が正式調査(Formal Investigation)を行うことを命ずる場合に調査を中止しなければならないという要件が削除された。(第7条)
・証拠保全義務については、第6条により事故の報告義務を有する者にも当該義務が課されるよう変更された。また、航海データレコーダーの情報の保全についての規定が加えられ、連合王国領海内での事故発生後に証拠保全に関する規定を遵守するよう外国船籍の船舶関係者に対して要請できるよう、当該規定が拡大された。主席検査官には、証拠収集及び保全に必要と主席検査官が考える場合で、連合王国の水域内で船舶へのアクセスができなければ以後当該船舶又は船員へのアクセスが拒否されると考えるに合理的な理由がある場合は、連合王国の水域内での船舶へのアクセスを求める権限が新しく付与された。(第9条)
・調査の実施に関し、検査官によって口頭審問に出席することが許された者又は証人により選任された者で証人のみを代理する弁護士その他の専門法律顧問以外の者を、当該人物が出席することにより調査に支障をきたすと信じるに十分な理由がある場合に、その出席を排除させる権限が検査官に新たに付与された。当該排除には主席検査官の承認が必要とされる。選任された者が排除された場合は、証人は別の者を選任して出席させることができる。また、主席検査官が、予備調査後に報告書が公表されることとなる本調査を行うか否かを決定することに関する規定が設けられた。(第10条)
・記録の開示に関する規定が修正され、裁判所命令なしに入手可能な書類、記録の枠が拡大され、証人が自らが適当と考える宣言書を開示することができることとなった。事故調査又は連合王国の外交関係を侵害することより開示により正義に資することの方が重要であると裁判所が判断する場合にのみ命令が発せられることを確保するための規定が挿入された。また、主席検査官が裁量で警察その他の官公庁と特定の情報やデータを共有することができるための規定が設けられた。(第12条)
・予備調査段階を超えて実施される調査に付き、将来の安全についての勧告を含む記載すべき事実及び事項についての規定が設けられた。主席検査官が公表した報告書のコピーを送付する人物又は組織の種類が拡大された。大臣が国家の安全を理由として一般に入手可能としないこと、削除することを命ずることができるとされた規定は削除された。主席検査官の同意なしに報告書案中又は公表前に提供された情報の開示について、制限が課せられた。裁判所命令がない限り、報告書が民事、刑事の司法手続において証拠として認められないという規定が新しく追加された。(第13条)
・勧告が与えられた者が、当該勧告を考慮し、28日以内に主席検査官に実施措置の詳細を提供し、又は当該措置を取らない理由を説明する義務を導入し、主席検査官がこれらに関する情報を公表することを許す規定が新しく設けられた。(第15条)
・書類の送達に関し、電子メールによる送達を可能とする規定が設けられた。(第17条)
・本規則は、港湾当局及び内陸水路当局が認知する事故につき合理的な理由なく報告を怠った場合、又は第7条に基づき主席検査官が提供することが義務付けられている情報を提供することを怠った場合はこれを法律違反とするという、新しい法律違反行為を設定した。
 また、何人も事故に関係する船舶へのアクセスの禁止又はこれへの妨害禁止規定、又は証拠の収集又は保全のために連合王国の水域内で船舶へのアクセスを可能にさせる義務に関する規定に合理的な理由なく違反した場合は、違法行為となる。(第18条)


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