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調査の目的
5-(1)本規則に基づく事故調査の唯一の目的は、事故の原因と状況を確定することにより将来の事故を防止することにある。
(2)調査の目的は、責任を決定することでも、また、その目的を達するために必要な場合を除き、責任を配分することでもない。
 
事故及び重大な傷害を報告する義務
6-(1)事故が発生した場合、当該船舶に関する以下の者は、事故発生後できる限り速やかに、かつ最も迅速な方法で主席検査官にこれを報告しなければならない。
(a)船長。船長が生存しない場合は、生存する上級船舶職員、及び、
(b)第(a)項の規定に従い船長又は生存する上級船舶職員が事故の報告を行ったことが確実であると船舶所有者が納得できる場合を除き、船舶所有者
(2)第(1)項に基づいてなされる報告に加え、以下の者は、事故の発生を認知した場合はこれをできる限り速やかに、かつ最も迅速な方法で主席検査官に報告しなければならない。
(a)港湾境界内又はその付近で発生した事故については、当該港湾当局、
(b)連合王国内の内陸水路で発生した事故については、当該内陸水路を管轄する者、当局、又は機関、又は、
(c)連合王国領海内で発生した事故については、MCAの職員
(3)第(1)項又は第(2)項に基づき報告を行う者は、当該報告にできる限り以下の情報を含めるものとする。
(a)船舶名、及び、IMO船舶番号、正式船舶番号、又は漁船番号、
(b)所有者の氏名と住所、
(c)船長、小型船船長、又は責任者の氏名、
(d)事故発生日時、
(e)出発地、目的地、
(f)事故発生場所の緯度及び経度、又は地理上の位置、
(g)船上事故の場合は事故の発生した船舶の部分、
(h)天候状況、
(i)事故にかかわる他の船舶の船舶名及び船籍港、
(j)死亡者又は負傷者の数とその氏名、住所、性別、
(k)事故発生までの一連の出来事、損害の規模、当該事故により汚染又は航海への危険が生じたか否か等が判明している場合はこれらを含む、事故の簡略な説明、
(l)当該船舶に航海データレコーダーが装備されている場合は当該レコーダーの製造元及びモデル番号
(4)前項に基づいて行う報告に加え、第(1)項に規定する者は、各事故の状況が調査され、当該調査の結果を明記し、かつ再発の防止のために取られた又は提案された手段を記載した報告書が主席検査官にできる限り速やかに提出されることを確保しなければならない。
(5)船長及び船舶所有者は、合理的に可能な限り、各重大な傷害を負わせることとなった状況が調査されることを確保しなければならず、そのいずれかの者は14日以内に主席検査官に当該調査の結果を明記し、かつ再発の防止のために取られた又は提案する手段を記載した報告書を提出しなければならない。
(6)本条は以下の事故には適用されない。
(a)死亡又は負傷した者が港湾作業員又は陸上の作業員である場合の事故で、連合王国の港湾内で生じた事故、又は、
(b)連合王国の造船所内で発生した事故
 
調査命令
7-(1)主席検査官はいかなる事故についても原因調査を行わせることができる。
(2)第6条(1)項、(2)項、(4)項、又は(5)項に基づく報告を受理した場合は、主席検査官は、予備調査を含む調査を行うべきか否かについて決定し、報告受領後28日以内に事故の当事者にその決定を通知しなければならない。
(3)調査を行うべきであるか否か、また、調査を行うべきである場合にいかなる調査を行うべきかを決定するに先立ち、主席検査官は事故及びその結果取られた救済措置について必要と思われる情報を取得させることができ、第6条(1)項又は(2)項に記載する者、その他検査官より当該情報の提供を求められた当該情報の保持者は、最善を尽くして知る限りの情報を提供しなければならない。
(4)第3条(a)項の適用される事故については、主席検査官は、以下であると認める場合、又はこれが証明されたと認める場合は事故の調査を行わない決定を下すことができる。
(a)死亡が自殺又は自然死による場合
(b)主要な傷害が自殺未遂の結果生じたものである場合
 また、この場合は、すでに開始されている調査を中止することができる。
(5)調査が開始されたことについての公示は、主席検査官が適当とする方法で行うことができ、当該公示において、関連する証拠の提出を希望する者に対し当該公示が特定する方法で当該公示が特定する期間内に検査官にこれを提出するよう呼びかけることができる。
(6)大臣は、主席検査官にいかなる事故の調査も命ずることができ、また、調査に以下のものを含む、より広範な事故の結果を含めるように調査範囲の拡大を命ずることができる。
(a)救助及び汚染に関する事項、又は、
(b)捜索救助活動。
 また、その場合は、主席検査官はより広範な事故結果についての調査を行うことができ、当該調査は当初の事故の調査とは別個かつ異なる事故調査となることもある。
 
二次(Subsequent)調査又は再調査
8-(1) 第7条(2)項に基づき主席検査官が調査を行わないと決定した場合でも、主席検査官は、決定の後に調査を行うことが将来の安全に資すると信ずるに値する理由があると認めた場合は、決定後いつでも調査を行わせることができる。
(2)主席検査官は、調査完了後、なされた安全勧告に重大な影響を与える可能性がある新しい重要な証拠が発見されたと考える場合は、調査を再開させることができる。
(3)再調査は調査の全部又はその一部について行うことができ、また、再調査には本規則の規定が適用され、これに基づいて行われなければならない。
 
証拠保全
9-(1)連合王国の船舶にかかわる第6条に基づき報告を行わなければならない事故が発生した場合は、第(3)項に規定する者は以下のものが全てそのまま保全されこれにいかなる変更や記録もなされないよう、できる限りの努力を払わなければならない。
(a)海図、
(b)航海日誌、
(c)事故前、事故中、事故後にかかわる航海データレコーダー又は記録装置よりの情報を含む、電子的、磁気的記録及びビデオテープ、及び
(d)事故に関連すると合理的に判断できる全ての書類その他の記録
(2)また、連合王国の船舶にかかわる事故が発生した場合は、第(3)項に記載する者は、以下を確保しなければならない。
(a)特に必要な場合は当該情報が上書きされるのを防ぐための手段を講じるなど、事故の状況にかかわる航海データレコーダー又は記録装置の全情報が保存、保全されること、及び、
(b)事故の調査に関係すると合理的に判断できるその他の装置ができる限りそのままの状態で保持されること
(3)第(1)項及び第(2)項に記載する者とは、以下の者をいう。
(a)船長又は船長が生存していない場合は生存している上級船舶職員、及び
(b)船長又は生存している上級船舶職員が当該行為を行ったことが確実であると船舶所有者が納得できる場合を除き、船舶所有者
(4)第(1)項の書類、情報又は記録が保存され変更されないことを確保する義務及び第(2)項の情報が保存、保全されること、又は装置がそのままの状態で保持されることを確保する義務は以下のいずれかの時期まで継続する。
(a)調査が行われないこと、又は調査が完了したことの通知を主席検査官より受領するとき
(b)主席検査官が第6条(1)項に記載する報告を受領した日より28日が経過し、主席検査官が当該事件につき調査を行う決定を下した旨の通知を送付しなかったとき
(c)主席検査官又は調査を行っている検査官がその必要がなくなったと書面で通知を行ったとき
(5)連合王国の水域内において連合王国の船舶でない船舶にかかわる事故が発生した場合は、第(3)項に記載する者は、主席検査官の要請により又は主席検査官に代わり、第(1)項及び第(2)項の所要条件を遵守しなければならない。
(6)検査官は、調査中、いかなる者に対しても事故にかかわる船舶、作業用ボートその他の装置へアクセスし、又はこれへの妨害を禁止することができる。
(7)事故の発生後、主席検査官は、事故にかかわる予備調査を含む調査に関係する証拠の収集又は保全に合理的に必要であると考える場合は、船長、又は船長が生存していない場合は生存する上級船舶職員及び船舶の所有者に、検査官が証拠の収集又は保全の過程が完了したと納得できるまで、当該事故の調査にかかわる検査官の連合王国の水域内での当該船舶へのアクセスを確保するよう命じることができる。
(8)主席検査官は、第(7)項に記載する証拠等の収集又は保全に必要な期間を超えて、船舶が連合王国の水域に停泊するよう命じることはできず、当該証拠が迅速に収集、保全されることを確保するため、あらゆる合理的な措置を講じなければならない。
(9)主席検査官が、船舶が連合王国の水域を離れた場合、主席検査官又は調査を行う検査官が、船舶、船員、調査に関連する船上の証拠にアクセスすることが後に拒否される可能性があると考慮することに合理的な理由がある場合以外は、第(7)項の命令を発することはできない。
 
調査の実施
10-(1)主席検査官が第7条(1)項に基づき調査を行うべき決定を下した場合は、1人又は複数の調査官が、第5条に記載する目的を達成するに最も資すると思われる時期、場所、方法で調査にあたるものとする。
(2)主席検査官は、商船法に基づき指名される検査官が都合よく手配できない場合や当該検査官以外の者が特別な資格や経験を持つ場合に、調査を実施するために、商船法に基づき指名される検査官ではない者を1名又は複数名指名することもできる。この場合、当該指名された者には、商船法の第259条及び第267条(8)項の規定により検査官に授与される権限と同じ権限が授与されるものとする。
(3)検査官は、事故の原因又は結果に関係があると考える事故前の出来事や状況及び事故後の出来事や状況まで調査を拡大することができる。
(4)検査官の前に出頭を命じられるすべての者は、国務大臣により、出頭に要する合理的な費用の支払を受けることができる。
(5)出頭を求められる者の代理人としてのみ行動を行う事務弁護士その他の法律専門顧問ではない者で、
(a)検査官より検査官の面前での口頭審問への出席が許された者、又は
(b)出頭を求められた者によって検査官の面前での口頭審問へ出席する者として選任された者は、
 以下の場合は、当該検査官と主席検査官の合意で、いつでも出席させないことができる。
(i)検査官及び主席検査官の両者が、その者が出席することにより第5条の目的が阻害され、また、将来の安全が危うくされる可能性があり、よって調査に障害が生じると信じるに足る理由が存在する場合、及び、
(ii)主席検査官が全ての状況に鑑みその者を除外することが適切であると判断する場合
(6)出席者として選任された者が第(5)項により除外された場合は、出頭を命じられた者は別の者を除外された者の代わりに口頭審問へ出席する者として選任することができ、その場合は、第(5)項はその代わりの者に適用される。
(7)検査官は、調査(関係船舶上か否かを問わない)の目的のために検査官より適切に提出を求められた第9条に記載するいかなる書類、記録、又は情報も、調査が完了するまで保管することができる。
(8)調査に関しては、
(a)予備調査が行われた場合は、主席検査官は第5条に規定する目的に鑑み、報告書の公表が求められる更なる調査を実施することがいかなる状況下においても適当であるか否かの決定を下さなければならず、
(b)主席検査官はその後いつでも調査の中断を決定することができ、その場合はその理由を公表しなければならない。
 
他国との協力
11.-(1)本規則に基づき実施される調査が理事会指令1999/35/ECの適用のあるRoRoフェリー又は高速客船にかかわるものである場合は、主席検査官はEEA国である主要利害当事国がIMOコードに基づき調査に参加又は協力することができるようにしなければならない。
(2)第(1)項において、
 「EEA国」とは、EC参加国、ノルウェー、アイスランド、又はリヒテンシュタインをいう。
 「IMOコード」とは、国際海事機関(International Maritime Organization)が1997年11月27日付け総会決議A849(20)として採択した海難及び海上インシデントの調査のためのコード(Code for the Investigation of Marine Casualties and Incidents)をいう。
 「RoRoフェリー」及び「高速客船」とは、理事会指令1999/35/ECで定義される意味をもつ。
 「主要利害当事国」とはIMOコードで定義される意味をもつ。
 
記録の開示
12.-(1)以下の各項を条件として、検査官に証拠を提供した者の氏名、住所、その他の詳細は一切開示しないものとする。
(2)裁判所命令のない限り、調査の目的以外で以下の書類又は記録の入手を可能としてはならない。
(a)第(3)項を条件として、調査中に検査官が取得した又はこれに与えた宣言や供述、及び面談における記述や記録、
(b)事故にかかわる人物の医療記録や秘密情報、
(c)第6条(4)項又は(5)項に基づき作成された報告、及び、
(d)第13条(3)項(a)号、(4)項、又は(8)項に記載するものを除く、最終報告書以外の報告書のコピー
(3)検査官に調査中に宣言又は供述を行った者は、その者が適当と思われるその他の者にその宣言又は供述のコピーを与えることができる。
(4)主席検査官が委託する独立技術分析及び当該分析において表明される意見は、主席検査官が適当と考える場合はこれを公表することができる。
(5)第(6)項を条件として、主席検査官の意見を参考にしたうえで、裁判所が、次の事項を阻害すること、又は阻害する可能性よりも開示による司法の利益がより重要であるとの判断を下さない限り、第(2)項の命令を発することはできない。
(a)書類又は記録が関係する当該事故の調査、
(b)連合王国内で将来行われる事故調査、又は、
(c)連合王国と他国又は国際組織との関係
(6)本条の規定は、開示をすることが公共の利益に反するという理由で書類又は記録、あるいはその一部の留保を許可又は要請するいかなる法の支配をも侵害するものではない。
(7)音声記録(第(2)項(a)号に記載する記録を除く)、ビデオ記録、その他の電子的又は磁気的記録を含む事故にかかわる航海データレコーダーその他の記録装置より取得した情報のコピー、当該情報又は記録より作成した筆記録は、主席検査官の裁量で警察その他当局に提供することができる。


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