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III 各国の海難調査関係法令
制定法文書2005年 第881号
商船
2005年商船(事故報告及び調査)規則
 
2005年3月24日 国会提出
2005年4月18日 施行
 
1. 引用、開始、廃止
2. 解釈
3. 「事故」の意味
4. 適用
5. 調査の目的
6. 事故及び重大な傷害の報告義務
7. 調査命令
8. 二次調査又は再調査
9. 証拠保全
10. 調査の実施
11. 他国との協力
12. 記録の開示
13. 調査報告書
14. 調査報告書以外の公表
15. 勧告
16. 期間の延長
17. 書類の送達
18. 罰則
 
 国務大臣(Secretary of State)は、1995年商船法〔1〕第267に基づき付与された権限を行使し、以下の規則を制定する。
 
引用、開始、廃止
 
1-(1)本規則は「2005年商船(事故報告及び調査)規則」と引用できるものとし、2005年4月18日に発効する。ただし、第2条(1)項における「プレジャーベッセル(pleasure vessel)」の定義中の「シビル・パートナー(civil partner)」についての規定は、2004年シビル・パートナーシップ法(Civil Partnership Act 2004)〔2〕第1条が発効するまでの期間については適用されない。
(2)1999年商船(事故報告及び調査)規則(Merchant Shipping(Accident Reporting and Investigation)Regulations 1999)〔3〕はここに廃止するものとし、当該規則に基づき開始された調査のうち完了していないものについては、これを本規則に基づき開始されたものとして調査を継続する。
 
解釈
 
2-(1)本規則中、
 「アクセス(access)」とは、いかなる手段を採用するかにかかわらず、船舶への乗り降り過程をいう。
 「事故(accident)」とは第3条に規定する意味を持つ。
 「商船法(the Act)」とは1995年商船法をいう。
 「主席検査官(Chief Inspector)」とは、商船法第267条(1)項に基づいて大臣より指名された海難事故主席検査官(Chief Inspector of Marine Accidents)及び副主席検査官(Deputy Chief Inspector)をいう。
 「理事会指令(Council Directive)1999/35/EC」とは、海上の安全と船舶による汚染防止についての指令を変更する2002年11月5日付けの欧州議会の2/84/EC指令により改正された、定期ROROフェリー及び高速客船サービスの安全運航のための強制検査制度(mandatry survey system)に関する1999年4月29日の理事会指令1999/35/EC〔4〕をいう。
 「裁判所(Court)」とは、英国、ウェールズ、北アイルランドでの司法手続又は開示の申立てにおいては高等法院(High Court)をいい、スコットランドでの司法手続又は開示の申立てにおいては民事上級裁判所(Court of Session)をいう。
 「危険インシデント(hazardous incident)」とは、船舶の運航にあたり事故が発生しそうであったと思われる状況を伴う事故以外の出来事をいう。
 「IMO」とは国際海事機関(International Maritime Organization)をいう。
 「無能力(incapacity)」とは、通常行うことができる行動を完全に行う能力を欠くことをいう。
 「検査官(inspector)」とは、商船法第267条(1)項に基づき大臣より指名された海難事故の検査官をいい、特定の事故調査の観点からは、第10条(2)項に基づき当該事故を調査するために指名された者すべてをいう。
 「主要な傷害(major injury)」とは、
(a)手足の指以外の骨折、
(b)手足又は手足の一部の喪失、
(c)肩、腰、膝、脊柱の脱臼、
(d)一時的又は永久的視力の喪失、
(e)目への穿通損傷、
(f)その他、
(i)低体温症又は意識不明をもたらす傷害、
(ii)蘇生措置を必要とする傷害、又は、
(iii)病院その他の医療施設で24時間以上の入院を必要とする傷害をいう。
 「MCA」とは、運輸省(Department for Transport)の執行機関である海事沿岸警備庁(Maritime and Coastguard Agency)をいう。
 「プレジャーベッセル(pleasure vessel)」とは、
(a)以下のいずれかの船で、
(i)1人又は複数の個人が完全所有し、所有者、その近親者、友人がスポーツ又は娯楽のためにのみ使用する船、又は、
(ii)法人が所有し、その法人の従業員、役員、又はその近親者又は友人がスポーツ又は娯楽のためにのみ使用する船。
 かつ、航海又は遊覧中に生じる船を運航するための直接費用の支払い以外に、船舶の運航又は乗客を乗船させるために、あるいはそれに関し、当該船舶の所有者が何ら支払いを受けない船で、航海中又は遊覧中のもの、又は、
(b)スポーツ又は娯楽の目的で設立された会員制クラブにより、又はこれのために完全所有される船で、当該クラブの会員、その近親者がスポーツ又は娯楽のためのみに使用し、その使用に対する料金が当該クラブの資金に当てられるもの、あるいは当該クラブの通常の使用のために使用されるもので、かつ、上記記載の支払い以外、所有者以外の当該船の使用者により、又は使用者に代わりいかなる支払もなされないものをいう。この定義中の「近親者」とは、個人については、その個人の夫、妻、又はシビル・パートナー、及び、その個人又はその個人の夫、妻、又はシビル・パートナーの兄弟姉妹、直系尊属、直系卑属をいう。
 「予備調査(preliminary examination)」とは、更なる調査を行うことに正当性があるか否かを決定することを目的として、事故の原因や状況を立証するために行う調査の第一段階をいう。
 「生存する上級船舶職員(senior surviving officer)」とは甲板部の生存する上級船舶職員をいい、甲板部に生存する船舶職員が存在しない場合は、生存する機関部の上級船舶職員をいう。
 「重大な傷害(serious injury)」とは、主要な傷害を除く、船舶に雇用される者又は乗船する者が船上で、又は乗船下船中に受けた傷害で、その傷害により事故当日を除き3日間を超えて継続して無能力状態となるもの、又は、その傷害の結果、その者が陸上に移され当該船舶がその者なしで航海することとなるものをいう。ただし、無能力が事故当日を除き3日間以内であることが明確な場合、又は3日以内であると示唆された場合を除く。
 「作業用ボート(ship's boat)」とは、救命いかだ、塗装用パント舟(painting punt)、その他船舶が通常装備するボートをいう。
 「連合王国の船舶(United Kingdom ship)」とは、連合王国で登録された船舶、又は、いかなる国の法律に基づく登録もされていない船舶で商船法に基づき連合王国で登録を行うことができる船舶をいう。
 「連合王国の水域(United Kingdom waters)」とは、連合王国の領海の域内の海その他の水域をいう。
 「航海データレコーダー(voyage data recorder)」とは、主要航海情報又は管理情報を記録するため船舶に装備された電子的又は機械的装置をいう。
(2)船舶が所有者以外の者によって管理される場合(所有者、その他の者に代わって管理するか、自己のために管理するかを問わない)は、本規則中で所有者という場合はこれらの者を含めるものとする。
 
「事故」の定義
3-(1)本規則及び商船法第267条の目的に関し、「事故」とは船上で生じる、又は、船舶にかかわる事象の発生をいい、これにより、
(a)船上の者が死亡し又は主要な傷害を負い、又は船舶又は作業用ボートのいずれかから船外へ行方不明又は転落し、又は、
 
(b)船舶が、
(i)人命の喪失、主要な傷害、物的損害を生じさせた場合、
(ii)行方不明となった場合又は行方不明になったと思われる場合、
(iii)遺棄された場合、
(iv)火災、爆発、天候その他の原因で物的損害を受けた場合、
(v)座礁した場合、
(vi)衝突した場合、
(vii)航行不能となった場合、
(viii)環境に重大な悪影響を与えた場合。又は、
 
(c)重大な傷害又は人の健康を損なう可能性のある、以下のいずれかの事象が発生するものをいう。
(i)圧力容器、パイプライン、バルブのいずれかの損壊又は爆発、
(ii)昇降機器、乗船下船用機器、ハッチ・カバー、足場又はボースン・チェア、その他関連耐荷重性パーツの崩壊又は破裂、
(iii)船荷の崩壊、傾斜を起こす程度の船荷又はバラストの予期しない動き、船荷の船外への落下、
(iv)船舶を危険な角度に傾斜させるような漁具のもつれ、
(v)人の完全保護衣を着用せずに密封されていないアスベスト繊維への接触、及び、
(vi)危険物・薬剤の漏出
 
(2)本規則において、
 「航行不能(disabled)」とは、12時間を超えて自由に操作することができないこと、又は、それより短期間であっても、その結果当該船が入港するのに支援を必要とする状態であることをいう。
 「座礁(grounds)」とは、わずかに接触したがいかなる損傷も生じなかった場合を除き、地面と故意ではなく接触することをいう。
 
適用
4-(1)本規則は、以下のものに関連する又はその船上で生じる事故に適用される。
(a)連合王国の船舶。ただし、第6条は以下のものに関しては適用されない。
(i)プレジャーベッセル、
(ii)裸用船契約で賃借りされた娯楽用クラフト(craft)、又は、
(iii)港湾又は内陸水路で商業用に使用する乗客を乗せるもの以外のクラフト又はボートで全長が8メートル未満のもの
 ただし、第(ii)号又は第(iii)号に記載するクラフト又はボートについては以下のいずれかを生じる事故についてはこの限りではない。
(aa)爆発
(bb)火災
(cc)死亡
(dd)主要な傷害
(ee)動力船又は動力ボートの転覆、又は、
(ff)環境に重大な悪影響を与える汚染
(b)連合王国の領域又は領海内のその他の船舶。ただし、当該船舶については、第6条及び第9条(1)項から(3)項までは以下の場合にのみ適用される。
(i)当該船舶が法令に基づき指名された、又は指名されることが必要とされている港長又はクイーンズ港長の管轄内にある場合、
(ii)当該船舶が連合王国又は第(i)号に記載する区域内の港へ又は港より乗客を移動させるために使用される場合、又は、
(iii)検査官又は主席検査官の代理を務める者が第9条(1)項又は(2)項に記載する証拠の保全を求める場合
(2)本規則は、以下の場合を除き、これが事故に適用される場合と同様に、重大な傷害及び危険インシデントに適用される。
(a)第6条((5)項を除く)及び第9条は重大な傷害には適用されない。
(b)第6条、第9条は危険インシデントには適用されない。
(3)また、大臣が必要と認める場合は、第7条に基づき、連合王国の船舶でなく事故当時連合王国又は連合王国の領海内になかった船舶に関連するか又は当該船舶上で発生した事故の調査も行うことができる。
(4)本規則の目的においては、「裸船用契約で賃借り」とはプロの船長(master)、小型船船長(skipper)、船員(crew)を伴わずに賃借りすることをいう。


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