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B 安全調査(コーストガード)
 
1 調査機関
(1)Name: United States Coast Guard
(2)Place: Washington DC
(3)Establishment(Year): 1915(米国軍隊の一部を構成する。かつて運輸省に属していたが、現在は国家安全保障省Department of Homeland Securityに属する。)
(4)Legal basis
(a)組織に関する規定:Title 14 of the United States Code, Coast Guard Section 1, 2, Chapter 1
(b)調査に関する規定: Title 49 of the United States Code, Chapter 1, Part 4
(5)Ministry: 国家治安省
(6)Permanence: 常設機関
(7)Modality: 海運のみ
(8)組織機構、定員:
 
2 調査の目的
(1)海上における生命及び財産の安全を向上させるための適切な施策を執ることであり、民事及び刑事上の責任を確定することではない。(subpart4.07)
(2)調査においては、次のことをできる限り明らかにする。
・事故の原因
・物質的な(物理的または設計上の)瑕疵が事故の原因の中にあるか事故に貢献した証拠があるか。(同種事故の再発防止のために勧告するため)
・免許を有する船員の故意または過失が事故に貢献したという証拠があるか。(船員に対する適切な処分を行うため)
 
3 調査の種類
(1) Preliminary Investigation予備調査
(2)非公式調査
(3)investigation officer(1名の調査官)による調査
(4)Marine Board of Investigation(海難調査委員会)による調査
(3名の委員による)
 
4 調査手順(IMOに準じたマニュアルによる)
(1)認知
 一定の要件に該当するものが、コーストガードに報告される。報告を怠ることについては、罰則がある。
(2)行うべき調査のレベルを決定するため、Preliminary Investigation(予備調査)が行われる。
(3)要件に該当するものについては、NTSBに対し通報がなされる。
(4)調査方法についての決定
・NTSBとの共同調査
・NTSBの依頼による調査
・単独調査
・調査官による調査
・調査委員会による調査
(5)調査の方法
(a)時系列を作成する。
・事故に関する事実についての情報を収集する。
・情報を、actions「行動」、events「出来事」、conditions「状況」に分類する。
(b)原因/ヒューマンエラー分析を行う。
・出来事のリストの中から、最初のものと、それに続くものを同定する。
・行動のリストの中から、安全でない行動や決定を特定する。
・特定された安全でない行動や決定に対してヒューマンエラー分析を行う。
・安全でない行動や決定の背後に隠れている安全でない状況を特定する。
(c)結論を導く。
・原因分析とヒューマンエラー分析の結果を記録する。
(d)安全勧告/警告を発する。
・勧告すべきアクションを特定し、安全でない行動、決定、状況を是正する。
(事故調査の過程で明らかになった、安全でない状況については、当該事故の原因になったり、発生に寄与したものでなくても、勧告の対象になる。)
(安全でない状況が、現行の規則の単なる不遵守によるものである場合には、勧告の対象にならない。)
 
5 調査官によるInvestigation(調査)
(1)強制調査権
 宣誓をさせ、証人を召喚し、調査の主題になることがらについて知識を有している者に対して質問をし、関連図書、書類、記録等の提出を求めることができる。(District Courtにおけるのと同様に強制できる。)(4.07-5)
 
(2)調査の手続き
(a)調査は公開
(b)調査官は、法定の権限により手続きを行うことを宣言して開廷する。
(c)関係者は、弁護士を自らの権利の代理人として立て、証人を尋問し又は反対尋問でき、自らの証人を呼ぶことができる。
(d)調査の終了に当たり、調査官は、調査によって確定された事実、自らの意見及び勧告を記載した報告書を作成し、海事調査担当官を経て長官宛に提出する。
 
6 MBI(海難調査委員会)による調査
(1)強制調査権
 調査官調査と同様。宣誓の手続きは、委員長が行使する。
(2)調査の手続き
(a)長官が、公共の利益のために必要であると判断する場合に委員会の委員を設置する。(3名の委員)
(b)委員会の証拠調べのsession(公聴会)は、原則公開で行われる。
(c)調査の終了に当たり、委員会の報告書が作成され、長官の承認が求められる。
(d)長官は勧告の実効を期する。
(3)MBIによる調査は大規模事故などの場合(エクソンバルディーズ級やフェリーで100名死亡など)、公聴会の開催によりそのプロセスを公開することに加え、徹底した調査を確保する。
 
C Incident調査
 
・調査していない。報告義務もなく、スタッフもいない。
・数年前に情報を集め、調査するプログラムを開始しようとしたが、議会で予算が認められなかった。産業界が行うべきであるというのが、その見解であり、業界がその役割を期待されているが、行われていない。
 
D 懲戒調査
 
1 審問機関
(1)USCG, Administrative Law Judge(ALJ; 行政法判事)
(2)Legal basis: 46CFRch1, 5-19, 33CFRch20
(3)Permanence: permanent
(4)組織機構、職員
(a)Judicial Administration, USCG.
(b)ALJは、現在USCGに7名。(15名いたときもある。)
配置箇所:New York、Norfolk VA、New Orleans、Houston TX、Seattle WA、Alameda、(Baltimore; 文書センターのみ設置)
(c)ALJの資格要件:弁護士であること。訴訟や行政法の分野で最低7年間の経験を有すること。OPMがこのような基本的な要件を満たす者をテストし、評価を下した上で、候補者として登録する。(place candidates on the register)
(d)ALJは、USCGに採用されると、USCGの職員となる。
 USCGは、採用に当たり、海上経験を必要条件とはしていない。
(ALJは、海法についても早く学習するし、古典的な過失によるケースは、全体の20%以下に過ぎず、大半のその他のケースは海上法規のらち外の違反(ドラッグ、酩酊、暴行など)。)
 
2 調査手順
(1)懲戒調査の開始
(a)懲戒調査開始の基準
 海難の原因が以下に起因すると思われる合理的な根拠のある場合
・船舶職員として不適格(incompetency)、違法行為(misconduct)、過失(negligence)
・海事法規不遵守
・薬物の使用
 
(b)調査官による調査
 長官、海事検査官等に指名された調査官が調査を行い、調査の過程で、適切な場合に次のことを行う。
・訴えを提起すること
・免状の任意の提出、寄託に応ずること
・書面による警告を発すること
 
(2)公開審問(hearing)
(a)審問の開始
・調査官による訴えの提起により、審問が開始される。
・審問は、ALJが、主宰して行い、行政手続法による正式の裁決となる。
(b)審問手順
・調査官と被告がそれぞれ命令を提案し、論拠を提起する。
(c)証拠
・原因調査と審問とは、別個の手続きである。調査で用いられた証拠については、知ることができる。ALJは、原因調査で認定された事実や法の適用の結論については、それに拘束されない。被告により、原因調査の中で行われた自白については、行政審判の中では使用できない。
(3)懲戒処分
1. 懲戒処分はALJによって決定される。
2. 懲戒処分の種類
(ア)海技免状の取り消し
(イ)海技免状の即時一定期間の停止
(ウ)海技免状の執行猶予付き一定期間の停止
(エ)海技免状の即時一定期間の停止のち海技免状の執行猶予付き一定期間の停止
(オ)訓告
・量刑の目安については、Table5.569に示されている。
3. 懲戒調査の実績
4. Appeal
 裁決に不服がある場合Commandant更にNTSBにAppealすることができる。


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