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1 アメリカの海難調査及び海員懲戒について
6 Dec. 2005
A 安全調査(国家運輸安全委員会)
 
1 調査機関
(1)Name: NTSB (National Transportation Safety Board)
(2)Place: Washington DC
(3)Establishment (Year) : 1967(業務の独立性は有していたが、予算・管理面では、連邦運輸省に依存していた。)1975(組織的にも独立。議会に対してのみ責任を持つ)
(4)Legal basis
(a)組織に関する規定:Title 49 of the United Stetes Code, Chapter 11 (Independent Safety Board Act)
(b)海難調査に関する規定:Chapter VIII, Title 49 of the Code of Federal Regulations
(5)Ministry: 独立
(6)Permanence
常設機関
(7)Modality
Multi-Modal(海運、航空、鉄道、高速道路、パイプライン)
(1)Multi-Modal approachの利点
・独立機関で、議会に対してのみ責任を持つため、連邦・州・地方政府の輪送モードの規制担当部局からの影響を受けない。
・調査員会委員は、4モードの全ての報告書案に目を通し承認する。
・委員にあげる前に、他のモードの担当幹部も報告書案に目を通すため、他のモードの知見(教訓)についても意見交換ができる。
・海上安全部では有していないような専門調査能力(燃焼化学、材料工学など)についての支援を技術研究部局から仰ぐことができる。
 
(2)Multi-Modal approachの欠点
特にない。
 
(8)組織機構、職員
(a)Function and the number of each component:
Board Members(政治任用、少なくとも3名は、専門技術的知識、職業経験、知識に基づく。)
(1)Chairman(1名)(メンバーとしての任命に加え、大統領の指名、議会の承認)
(2)Vice-Chairman(1名)(メンバーとしての任命に加え、大統領の指名)
(3)Member(3名)(大統領の指名、議会の助言と同意)
Office of Maritime Safety(17名)
Investigation DivisionとReport Development Divisionの2課あり。
(4)Inspector(9名)plus part time inspector from office management(2-3名)
(5)Other marine staff (8名)
(b)Permanence of the staff: 常勤
(c)Expertise and technical background of the staff members
 スタッフは下記のいずれかの専門性を有している
(1)航海(Master Mariners)
(2)機関(Licensed Marine Engineers)
(3)造船(Naval Architect)
(4)ヒューマンパフォーマンス
(5)生存要因(Survival Factors)
(6)Writer-Editors
 
(d)外部委託者は特になし
(e)事故調査チームの構成
 24時間、365日全モードの事故に対応する。重大事件の発生に際し、海難のGo teamは、ワシントンから現場に派遣され、典型的には、Investigator In Charge 1人Group chairman 4人などから構成される。
 
2 Mission(使命)
 
 NTSBは、独立した連邦機関であり、その使命は、
(1)Determining the probable cause(s) of accidents
 事故の確かであろう原因を明らかにすること。
(2)Making recommendations to prevent their recurrence
 事故の再発防止のために、勧告すること。
 
3 調査手順
(1)認知
 事故の通報は、コーストガードより得る。オペレーションルームでニュースは24時間モニターしている。
(2)調査方法の決定
(a)NTSBの規則に則った単独の調査
(b)コーストガードの規則に則ったコーストガードと共同の調査
(c)コーストガードへの調査の委託
(3)Go Teamの派遣
(4)Party System
 産業界及び官庁から、技術的な有資格者の調査への参加を得る。
 Partyには、次の者が参加できる。(弁護士の参加不可)
(a)USCG
(b)船主、オペレーター
(c)旗国
(d)船級協会
(e)造船会社、機関製造会社
(f)パイロット協会
 
(5)現場における措置
(a)Command Centerの設営
(b)調査のpartyを交えたInitial Organizational Meetingの開催
(c)IICと調査委員会の専門家の指揮下に調査グループの組織証拠の収集、写真撮影、証人尋問、事故現場の記録
(d)委員会委員による、毎日行う現場でのプレス会見(事故関連の事実について)各Group Chairmanが、Field Notesを作成。メンバーの署名ののちに、調査参加者に配付される。
 
(6)調査官の権限
・強制調査権
(1)事故現場又は船骸の置かれている場所への立入りができる。
(2)宣誓をさせ、令状の発給を受けることができる。
(3)事故の犠牲者の検視を命令することができる。
 しかしながら、次のものは認められていない。
(1)訴迫からの免除
(2)Factual information(事実に関する情報)を発表しないでおくこと
(3)守秘を保証すること
 
(7)Human Factor
・Human Factor調査の専門家は、部内に擁している。
 
(8)並行調査
・USCGとの間には、どちらがlead federal investigative agencyとなるか等についての覚え書きが存在する。
・USCGは、全ての海難についての調査を行い、ほとんどの事故について、NTSBと並行して報告を作成する。
・USCGとの調査は共同で行い、分析は独自に行われる。事故のProbable Causeとしては、同様のことが指摘されることが多いが、調査事実についての焦点の当て方が違えば、結論も違ってくる。
 
(9)最終報告書及び認定事実の刑事、民事手続き、懲戒調査への利用
・NTSBの報告書及び(findings)認定事実は、直接には、刑事、民事、行政手続きに使用できない。
・調査の過程で収集した(factual information)事実に関する情報は、連邦及び州・地方の規制当局(law enforcement agencies)と共有できる。
 
(10)現場調査以後の作業
(a)チームの帰還後、30-60日の間に、公聴会の開催の是非についての勧告(recommendation)が、委員会に対してなされる。Partyの意見の聴取を経て、委員会委員が可否について投票する。
(b)Group Factual Reportが作成され、Partyに送付されて意見が求められる。
(c)Party Comments及びTechnical Reviewを経て改訂されたReportが、公開文書となる。
(d)ボードメンバーの主宰する公聴会が開かれ、調査事実についての審議がなされる。
(e)NTSB職員が最終報告書の案を作成する。
(f)ボードメンバーによるpublic meeting(公開)による、最終報告書の承認。
 最終報告書には、次の事項が記載。
(1)結論(conclusion)(facts+analysis)
(2)原因(probable cause)についての記述
(3)勧告(recommendations)
 
(11)安全勧告
(a)安全勧告発出の時期
 安全勧告は、NTSBの最も重要なproductであり、問題が特定され次第直ちに、調査の完了やprobable cause(原因)の決定を待たずに発出される。
(b)安全勧告の性格
 安全勧告は、安全のための行動を執ることの期待される個人又は団体を特定し、推奨するアクションと、それによって満足される安全上の要件について記述するもの。強制ではない。
(c)安全勧告は、その80%が実現されている。
 安全勧告の現実性に加え、世論からの圧力があるので、高い実現率になっている。運輸省とその関係機関については、90日間に対応しなければならないといけないというルールがある。
(d)Most Wanted List
 1990年より作成している、過去の勧告で未だに満足されたかたちで終結していないもののフォローアップリスト。法的な根拠はない。今では、State Most WantedとFederal Most Wantedに分けられる。
 
(12)最近の調査実績(報告書数)
Year Reports
2003 0
2004 4
2005 4


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