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5 国際協力
(1)法的根拠
(FIUUG Art. 14(1)、SUG Art. 13(4)、16、19(3))
(2)想定される場合
(a)他国籍船がドイツ領海内で事故を起こした場合
(1)BSUは直ちに当該旗国へ事故の内容について連絡し、事故調査への参加意思を確認する。
(2)仮に、BSUが調査の必要なしと判断した事故について当該旗国が調査を希望した場合は、BSUは必要な資料を旗国へ提供する。
(b)ドイツ籍船と他国籍船が公海上で事故を起こした場合
(1)BSUは当該旗国と連絡を取り、共同調査実施の可能性について協議する。
(c)ドイツ籍船が他国の領海内で事故を起こした場合
(1)BSUは沿岸国と連絡を取り、BSUが事故調査に参加できるかどうかについて協議する。
(3)地域協定
(a)国際協力に関する二国間、多国間協定は無い。
(4)国際協力の実施状況
(a)協力国
(1)6カ国とjoint investigation実施
(i)UK(1)、Hong Kong(1)・・・良好な協力
(ii)Scandinavian States(2)・・・国内法の影響により、効果的ではなかった。
(iii)Korea(1)・・・国内法の影響により、効果的ではなかった。
(2)最終報告書ヘコメントを寄せた事例
・UK
◆両国はUKがlead investigating Stateとなることで合意。
◆UKがdraft reportを作成し、ドイツへコメントを求めた。
◆2005年10月時点ではconsultation period期間中であり、最終報告書は作成されていない。
(3)問題点
(i)IMO Codeを実施していない国との協力において、それらの国内法に起因する問題が見られる。
e.g.
・刑事訴訟プロセスが終了するまでは安全調査が開始されない。(あるスカンジナビア国、近い将来に見直される予定)
・物的証拠、書類等が共有されない。(韓国)
(ii)日本との協力の可能性
◆仮に、日本籍船がドイツ領海内で海難を起こした場合、たとえ日本の海難調査の結果が懲戒処分につながるとしても、BSUは日本の調査官に協力する。
,◆しかし、BSUは日本とのjoint reportは作成しない、又は日本の作成した報告書にはサインしないであろう。また、BSU独自の報告書を作成する場合には、懲戒に関する部分は含まれない。
 
B IMO Codeの強制化に関して
 
1 IMO Code強制化に対する問題点
(1)安全調査と懲戒調査の分離: 問題なし
(2)全てのvery serious casualtyの調査: 問題なし
(3)国際協力: ドイツ側には問題なし
 
C Incident調査
 
1 調査機関
(1)BSUがincident調査権限を持つ。
 
2 調査手順
(a)認知
(1)以下の者は、IncidentをBSUに通報する義務がある。
(i)船長、乗組員、船舶運航者、船級協会、水先人、Waterway Police(Reg. Art. 7)
(2)通報義務不履行に対する罰則有り。
 
3 最近の調査実績
(1)incidentの通報件数
 年間約400件の事故通報のうち、約半数はincidentに分類される。
 
D 懲戒調査
 
Cf. MOTBH組織図
(1)MOTBHは国内の海事行政を監督する。
(2)WSDは各地域の海事行政を担当(WSD-NとWSD-NWは海岸部分を管轄するが、その他の5つのWSDは内陸水路のみを管轄。)
(3)Local Officeは水路の建設、維持管理を担当。
(4)5つのMBlはWSD-N(Kiel)とWSD-NW(Aurich)の特別機関。
 
1 調査機関
(1)Name: Waterways and Shipping Directorate Nordwest(WSD-NW)
(2)Place: Aurich
(3)Establishment(year)
(4)Legal basis: SUG(Seesicherheits Untersuchungs Gesetz, Maritime Safety Investigation Law)2002, Chapter4
(5)Ministry: Ministry of Transport, Building and Housing
(6)Permanence
(a)常設
(7)組織機構、職員
(a)Function and the number of each component
1名の職員が担当
 
2 審問機関
(1)Name: Maritime Boards of Inquiry(MBI, Seeamt)
(2)Place: Hamburg, Bremerhaven, Emden, Kiel, Rostock
(3)Establishment(year)
(4)Legal basis: SUG(Seesicherheits Untersuchungs Gesetz, Maritime Safety Investigation Law)2002, Chapter4
(5)Ministry: Ministry of Transport, Building and Housing
(6)Permanence
(a)常設
(7)組織機構、職員
(a)Function and the number of each component
(1)MBIはKielに常勤する3人の職員及び、WSD-NWの調査官1名からなる。
(i)Chairperson(1名)
(ii)Assessor(1名、Chairperson補助、証拠収集)
(iii)Secretary(1名)
(iv)Pre-inquiryを担当するWSD-NWの調査官(1名)
Cf. 2002年のBSU設立以前、MBIは15人のスタッフを有し、2つの機能を持っていた。
◆事故原因と状況の究明
◆個人の責任の観点からの事故調査
(b)Permanence of the staff:常勤
(c)Expertise and qualification of the staff members
(i)Chairperson(裁判官の資格)
(ii)Assessor(船長の資格)
(d)外部委託者
(1)280名のhonorary assessorが公的機関、海事関連機関等から推薦され、そのリストがWSD-NとWSD-NWにより作成される。
(i)船長の海技免状保有者またはpleasure craftの操縦許可証保有者
(ii)各地域の専門知識を有する者
(Honorary assessorは交通費のみ支給される。)
(e)審問チームの構成
(1)各審問ごとに、4名からなる“board”が構成される。(SUG Art. 25、26)
(i)Chairperson(1名)(MBIのChairperson)
(il)Permanent assessor(1名)(MBIのassessor)
(iii)Honorary assessor(2名)(280名のhonorary assessorsから)
(2)Local honorary assessorは事故の発生地域及び状況によりchairpersonによって選任される。
 
3 調査手順
(1)認知
(a)MBIは、通常Water Policeから事故の通報を受ける。
(2)Pre-inquiry
(a)WSD-NWの調査官により、事故の状況に関するPre-inquiryが行われる。
(b)事故に対するpublic interestおよび更なる調査の必要性を認めた場合、調査官はMBIにfull investigationの実施を申請する。
(3)full investigationの開始
(a)海難事故が以下の条件を満たす場合、MBIのchairpersonがfull investigationの開始を決定する。
(i)ドイツ籍船、又はドイツ領海内におけるすべての船舶で発生
(ii)いかなる国から発行された海技免状保有者及びpleasure craftの操縦許可証保有者が関与
(iii)faulty behaviorの疑い
(4)調査
(a)調査課程
(1)調査は3名のMBI職員によって行われる。
(2)honorary assessorはMBIによって作成された調査ファイルを事前に精査し、実際には公開審問のみに参加する。
(b)調査官の権限
(1)物的証拠、書類の押収(BSU Art. 28)
(2)ChairpersonはWater Policeに対し、必要な証拠の収集、提出を求めることが出来る。
(Cf. 証拠収集、目撃者の尋問に関してはAdministrative Procedure Lawが適用される。)
(c)海難調査への協力拒否には罰則がある。(BSU Art. 34)
(5)公開審問
(a)審問手順
(1)審問は、oral proceedingまたはwritten proceedingの形で行われる。(通常はoral)
(2)直接関係者(弁護士同行)、目撃者、専門家に対するhearingが行われる。
(6)証拠
(1)公開審問において、MBIはBSUの最終報告書をexpert opinionとして使用することがあるが、証拠としては使用しない。
(2)同様に、BSUの調査官がexpert opinionを述べる為に、審問への出席を求められることもありうる。(前例は無し)
(7)懲戒処分
(a)懲戒処分の決定
(1)oral proceedingの場合
 決定は多数決によってなされる。同数の場合はchairpersonがcasting voteを握る。
(2)written proceedingの場合
 決定はchairpersonによってなされる。
(b)懲戒処分の理由
(1)身体的不適格(医者の判断)
(2)精神的不適格(MBIの判断)
(3)責任感の欠如
(i)飲酒
(ii)薬物
(iii)不服従
(iv)航海安全、海洋環境保護に関して定められた職務不履行
(c)裁決の種類(SUG 31)
(1)ドイツ領海内における操縦停止(最大30ヶ月)、及び追加措置
(i)海技免状保有者はドイツ領海内において、一定期間それを行使することができない。(ドイツ以外の海技免状保有者を含む)
(ii)追加措置の例
・技能向上のための特別訓練
・身体的適格を証明する為の検査
・アルコール中毒ではないことを証明する検査
(2)ドイツ領海内における無期限の操縦禁止(前例無し)
(3)ドイツが発行した海技免状の停止、又は取消し
(4)(審問の中止)
(9)懲戒処分の実績(2004年)
(1)WSD-NWにより244件の事故が認知
(2)WSD-NWの調査官からMBIに対して30件のfull investigationの申請
(3)MBIにより14件の裁決(商船に対して6件、pleasure craftに対して8件)
(4)7件の懲戒処分(操縦停止)(商船に対して2件、pleasure craftに対して5件)
(a)事故の認知から、裁決までの期間:10〜13ヶ月
(pre-inquiryに4〜5ヵ月、full investigationに6〜8ヵ月)
(10)Re-hearing and Appeal
(a)Appeal
(1)MBIの裁決に不服がある場合Administrative CourtにAppealすることができる。(前例無し)
(i)BSUの設立に伴い、Federal Inquiry Board of Maritime Casualtyは廃止された。
(2)裁決に不服の者は、通常administrative courtへ上訴する前に保険会社へ裁決逆転の可能性について相談し、可能性の高い場合にのみ上訴を行う。


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