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I-2 第51回航行安全小委員会(NAV51)の審議概要
1 日程
(1)対処方針会議 6月5日(日)(在英国日本国大使館会議室)
(2)NAV51 6月6日(月)0930〜10日(金)1730
 
2 開催場所
IMO本部
 
3 日本側参加者:9名
◎:本委員会所属者の出席者 ○:英国からの出席者
○在英国日本国大使館一等書記官(運輸担当)  植村 忠之
◎東京海洋大学教授  今津 隼馬
◎海上保安大学校教授  松本 宏之
(独)海上技術安全研究所高度運航システム研究グループ長
 福戸 淳司
片山海事技研事務所海事補佐人  片山 瑞穂
(財)日本舶用品検定協会技術部長  木村 佳男
◎日本船主協会海務部課長  宮坂 真人
○(社)日本造船研究協会技術顧問  篠村 義夫
○(社)日本海難防止協会ロンドン連絡事務所長  相馬 淳
 
4 議題
(1)議題の採択
(2)他のIMO機関の決定
(3)航路、通報及び関連事項
(4)INS及びIBSの性能基準の改正
(5)2000年HSCコードの見直しとDSCコード及び1994年HSCコードの改正
(6)ECDISの使用評価及びENCの開発
(7)OSVガイドラインの見直し
(8)SPSコードの見直し
(9)ITU関連事項(ITU-R Study Group8関連事項を含む)
(10)旅客船の安全:旅客船のための効果的な航海計画
(11)海上保安向上のための措置
(12)全世界的無線航法システム海上保安向上のための措置(WWRNS)
(13)海難事故解析
(14)IACS統一解釈の検討
(15)VOR及びS-VDRの性能基準の改正
(16)作業計画及びNAV52の仮議題
(17)2006年の議長及び副議長の選出
(18)その他の議題
(19)海上安全委員会への報告
 
5 審議内容
(1)航路、通報及び関連事項(議題3関連)
1. プレナリーでの審議
(1)航路指定ガイダンスの改正関係
 プレナリーにおいて、各国からの提案文書の説明が行われ、各提案はWGにて検討されることとなった(英国のDover Strait及び接続水域における深水深航路に係る提案については、取り下げられた。)。
 各国からの提案説明の際、オランダから、一般論として、NAV51への航路指定方式に係る提案文書について、「MSC/Circ.1060の航路指定方式のガイドライン」及び「航路指定の一般通則及び船舶通報制度に係るガイドライン及び基準(The General Provisions on Ship's Routeing and Guidelines and Criteria for Ship Reporting Systems)」(以下「航路指定ガイダンス」という。)の基準を満たしていないものがある等の指摘があった。
 オランダからの指摘に伴い、航路指定方式に係る提案文書の手続について議論が行われ、今後は議長が、提案文書について航路指定ガイダンスとの整合性に係る事前評価を行うこととなった。
 また、NAVにおいては、技術的面、運用面に限って議論を行うこととし、政策的問題は扱わないこととされた。
 
2. WGでの審議
(1)新たな分離通航方式
 コロンビアの提案の分離通航方式の新規設定については、提案文書が航路指定ガイダンスの基準を満たしていないとして、追加のペーパーが提出され、船舶の混雑状態等について、説明が行われた。
 審議の中で、「San Andres island」に係る分離通航帯並びに「San Andre Island and Providential」避航水域については、ニカラグアとの協議が必要と判断され、今回のWGでは審議されないこととなった。なお、コロンビアは、NAV52に、これらに係る文書を再提案する予定である。
 その他、所要の修正等が行われ、WGにて承認された。
(2)分離通航方式の改正
(a)カナダ及び米国提案のStrait of Juan de Fuca及び接続水域に係る分離通航方式の改正については、特段の意見なく承認された。
(b)スペイン提案のCabo de Gata沖の分離通航方式の改正については、特段の意見なく承認された。
(c)フィンランド等提案のPorkkala灯台沖の分離通航帯の改正については、特段の意見なく承認された。
(d)英国提案のDover Strait及び接続水域内F3 station周辺の分離通航方式については、特段の意見なく承認された。
(e)デンマーク提案のGreat Belt Traffic水域の分離通航方式の修正については、特段の意見なく承認された。
 
(3)PSSA設定に伴う分離通航方式の設定
(a)スペイン提案のCanary IslandへのPSSA設定に伴う分離通航方式の設定については、避航水域について、対象船舶の明確化、避航水域が強制ではないことの確認等がなされ承認された。
(b)バルト海沿岸国(ロシアを除く。)提案のBaltic SeaへのPSSA設定に伴う分離通航方式の設定については、深水深航路及び避航水域が強制ではないことの確認等がなされ承認された。
(c)エクアドル提案のGalapagos ArchipelagoへのPSSA設定に伴う分離通航方式の設定については、特段の意見なく承認された。
 なお、エクアドルはNAV52にて、本海域に係る強制船舶通報制度をあらためて提案する予定である。
(4)航路指定ガイダンス関連
 航路指定方式及び同議題に係る提案文書のデイタムをWGS 84に標準化することに合意するとともに、将来的における航路指定ガイダンスの修正の検討を小委員会に勧告することとした。
 また、英国から、基準の不明確さから、COLREG第10規則(d)項に反する沿岸通航帯の使用、深喫水船以外の深水深航路の利用等の問題が発生していること、米国から、強制的な避航水域の設定については、厳格に航路指定ガイダンスの基準に沿う必要があるとの指摘があった。
 さらに、強制的な避航水域について、航路指定ガイダンスでは、何ら基準等を示してないことから、小委員会に、これちについての検討を促すこととした。
 
3. 最終プレナリーでの審議
 航路指定方式に係る各国からの提案は、WG報告のとおり承認された。
 また、航路指定ガイダンスに関する議論が再度行われ、WGにおける英国及び米国の見解について、多数の国が支持を表明した。
 議論の中で、環境面を考慮する必要があるので、航路指定ガイダンスは海上安全委員会及び海洋環境保護委員会の両方で検討されるべきこと、航路指定ガイダンスの全体が見直されるべきであること、下の航路指定ガイダンスに係る見直しに係る各国の提案は、強制の避航水域に限られず航路指定ガイダンス全体に係るべきものであること等が合意され、NAVとしては、航路指定ガイダンス修正の検討を促すための文書をNAV52、MSC81に提案することを各国に要請することとした。
 
(2)INS及びIBS性能基準の見直し(議題4関連)
1. プレナリーにおける審議
 まず、議長から、MSC78及びNAV50におけるINS(Integrated Navigation System)及びIBS(Integrated Bridge System)の検討に係る決定事項、指示事項の説明があった。
 続いて、コレスポンデスグループ(CG)代表であるドイツから、CGでの作業の手順として、
(1)INS/IBSの性能基準の見直しについては、INSを先に、次にIBSを行うこと
(2)INS情報を特化して扱うこと
(3)One equipment concept(OEC)の概念を取り入れること
(4)警報管理システム(AMS)、船橋警報システム(BNWAS)、船橋航海警報システム(BAMS)、について検討すること
(5)性能基準の骨子をA(航海情報)、B(運用要件)、C(技術要件)の三つのパートに分けること
等の基本方針が報告され、その他、詳細はWGにおいて検討することとされた。
 
2. WG2における審議
(1)INSの性能基準の見直しについて
 アドホックグループが設置され、新INS性能基準案の骨格構造が決定された。なお、今後のCGにおけるNAV52に向けたINS性能基準については、所要の項目の追加、IBSの一部として船橋警報管理システム(BAMS)の性能基準を作成する等の修正がなされた。
(2)AISクラスBについて
 スウェーデンより、現在IECで検討されているAISクラスBの通信方式(CSTDMA)が運用された場合、既存のAISクラスAの通信方式(SOTDMA)に与える影響について懸念が表明されたが、USCGが実施したシミュレーション等による検討結果から、特に影響のないことが確認されていることが説明された。
 また、非SOLAS船やレジャー艇に提供するクラスBやクラスCとして、低価格で、クラスAとも調和するものを至急開発できるように、各国にIALA、ITU、IECその他の関係機関の作業への積極的な参加を要請することとされた。
 
3. 最終プレナリーでの審議
 INS及びIBSの性能基準作成方針としてWG案が承認され、NAV52に向けCGで作業することとなった。
 
(3)ECDISの使用評価及びENCの開発(議題6関連)
1. プレナリーでの審議
 コレスポンデスグループの代表としてノルウェーから、ENCは今後5年間で十分整備されると予想されており、2010年にはSOLAS適用船全船に、2008年には高速船に、それぞれECDISの搭載を義務化すること、ECDISをラスター海図モードで利用時にバックアップとして所持が要求されている「適切な最新紙海図一式(Appropriate portfolio of up-to-date paper charts)」を定義すること等について提案されるとともに、IHOからは、ラスター海図の刊行状況及びその有効性並びにENCの刊行海域の増加が報告された。
 我が国は、ソフトウエアであるENCが十分に整備されていない状況で、ハードウエアであるECDISのみを強制化することは時期尚早であること、また、強制化を図るためには客観的な指標を用いた評価が必要であることを主張した。
 フィンランド、デンマーク、豪州はECDIS強制化支持を表明し、バハマ、パナマ、韓国、リベリア等が時期尚早との意見を表明した。
 また、オランダは、「適切な最新紙海図一式」に関し、「適切」と認定する主体(旗国、沿岸国)に係る問題点を指摘するとともに、紙海図所持の義務付けに反対した。
 これらの意見を踏まえ、議長が次のTORをWGに指示した。
(1)SOLAS条約第5章第19規則の改正による「適切な紙海図一式」の定義及びECDIS強制化の検討
(2)ECDIS導入を可能とするための適切な検討(FSA: Formal Safety Assessment)基準の検討
(3)高速船へのECDIS搭載義務化のための規則改正の検討
(4)「適切な最新紙海図一式」を決定するための情報源として、IHOによる海図カタログ整備へ協力することの検討
(5)「適切な最新紙海図一式」を明確にするためのサーキュラー案の検討
(6)NAV52へ向けたCGへの改正検討事項の検討
 この議長の指示に対し、パナマから「SOLAS条約第5章第19規則の改正によるECDIS強制化の検討」については、現在のENCの刊行状況からは具体的な期限を挙げて検討をすることは無意味であるとの主張がなされ、強制化についてはWGで検討しないこととされた。
 
2. WGでの審議
(1)SOLAS条約第5章第19規則の改正(ECDIS強制化)
 プレナリーからの指示に基づき、WGではECDISの強制化については検討しなかったものの、WGレポートには第19規則改正案に係るCG提案が括弧書きで残された。
(2)高速船への搭載義務化のための高速船コード改正
 2008年7月1日以降に建造される高速船(同日以前に建造された高速船は2010年7月1日まで)は、ECDISを搭載することとされた。
(3)FSAの実施
 ノルウェーが実施した巨大旅客船のECDIS搭載に関するFSA結果を拡大して、他の船舶についてもFSAを実施することが英国、ノルウェー、ロシア、スウェーデンにより表明されるとともに、評価項目が決定された。
(4)IHOによる海図のオンライン・カタログ
 「適切な最新紙海図一式」の決定を容易にするため、利用できる公式海図のオンライン・カタログをIHOが整備することに対して、各国が協力することが合意された。
(5)沿岸国の要求事項
 領海内を通航する船舶に対して、沿岸国による特定の紙海図所持の要求について検討したものの、沿岸国の主権について議論が紛糾し、次回NAV52までの検討事項とするようプレナリーに要請することとされた。
(6)CGの検討事項
 引き続き作業を進めるためにコレスポンデンスグループを設置して、次の項目を検討することが合意された。
(a)ECDIS性能基準改正案の策定
(b)改正ECDIS性能基準案の草案
(c)IMO規則としてのECDIS運用の検討
 
3. 最終プレナリーでの審議
 提出されたWGレポートには、2.(1)のとおり、ECDIS強制化の規則改正案が残されていたことから、パナマ等がWGへのTORに反するとして、当該記述の削除を申し立てた。
 これに対し、英国から「WGでは、強制化の検討は行なっておらず、CG提案による規則改正案が残されているのみであること、ECDIS導入に関する検討はMSCよりNAVに指示された事項であり、MSCへ報告される本レポートに、規則改正案が載せられていても矛盾はない。」旨の主張がなされ、議場はそれぞれの意見を支持する国で二分され、議論は紛糾した。
 最終的には、TORに含まれないとの議長判断により、WGレポートから第19規則の改正案を削除し、WGレポートが承認された。


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