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第2章 調査研究の内容
I IMO委員会
I-1 第80回海上安全委員会(MSC80)
1 日程
(1)対処方針会議 5月10日(火)(在英国日本国大使館会議室)
(2)MSC80 5月11日(水)0930〜20日(金)
 
2 開催場所
IMO本部
 
3 日本側参加者:36名
◎:本委員会所属者の出席者 ○:英国からの出席者
○在英国日本国大使館参事官(運輸担当) 山上 範芳
○在英国日本国大使館一等書記官(運輸担当) 植村 忠之
○在英国日本国大使館一等書記官(経済担当) 山口 修治
総務省総合通信基盤局電波部衛星移動通信課国際係長 棚田 剛
国土交通省海事局技術審議官 冨士原康一
国土交通省海事局安全基準課国際基準調整官 今出 秀則
◎国土交通省海事局安全基準課国際第一係長 鈴木 康子
国土交通省海事局船員政策課国際企画室長 吉田 晶子
国土交通省港湾局建設課国際調整官 石橋 洋信
国土交通省港湾局管理課港湾保安対策室 中嶋 善全
◎海上保安庁総務部情報通信企画課専門官 小池 貞利
◎海上保安庁警備救難部警備課 岩並 秀一
海上保安庁警備救難部管理課専門官 有川 孝
(独)海上技術安全研究所企画部研究統括主幹 吉田 公一
◎(独)航海訓練所教育部教授 岡邉 光邦
大阪大学教授 矢尾 哲也
電気事業連合会 岡村 敏
(独)海上技術安全研究所先進構造研究プロジェクト主任研究員
 平方 勝
(独)海上技術安全研究所先進構造研究プロジェクト主任研究員
 井上 剛
(財)日本海事協会開発部部長 小西 煕
(財)日本海事協会開発部主管 有馬 俊朗
◎(財)日本船舶技術研究協会主任研究員 中川 直人
(財)日本船舶技術研究協会主任研究員 岡部 亮介
(財)運輸政策研究機構国際問題研究所主任調査役 田淵 一浩
(財)日本海技協会調査部長 大久保 尚
(社)日本造船工業会 北村 欧
(社)日本造船工業会 山本 聡
◎(社)日本船主協会海務部課長 宮坂 真人
(社)日本船主協会 米澤 拳志
日本財団海洋グループ海洋安全担当リーダー 海野 光行
○(社)日本船主協会欧州地区事務所 中村 憲吾
○全日本海員組合欧州事務所長 飯嶋 雄二
○ジャパン・シップ・センター次長 土谷 俊文
○ジャパン・シップ・センター次長 田口 昭門
◎(社)日本海難防止協会企画国際部国際室長 惣田 泰氏
○(社)日本海難防止協会ロンドン連絡事務所長 相馬 淳
 
4 議題
(1)議題の採択
(2)他のIMO機関の決定
(3)強制要件の改正の検討及び採択
(4)旅客船の安全
(5)海事保安の強化に係る措置
(6)ゴールベースの新造船建造基準
(7)フォーマル・セーフティ・アセスメント
(8)IMO加盟国のボランタリーな監査スキーム
(9)復原性・満載喫水線・漁船安全
(10)危険物・固体貨物・コンテナ
(11)訓練及び当直
(12)防火(FP49の報告)
(13)無線通信・捜索・救難(COMSAR9の報告)
(14)船舶の設計・設備(DE48からの緊急事項)
(15)旗国の実施(FS113からの緊急事項)
(16)海上安全及び海事保安に関する技術援助プログラム
(17)船舶への海賊と武装強盗
(18)規則の実施及び関連する事項
(19)他の機関との関係
(20)委員会のガイドラインの適用
(21)作業計画
(22)2006年議長及び副議長の選出
(23)その他の議題
(24)第80回委員会報告書の検討
 
5 審議内容
(1)海事保安の強化に係る措置<LRIT審議部分>(議題5関連)
 海事保安の強化に係る措置(LRIT審議部分)についてのプレナリー及びワーキンググループにおける審議概要は次のとおり。
 
1. 今次会合においては、技術的問題の議論は通信捜索救助小委員会(COMSAR)に譲り、政策的問題に絞って議論することとされたが、主に、沿岸国によるLRIT情報の入手権限について、各国の主張の隔たりが大きく、SOLAS条約改正案の審議に至らなかった。
 
2. 沿岸国によるLRIT情報の入手権限については、情報をとりうる沿岸からの距離に関し、セキュリティ上の96時間事前通報との関連から2000海里を主張する米国と、国連海洋法条約(UNCLOS)との整合性との観点から200海里を主張する中国が強く対立した。
 
3. この距離の問題については、カナダ、オーストラリア及び日本が2000海里を支持したのに対し、オランダ、トルコ、インド、インドネシア等が200海里を支持し、ノルウェーが400海里を主張した。
 
4. これに関し、妥協案として、沿岸国が自国船のLRIT情報を取り得る沿岸からの距離を旗国が定めることができるとするとの案が中国、ノルウェー等から出されたが、米国、オーストラリア、カナダが反対したのに対し、ロシア、イラン、インド及び北朝鮮がこれを支持する意向を示した。
 
5. また、別の妥協案として、LRIT情報を、当面、旗国及び入港国のみが取り得るものとしてシステムを構築してはどうかとの案が米国より提案されたが、ノルウェー及びオランダが沿岸国も情報を取り得るものとしてシステムを構築すべきとの主張し、コンセンサスは得られなかった。
 
6. このため、次回MSC81(来年5月)での条約改正案の採択を目指し、政策的事項を検討するためにMSC中間ワーキンググループ会合を本年10月に、また、技術的事項を検討するために来年3月のCOMSAR10の直前に中間COMSAR会合を開催することが合意された。
 
7. なお、以上の他、LRITに関し、今次会合での合意事項は次のとおり。
(1)SOLAS条約付属書のどの章の改正によるかについては結論がでず、然るべき時期に決定すべきこととされた。なお、米国の第11-2章の改正案(セキュリティ目的)に対し、EU諸国等多数の国が第5章(安全・環境目的)の改正によるべきであると主張した。
(2)LRIT情報の集配のためのデータセンターを設置することとされた。
(3)システムの監督実施の可否を検討するようIMSOに要請することとされた。
(4)LRIT情報の捜索救難目的への使用は無料とすることとされた。
(5)LRIT情報の利用料はデータセンターに支払うこととされた。
 
(2)海事保安の強化に係る措置<LRIT審議部分を除く>(議題5関連)
 海事保安の強化に係る措置(LRIT審議部分を除く)についてのプレナリー及びワーキンググループにおける審議概要は次のとおり。
 
1. 乗船規制関連
 SOLASXI-2及びISPSコードに基づく船舶への乗船規制(身分証提示、手荷物検査、立入禁止区域等)と官憲、緊急業務従事者及び水先人の迅速な乗船及び業務執行の調整に関し、以下の事項等を内容とするガイダンスが策定され、回章されることとなった。
・旗国に承認された船舶保安規定を根拠として領海内での官憲の乗船を妨げてはならないこと
・官憲は乗船時に身分証を提示すべきこと
・緊急業務従事者は、可能な場合に乗船時に身分証を提示すべきこと
・乗船者の業務の支障にならない限り、提示した身分証の内容が船舶側で記録されうること
・官憲は、手荷物検査の対象とされないこと
・緊急業務従事者は、船長及びSSOの裁量により、手荷物検査の対象とされないこと
・官憲及び緊急業務従事者は、立入禁止区域への立入りを行いうること
 
2. 船舶保安警報関連
 船舶保安警報システム(SSAS)の運用に関し、以下の事項を内容とするガイダンスが策定され、回章されることとなった。
・SSAS通信事業者は、遅滞なくSSASを配信すべきこと
・SSASは、主管庁が指定した2カ所以上の受信者に送られてもよいこと
・主管庁は、SSASの受信者が最優先で当該情報を処理するよう確保すべきこと
・SSASのテストを行う場合は、事前に関係者に周知すべきこと
・SSASのテスト中に誤って信号を送ってしまった場合には、迅速に関係者に周知すべきこと
 
3. 船舶保安職員の資格・訓練要件関連
 船舶保安職員(SSO)及び会社保安職員(CSO)の資格・訓練要件等に関し、
(1)SSOの技能証明の要件に関するSTCW条約改正案及びSTCWコード改正案が承認された。
(2)SSOの訓練要件に関するSTCWコード改正案が承認された。
(3)CSOの訓練及び資格に関する指針(MSC回章)が策定された。
(4)港湾施設保安職員(PFSO)の訓練及び資格に関する指針を策定するようSTW小委員会に指示することとされた。
 
(3)通信・捜索救助小委員会(COMSAR)からの報告(議題13関連)
 通信・捜索救助小委員会からの報告に関して、第9回同小委員会(COMSAR9)からの報告を基にしたプレナリーにおける審議概要は次のとおり。
 
1. 大洋航海を行うアドベンチャー船の最小限の安全措置に関する指針について、フランスから、同船は国際海峡の航行安全のため分離通航方式等について留意すべきとの一文をイントロダクションに加えるとの提案がなされ、事務局がサーキュラー案に同提案に基づく所要の修正を加えることで承認され、回章されることとなった。
 
2. ロシアからの新たなNAVAREA区域の設置に係る提案(MSC80/13/2)については、ノルウェーからの他のArctic Sea沿岸国の調整が必要なこと等が指摘され、COMSAR10において更なる議論をすることとなった。
 
3. 議題の他に、シンガポールから、過日発生したタンカーの爆発事故において、適切な通信手段がなく、効果的な救助ができなかったことから、長距離の通信手段に係るフォーラム等の設置に係る提案があったが、COMSAR議長、パナマ等から本問題は過去からの問題であり、この場(MSC)での議論の再開は望まない旨の発言があり、FSI、COMSARに提案文書を提出し、議論することとなった。
 
(4)海賊及び武装強盗(議題17関連)
 海賊及び武装強盗についてのプレナリーにおける審議概要は次のとおり。
 
1. 英国から提案文書に基づく発表が行われた。
 
2. 我が国より、最近の日本関係船舶に発生した3件の海賊事件を受け、国内での特にマラッカ海峡でのセキュリティに関する関心が高まっている現状並びにこれまでの我が国主導で進めてきた多国間協定等の取組を紹介しつつ、今後、我が国として本問題に、鋭意取り組んでいく旨発言した。また、シンガポールから、本件に関しては、二国間及び多国間の協力が必要であること、9月に開催されるジャカルタでの会議及びISCに言及する発言、加えてICS、ICFTU及びリベリア等からも海賊対策強化の必要性を訴える趣旨の発言があり、基本的に英国提案への支持が表明された。
 
3. イエメンから、昨年開催された地域会合に係る説明(INF13)の説明及び同国の取組が説明された。
 
(5)作業計画(議題21関連)
 「作業計画」のうち、海上安全に係る小委員会の作業計画についてのプレナリーにおける審議概要は次のとおり。
 
1. NAV小委員会関係
 ノルウェーの灯火の色の特定及び性能基準に関する提案(MSC80/21/8)について2回の審議を要する高優先事項として取り扱われることとなったことなど、次のとおり作業項目が追加承認された。
・ECDISの性能基準の改正(2セッション)
・レーダー機器の搭載に関するガイドラインの作成(3セッション)
・COLREG Annex Iに関する灯火の色の基準の改正(2セッション)
・航海燈及び操作機器に関するガイドラインの作成(2セッション)
 
2. COMSAR小委員会関係
 特段の意見等なく作業計画が承認された。
 
(参考)次回MSC(MSC81)は2006年5月10日から19日に開催することでtentativeに承認された。


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