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(c)垂直ダイポール空中線の装備設計要領
 VHF無線電話等に使用される。
 垂直ダイポール空中線の配置、取付けは下記による。図3・14にその装備例を示す。
(1)輻射の妨げとなる大きな構造物からは、できる限り垂直方向に2m以上、水平方向は6m以上離して装備することが望ましい。
(2)空中線は、空中線相互間の干渉を考慮した上、船内のできるだけ高いところに電波輻射部分が垂直になるように取り付ける。
 
図3・14 垂直ダイポール空中線の装備例
 
(d)衛星通信用空中線の装備設計要領
(i)インマルサットB型船舶地球局設備
(1)中線の設置位置は、設備の性能の重大な低下を招かないように、他の設備の空中線からできるだけ離し、かつ、仰角-5度かち90度までの範囲にシャドーセクターが6度を超える障害物がないような位置を選ぶ。この場合、障害物を避けるために高い位置に装備すると激しい振動下にさらされることになり、現実的には煙突やマスト等の円筒状の障害物が避けられない場合がある。このため、事前に船体図によって全方向に対する最大損失を算出して、少なくとも損失が4dB以内になるように配置し、それによりメーカーと協議のうえ、最終的な位置を決定する。
 図3・15は、メーカーが使用している損失算出資料の一部である。
(2)MF/HF用空中線から5m以上離す。
(3)VHF、GPS、等の空中線から約3m以上離す。
(4)磁気コンパスから3m以上離す。
注. 30m以上80m未満の長さの船舶の場合は、連続した固定磁性材料に対して1.5m、その端部に対して2mまで段階的に減じることができる。
(5)レーダー空中線の回転領域から離す。
(6)煙突からの熱や煙、ほこりなどの避けられる位置を選ぶ。
(7)激しい振動や衝撃を避ける。
 
図3・15 円筒状障害物の回線損失
*:空中線の仰角が低い場合、特にフェージングや気象条件等により通信品質は不安定になり易い。実用上は通信可能であるが、いつでも通信可能とは限らない中間的な領域である。
 
(ii)インマルサットC型船舶地球局設備/高機能グループ呼出受信機及び高機能グループ呼出聴守受信機
 一般に無指向性の空中線が使用され、その空中線は設備の性能の重大な低下を招かないように船首及び船尾方向において仰角-5度から90度まで、さらに、左舷及び右舷において仰角-15度から90度までの範囲にシャドーセクターが2度を超える障害物がないような位置を選ぶ。無指向性の空中線は、空中線から1m範囲以内にある物体で、2度を超えるシャドーセクターを生じさせるものは、設備の性能を大きく低下させるおそれがあるので注意する必要がある。
 指向性の空中線(インマルサットB又はFと同様のもの)を使用する場合は、インマルサットB型と同様に考えるのがよい。
(e)その他の機器の空中線の装備設計要領
(i)GPS
 測位装置用受信空中線は周囲に障害物の無い高いところに取り付ける。周囲に障害物があると仰角の低い衛星の受信ができないので、測位可能時間が減少する。
 配置の計画を行うときは、他からの妨害を減少するために以下の点に注意すること。
・他の受信空中線からlm以上離す。
・VHF空中線から2m以上離す。
・送信用空中線から4m以上離す。
・レーダー空中線の送信ビーム範囲(垂直ビーム幅30度の範囲)を避ける。
・インマルサットの空中線から3m以上離し、かつ、その送信ビーム範囲を避ける。
(3)空中線の配置例
 空中線の配置について一般的配置要件及び空中線の種類ごとの配置要件等について述べてきたが、ここで実際の配置例を示す。
 図3・16及に示すように、レーダーマスト頂部には、レーダー空中線、無線方位測定機用空中線、インマルサットC用空中線等がひしめくように配置されていることが多く、各空中線の性能を100%満足させることが困難な場合があるので、実際に空中線の配置を検討する際は、空中線配置図を作成し、船主あるいは運用者さらに無線機器メーカーとの打合せを行って配置の決定を行うのがよい。
 ここには、3・3・2の機器配置で示したものと同じ構成の場合の配置例を図3・16に示す。
 
図3・16 空中線の配置(コンテナ船)
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