| 3・3・3 空中線の配置  船舶では限られたスペースに多くの空中線を配置しなければならない。しかも、これらの空中線は効率よく、装置の性能を十分に発揮させ得るように、かつ、相互の干渉がないように、非常の際にも通信機能を確保できる等の条件を満足させるよう考慮して配置計画を行わなければならない。 (1)一般  GMDSS用の無線設備については、一般的にはホイップ空中線が使用されるが、線条空中線を使用することもあり得るので、ここでは線条空中線を含めた空中線の配置、設置に関する注意事項をとりまとめた。 (1)空中線は、送信用と受信用間の距離、間隔をできるだけ離すと共に、できるだけ高い所に設けること。また、相互干渉を少なくするため、できるだけ分散して配置すること。 (2)空中線及びその引込線は、船灯、信号灯の射光を妨げず、かつ、風浪等により振れたり湾曲しても、他の構造物に接触しない位置に装備すること。 (3)空中線(引込部分等も含む)は、煙突、マスト、デリック、ステー、汽笛あるいはその他の金属性船体構造物及び信号旗などからできるだけ離して展張すること。 (4)空中線系が煙突などの近くにあると、煙、熱気などの影響で空中線を軟化損傷したり絶縁低下を生ずるおそれがあるので、できるだけ離すこと。やむを得ずそれらの近くに設置しなければならない場合には、耐熱処理などを施して空中線条やフィーダなどを保護すること。 (5)平均風速40m/sec、瞬間最大風速60m/secの風圧や氷結による荷重で破断しないこと。 (6)動揺、衝撃などにより、空中線が破断するのを防止するため、セーフティリンクを備えること。また、一部の空中線が切断したために他の空中線の機能が損なわれないように考慮すること。 (7)送信空中線、フィーダ又はカウンターポイズなどの高圧電気の通じているものは、その高さは人の歩行する平面から2.5m以上とすること。 (8)空中線系には避雷器又は接地装置を、カウンターポイズには接地装置を設けること。ただし、25MHz以上の周波数を用いる場合にはこの限りではない。 (9)展張用に使用する碍子は、動作電圧に十分耐えるものでなければならない。また、碍子、シャックル、シンブル及び空中線クランプ等は空中線条の破断強度以上の強度のものでなければならない。 (10)碍子、シャックル、シンブル及び空中線クランプ等の金属部は、耐食性又は耐食処理を施したものを使用する。 (11)油タンカー、LPGタンカーでは、送信空中線の位置は、貨物油蒸気開口から少なくとも3m以上離すこと。  IEC Type Dのケミカルタンカーについては、4.5m以上離すこと。 (12)空中線の引込み碍子は、動作電圧に十分耐え、水分が蓄積しにくく、空中線との接続が手軽に行え、かつ、破損した際にも容易に取替えのできるものであること。また、引込み碍子の取付けにあたっては室内に漏水しないよう防水に注意すること。 (13)同軸ケーブルを送信空中線のフィーダとして使用する場合には、耐電圧、電流容量などに十分余裕のあるものを用いること。 (14)空中線取付台は、船の動揺、振動及び風圧などに十分耐える構造、強度のものとすること。 (15)受信空中線は、妨害雑音の影響を受けないよう、送信空中線や雑音発生源からできるだけ離れたところに分散して展張すること。 (2)各空中線の装備設計要領  空中線は、すべての機器ごとに独立に装備するのが基本であり、少なくともGMDSSの規則上で要求されている機器については、空中線の共用器への分配を行わないこと。  また、各機器の空中線の配置にあたっては、無線機器メーカーの工事要領に従うこと。 (a)線条空中線の装備要領  MF/HFの送受信用等に使用される。  装備例を図3・12に示す。   図3・12 線条空中線の装備例 
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|  |    (b)ホイップ空中線の装備設計要領  MF/HF送信用(10mホイップ等)、ファックス受信用(2.6mホイップ等)、受信用(6mホイップ等)、ナブテックス受信用(2.6mホイップ等)等に使用される。  ホイップ空中線の配置、取付けは下記による。図3・13にその装備例を示す。  ホイップ空中線は、周囲に遮へい物のないできるだけ高い所で、空中線の垂直部が動揺しても他の構造物や空中線などに接触しないような位置に、素子が垂直となるように取り付けること。   図3・13 ホイップ空中線の装備例 |