日本財団 図書館


3・2・2 機器構成例
 条約船の場合の機器構成の実例としてA1〜A3水域を航行する総トン数500トン以上の貨物船の場合について以下に示す。
(1)A1〜A3水域を航行する総トン数500トン以上の条約船における義務設備は、前項3・2・1の表3・1(2/4)を適用することとなる。
 この表で、(1)の無線設備にインマルサットA又はBを適用した場合、現在インマルサットA又はBを蓄電池で駆動するには、空中線方位の安定化のためのジャイロコンパスにも蓄電池で給電しなければならない。国産のジャイロコンパスでは直流給電を標準としておらず、インバータの追加、さらに無停電切替えが望ましいので、非常用又は一時つなぎの蓄電池の容量もジャイロヘの給電の追加で大きなものとなる。また、併せてインマルサット自体も直流給電を標準としていない。これらの理由で一般には表3・1(2/4)(1)の中の(2)でインマルサットCを採用するか、同表(1)の(1)の構成で適用されることが多い。
 この場合、義務装備機器は、次のとおりとなる。
(i)送信設備及び受信設備の機器
(1)MF/HF無線設備(電話+直接印刷電信+DSC+DSC聴守装置)
〔又はインマルサット直接印刷電信(インマルサットC)及びMF(無線電話、DSC、DSC聴守装置)〕 1台
(2)VHF無線設備(電話+DSC+DSC聴守装置) 1台
(ii)船舶の航行の安全に関する情報を受信するための機器
(1)ナブテックス受信機 1台
(2)高機能グループ呼出受信機 1台
(iii)遭難信号自動通報設備の機器
(1)EPIRB 1台(船橋に整備するか船橋より遠隔操作)
(2)レーダー・トランスポンダー 2台(総トン数500トン以上の貨物船)
(iv)その他の機器
持運び式双方向無線電話装置  3台(総トン数500トン以上の貨物船)
(2)保守方法の選択
 3・2・1(3)項(b)に示した保守方法の選択は船主又は運用者の要求に従う必要があるが、一般には設備の二重化と陸上保守の2つを選択する場合が多いようである。
 もちろん、一定の資格のある無線従事者が乗船する場合においては、船上保守が選択される可能性もあるが、長期的に考えると、保守要員の確保等の問題もあり、後になって設備の二重化を選択される可能性もある。
 したがって、これより以降は保守方法としての設備の二重化と陸上保守の2つを適用したケースで構成を考える。
(i)設備の二重化
 設備の二重化については、表3・4に示すように、VHF無線設備(無線電話、DSC)及びMF/HF無線設備(直接印刷電信、無線電話、DSC、DSC聴守装置)又はインマルサット直接印刷電信が、二重化の対象である。したがって、VHFについて無線電話及びDSCの二重装備を行うが、もう一方の設備の二重化については、MF/HF無線設備又はインマルサット直接印刷電信のいずれかの選択となる。ここでは蓄電池給電の容易なインマルサットC(すなわちインマルサット直接印刷電信)の装備を選択する。
 この場合、インマルサットCとしてEGCの機能を包含した装置を選択すれば上記(1)(ii)の(2)高機能グループ呼出受信機を満足する。MH/HF無線設備による二重化も考え得る一つである。また、インマルサットB又はFを二重化設備として設置も可能であるが、この場合は、先に述べたように本体及びジャイロコンパスヘの蓄電池による給電を考慮しなければならない。
 二重化設備については、同時給電は不要であるが、蓄電池による給電は本体と同様である。
(ii)陸上保守
 陸上保守の条件によって機器構成が変化することはないが、予備品の内容が船上保守と陸上保守とでは変化するので、設備を発注する際、これを明記する必要がある。
(3)任意装備機器
 義務装備の機器に関しては、上記の(1)及び(2)項で決まるが、船主又は運用者の希望により追加装備される機器をその都度確認する必要がある。
 現在、外航船においては一般に通信の利便性によりインマルサットFが装備され、さらにファックスなどもオプション装備されることが多い。前述のとおり、これを任意装備機器として取扱えば、蓄電池給電は不要である。
 また、米国に寄港する船舶は、VHF無線設備にUSCG/VTS用チャンネルの受信機を追加装備するなどの考慮も必要である。
 さらに、義務装備機器についても、MF/HF無線設備の遠隔制御器、VHF無線設備の制御器、電話器、ベルの追加装備等構成の詳細について船主又は運用者に確認する必要がある。
(4)機器構成
 以上の検討の結果をまとめると、A1〜A3水域を航行する総トン数500トン以上の条約船(貨物船)における無線システムの構成は次のとおりとなる。
MF/HF無線設備
(無線電話+直接印刷電信+DSC+DSC聴守装置) 1台
VHF無線設備(無線電話+DSC) 2台
VHF DSC聴守装置 1台
インマルサットB又はF 1台(任意装備)
インマルサットC 1台(高機能グループ呼出受信機兼用)
ナブテックス受信機 1台
EPIRB 1台
レーダー・トランスポンダー 2台
持運び式双方向無線電話 3台







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION