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(5)電源
 GMDSS設備用電源として、主電源及び非常電源の設備を要求される船舶等においては、非常電源、さらにそれらが故障の際に設備に給電するための補助電源の設備が必要である。
(a)主電源
 主電源設備は、船内の電気利用設備に必要かつ、十分な電力の供給が可能なよう計画されなければならない。
(b)非常電源
 主電源が故障の場合、必要な設備に対して給電するための電源である。
 非常用電源の設備対象となる船舶及び給電時間は次のとおりである。
国際航海に従事する旅客船・・・36時間
国際航海に従事する総トン数500トン以上の非旅客船・・・18時間
遠洋又は近海区域を航行区域とする旅客船・・・18時間
遠洋又は近海区域を航行区域とする総トン数
500トン以上の非旅客船・・・18時間
国際航海に従事する総トン数500トン以上の漁船・・・18時間
 ただし、管海官庁が差し支えないと認めた場合は軽減できる。
 非常電源による給電を要求される無線設備の適用範囲は以下のとおりである。
VHF無線設備(無線電話、DSC、DSC聴守装置)
MF無線設備(無線電話、DSC、DSC聴守装置、直接印刷電信)
(A1水域を航行する船舶には適用しない)
HF無線設備(無線電話、DSC、DSC聴守装置、直接印刷電信)
(A1又はA2水域を航行する船舶には適用しない)
インマルサット設備(無線電話、直接印刷電信)
(A1又はA2水域を航行する船舶には適用しない)
 なお1995年(平成7年)1月31日以前に建造された船舶については、非常電源より無線設備に給電できなくてもよい。
 1995年(平成7年)2月1日以後に建造される船舶は新造時から適用となる。
(c)補助電源
 主電源及び非常電源の故障の場合、遭難通信、安全通信を行うための無線設備に給電するための電源である。この電源は常に必要な電力が充電されている蓄電池により構成されている。
 補助電源の適用対象は、条約船、遠洋又は近海区域を航行区域とする旅客船、遠洋又は近海区域を航行区域とする総トン数300トン以上の非旅客船及び総トン数300トン以上の漁船である。
 補助電源の適用条件は、非常電源から前記の無線設備に対し給電することができる船舶については、1時間、非常電源から給電することができる船舶以外のものについては、6時間以上の給電時間が要求されている。
 補助電源で給電を要求される無線設備及び適用範囲は次のとおりである。
VHF無線設備(無線電話、DSC)
MF無線設備(無線電話、直接印刷電信、DSC)
(A1水域を航行する船舶には適用しない)
HF無線設備(無線電話、直接印刷電信、DSC)
(A1又はA2水域を航行する船舶には適用しない)
インマルサット設備(無線電話、直接印刷電信)
(A1又はA2水域を航行する船舶には適用しない)
 さらに、次に示す予備設備としての無線設備にも補助電源からの給電が適用される。
VHF無線設備(無線電話、DSC)
MF無線設備(無線電話、直接印刷電信、DSC)
HF無線設備(無線電話、直接印刷電信、DSC)
インマルサット設備(無線電話、直接印刷電信)
 また、前項(4)に示すとおり、無線設備を操作する場所の照明が、主電源、非常電源及び予備の独立の電源より給電の必要があるため、一般にこれの給電も補助電源より行う。
 補助電源容量の算出方法は、次に示す式で計算する。
供給すべき電気的負荷=送信に必要な電流消費量×1/2
+受信に必要な電流消費量
+その他の負荷の電流消費量
無線設備の照明用の電流消費量は、その他の負荷として計上する。
 補助電源容量の算出には、同時作動を要求される設備を考慮の上、計上するが、HF無線設備、MF無線設備などを同時に給電する必要はない。
(6)陸上保守、船上保守等の承認手続きについて
 従来から船舶の無線局を開設するための申請手続きは事前に総務省へ行ってきたが、GMDSSの適用に伴い総務省とともに各地方運輸局(又は地方海運支局)へも関係書類を事前に提出することとなっている。
 提出する資料は下記のとおりである。
(1)保守等承認申請書
(2)保守等の対象となる設備の一覧表
(3)保守を行う場合の内容
(4)設備の点検項目及び点検期間
(5)点検結果の記録用紙及び保管方法
(6)陸上保守の代理店
(7)保守事業者の能力をしめす書類
 上記の書類を準備し地方運輸局(又は地方海運支局)への申請手続きは申請者又は海事代理士が行う。
(7)NK船級の船舶にあっては、工事の着手に先立ち関係書類を事前審査用としてNK材料艤装部へ提出し承認を得なければならない。
提出書類(各3部)
(1)日本籍船の場合、安全設備規則により次に掲げる図面及び書類を提出する。
a)航海設備図(磁気コンパス(羅盆を含む)、ジャイロ・コンパス、航海用レーダー、電子プロッテング、自動物標追跡装置、自動衝突予防援助装置、音響測深機、船速距離計、舵角指示器、プロペラ回転数表示器、プロペラ回転方向(可変ピッチプロペラの場合には、そのピッチ)表示器、推力計(ある場合に限る)、回頭角速度計、衛星航法装置、レーダー反射器、音響受信装置、船首方位伝達装置、船舶自動識別装置、航海情報記録装置、船首方位制御方式自動操舵装置(又は航跡制御方式自動操舵装置)、電子海図情報表示装置、昼間信号灯の数量及び要目を示したもの)
b)GMDSS設備図(ナブテックス受信機、高機能グループ呼出受信機、VHFデジタル選択呼出装置、VHFデジタル選択呼出聴守装置、デジタル選択呼出装置、デジタル選択呼出聴守装置、浮揚型極軌道衛星利用非常用位置指示無線標識装置、レーダー・トランスポンダー、持運び式双方向無線電話装置、固定式双方向無線電話装置及び補助電源の数量、要目及び配置を示したもの)
(2)外国籍船(日本籍以外の船舶)の場合、Rules for Radio Installations(通信設備規則)により次の掲げる図面及び書類を提出する。
a)Specifications and equipment list for GMDSS(要目表及び機器一覧表)
 Ship's name, ship builder's name, hull number, name of flag state, and gross tonnage, class number,;
 Specifications (names of manufacturers, types, type approval number sets) of radio equipment;
 Secondary means of alerting, Sea areas, means of maintenance (shore -based, at-sea electronic maintenance, duplication of equipment), GMDSS identities (Call sign, MMSI, NBDP/INMARSAT/EPIRB ID);
 Main, emergency and reserve sources of electrical power.
 Calculation sheets for capacity of accumulator batteries for reserve source.
b) Arrangement of radio equipment and radio life-saving appliances
c) Electrical wiring diagram of radio installations
d) Arrangement of antenna
 
注.1 日本籍船のGMDSS設備については、平成10年7月1日よりSE(安全設備)としてNKが検査を行っている。
注.2 GMDSS義務設備としてインマルサットが装備されている場合、インマルサットのアンテナ配置が障害を受ける恐れがある時には、ブロッキングチャート(ブラインドセクター解析図)の提出を要求されることがある。







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