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2・5 VHF無線電話
 (国際)VHF無線電話は、1950年代の中頃より、ヨーロッパにおける従来の2MHz帯の無線電話の混信を防ぐためにその使用が検討されていたが、1959年の世界無線通信主管庁会議(WARC)でその内容が無線通信規則に規定され、150MHz帯の28個のチャンネルが50kHz間隔で割当てられ、船舶相互間の船橋対船橋の直接の無線電話通信、港務通信、船舶の通航に関する通信の他、公衆通信又は国際公衆通信と接続しても使用されるようになった。その後このVHF無線電話を利用する船舶が増えてきたため50kHzごとの割当チャンネルが25kHzごとに狭めてチャンネルを倍増し57チャンネルとする方針が1967年のWARCで決められ1973年までには狭帯域化が完了した。1987年にはGMDSSに関連して使用チャンネルが改正され、チャンネル70(156.525MHz)がDSC用に、チャンネル16(156.8MHz)がガードバンド付きの遭難呼出しチャンネルに指定されている。
 さらに、1998年にはチャンネル87(161.975MHz)及びチャンネル88(162.025MHz)の周波数が公海で世界的に運用される船舶自動識別装置(AIS)用チャンネルに指定された。日本ではこの周波数をマリンVHF陸船間通信用としていたため、干渉調査を行ったうえで、使用周波数が決められた。しかし、わが国ではAISの公海周波数を使用しているマリンVHF海岸局は、2004年3月末までに周波数の変更を完了し、現在では公海周波数で運用されている。
 なお、第3管区海上保安本部では、航行管制の円滑化、情報提供の高度化を図るため、東京湾とその周辺においてAISを活用した次世代航行支援システムの運用を地域周波数(VHFチャンネル番号2079、2085)を用いて平成16年7月1日から行っている。
 チャンネルの使用区分、通信方式、使用上の注意事項は、次の表2・9のとおりである。
 
表2・9 付録S18号 VHF海上移動周波数帯における送信周波数の表(第S52条参照)
注:表の理解を助けるため、注a)からo)までを参照すること
チャンネルの番号 送信周波数(MHz) 船舶相互間 港務通信及び船舶通航 公衆通信
船舶局 海岸局 1周波数 2周波数
60 156.025 160.625 X X
01 156.050 160.650 X X
61 m),o) 156.075 160.675 X X
02 m),o) 156.100 160.700 X X
62 m),o) 156.125 160.725 X X
03 m),o) 156.150 160.750 X X
63 m),o) 156.175 160.775 X X
04 m),o) 156.200 160.800 X X
64 m),o) 156.225 160.825 X X
05 m),o) 156.250 160.850 X X
65 m),o) 156.275 160.875 X X
06 f) 156.300 X
66 156.325 160.925 X X
07 156.350 160.950 X X
67 h) 156.375 156.375 X X
08 156.400 X
68 156.425 156.425 X
09 i) 156.450 156.450 X X
69 156.475 156.475 X X
10 h) 156.500 156.500 X X
70 j) 156.525 156.525 遭難、安全及び呼出しのためのデジタル選択呼出
11 156.550 156.550 X
71 156.575 156.575 X
12 156.600 156.600 X
72 i) 156.625 X
13 k) 156.650 160.650 X X
73 h),i) 156.675 156.675 X X
14 156.700 156.700 X
74 156.725 156.725 X
15 g) 156.750 156.750 X X
75 n) 156.775 X
16 156.800 156.800 遭難、安全及び呼出し
76 n) 156.825 X
17 g) 156.850 156.850 X X
77 156.875 X
18 m) 156.900 161.500 X X X
78 156.925 161.525 X X
19 156.950 161.550 X X
79 156.975 161.575 X X
20 157.000 161.600 X X
80 157.025 161.625 X X
21 157.050 161.650 X X
81 157.075 161.675 X X
22 m) 157.100 161.700 X X X
82 m),o) 157.125 161.725 X X X
23 m),o) 157.150 161.750 X X X
83 m),o) 157.175 161.775 X X X
24 m),o) 157.200 161.800 X X
84 m),o) 157.225 161.825 X X X
25 m),o) 157.250 161.850 X X X
85 m),o) 157.275 161.875 X X X
26 m),o) 157.300 161.900 X X X
86 m),o) 157.325 161.925 X X X
27 157.350 161.950 X X
87 157.375 X
28 157.400 162.000 X X
88 157.425 X
AIS 1 1) 161.975 161.975
AIS 2 1) 162.025 162.025
 
一般的な注
(a)主管庁は、軽飛行機及びヘリコプターが、第S51.69号、第S51.73号、第S51.74号、第S51.75号、第S51.76号、第S51.77号及び第S51.78号に定める条件に従って、主に海上の支援作業に従事する船舶局又はこれに参加する海岸局との通信に使用する船舶相互間、港務通信及び船舶通航の業務の周波数を指定することができる。もっとも、公衆通信と共用するチャンネルの使用は、関係主管庁影響を受ける主管庁との間の事前の合意に従わなければならない。
(b)現行付録のチャンネル(第06、第13、第15、第16、第17、第70、第75及び第76のチャンネルを除く。)は、関係主管庁と影響を受ける主管庁との間の特別取決めに従うことを条件として、高速データ送信及びファクシミリ送信にも使用することができる。
(c)現行付録のチャンネル(なるべく第28チャンネルとし、第06、第13、第15、第16、第17、第70、第75及び第76のチャンネルを除く。)は、関係主管庁と影響を受ける主管庁との間の特別取決めに従うことを条件として、直接印刷電信及びデータ送信に使用することができる。
(d)この表の周波数は、第S5.226号に定める条件に従い、内陸水路における無線通信にも使用することができる。
(e)地域の輻輳を緊急に低減させる必要のある主管庁は、25kHzチャンネルに混信を生じさせないことを条件として、以下の条件の下で、12.5kHzチャンネルインターリーブを適用することができる。
(1)12.5kHzチャンネルへ変更する時には、ITU-R勧告M.1084-2を考慮すること。
(2)付録第S18号の海上移動遭難及び安全周波数の25kHzチャンネル、特に第06、第13、第15、第16、第17及び第70のチャンネルヘの影響及びITU-R勧告M.489-2で定めるこれらのチャンネルの技術的特性への影響がないこと。
(3)12.5kHzチャンネルインターリーブの導人及びその結果生じる国内要件は、導入主管庁と、その船舶局又は業務が影響を受ける可能性がある主管庁との間の事前の取決めによること。
 
個別的な注
(f)周波数156.300MHz(第06チャンネル)(第S51.79号、付録第S13号及び付録第S15号参照)は、共同の捜索及び救助作業に従事する船舶局と航空機局間の通信にも使用できる。船舶局は、第06チャンネルによる上記の通信並びに結氷期間中における航空機局、砕氷船及び援助を受ける船舶の間の通信に対する有害な混信を避けなくてはならない。
(g)第15及び第17のチャンネルは、実効輻射電力が1Wを超えないこと及びこれらのチャンネルが主管庁の領海内で使用されている時、当該主管庁の国内規則に従うことを条件として、船上通信にも使用することができる。
(h)欧州海上地域及びカナダでは、これらの周波数(第10、第67及び第73のチャンネル)は、必要となる場合、第S51.69号、第S51.73号、第S51.74号、第S51.75号、第S51.76号、第S51.77号及びS51.78号に定める条件に従って、個々の関係主管庁によって、共同の捜索及び救助作業並びに地域の汚染防止作業に従事する船舶局、航空機局及び参加陸上局間の通信のためにも使用することができる。
(i)注a)に定める目的のために優先する最初の3つの周波数は、156.450MHz(第09チャンネル)、156.625MHz(第72チャンネル)及び156.675MHz(第73チャンネル)とする。
(j)第70チャンネルは、遭難、安全及び呼出しのためのデジタル選択呼出しにのみ使用する。
(k)主に船舶相互間航行安全通信のため、第13チャンネルは、航行安全通信用チャンネルとしての世界的基礎での使用のために指定される。このチャンネルは、関係主管庁の国内規則に従うことを条件として、船舶通航業務及び港務通信業務にも使用することができる。
(l)これらのチャンネル(AIS1及びAIS2)は、地域的基礎で他の周波数がこの目的のために指定される場合を除き、公海で世界的に運用される自動船舶識別及び監視システムに使用する。
(m)これらのチャンネル(第18、第22、第61から第65及び第82から第86)は、関心を有する若しくは影響を受ける主管庁間の特別取決めに従うことを条件として、単一周波数チャンネルとして使用することができる。
(n)これらのチャンネル(第75及び第76)の使用は、航行に関連する通信のみに制限されるものとし、第16チャンネルヘの有害な混信を避けるため、出力の1W以下への制限又は地理的な分離などによりすべての予防策をとるものとする。
(o)これらのチャンネル(第61から第65及び第82から第86)は、関心を有する又は影響を受ける主管庁間の特別取決めに従うことを条件として、初期試験及び将来に導入可能性のある新技術のための周波数帯の提供に使用してもよい、試験及び将来導入可能性のある新技術のためにこれらのチャンネルを使用する局は、第S5条に従って運用しているその他の局に対して有害な混信を生じさせてはならないし、またそれらの局からの保護を要求してはならない。
 また、技術特性については、無線通信規則の付録第19号につぎのように規定されているほか、電波法の無線設備規則の第40条の2と第58条にもその規定がある。
(1)毎オクターブ6dBのプレエンファシスによる周波数変調(位相変調)のみを使用する。
(2)100%の変調に相当する周波数偏移は、できる限り±5kHzに近づける。周波数偏移は、いかなる場合にも、±5kHzを超えてはならない。
(3)海岸局及び船舶局に対する周波数許容偏差は、100万分の10とする。
(4)付録第18号に指定するいずれの周波数で送信するときにも、各局の発射は、その発射点において垂直偏波とする。
(5)可聴周波数は、3,000Hzを限度とする。
(6)船舶局の送信機の平均電力は、容易に1W以下に低減することができるものでなければならない。ただし、156.525MHz(チャンネル70)において運用するデジタル選択呼出装置については、この電力低減設備は、任意とする。
(7)デジタル選択呼出しを使用する局は、次のことができるものでなければならない。
(a)156.525MHz(チャンネル70)において信号の存在を確認するために感知すること。
(b)そのチャンネルが呼出しにより占有されている場合に呼出し(遭難呼出し及び安全呼出しを除く。)の送信を自動的に行わないようにすること。
(8)デジタル選択呼出しに使用する送信機及び受信機のその他の特性は、国際無線通信部門の関係勧告に適合すること。
 なお、送信電力は無線通信規則において、「船舶局の搬送波電力は25Wを超えてはならない。」と規定されているが、国内においても25Wが指定されている。







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