2・3・2 高機能グループ呼出(EGC)
インマルサットシステムでは、もともといろいろな船団を一斉呼出しするシステムが設けられていたが、その機能をさらに強化して行うように開発されたのが、このEnhanced Group Call、略してEGCである。わが国では高機能群(あるいは、グループ)呼び出しと呼ばれる(図2・15)。このEGCはインマルサットにより運用されている移動体衛星通信システム経由でメッセージを放送するシステムであり、インマルサットCシステムの一部であって、次の二つの業務を支えている。
(1)Safety NET[直接印刷電信により海上安全情報(MSI)を放送し、自動受信するシステム]
(2)Fleet NET[直接印刷電信によって船団の管理と一般的な公衆情報を放送し、自動受信するシステム]
Safety NETの放送は、ナブテックスシステムと同じような方式で放送され、インマルサットシステムがカバーする海域を航行する船舶に利用可能となっている。各インマルサット衛星は、指定されたEGCチャンネルで放送し、その衛星のカバレージにいる船舶は、このEGCメッセージ受信専用の小型の受信機のみからなる船舶地球局を備えていれば、そのメッセージを受信できるが、この放送メッセージは、船団別呼出し又は地域別呼出しの指定をして送信することができるようになっている。地域別呼出しの場合は、前にも示した16のNAVAREAの一つ又は情報提供者が随時指定した地域のような一定の地理的な区分を指定できることになっている。図2・16はインマルサット衛星のカバレージとNAVAREAの関係を示したものである。特別な海域の指定は、円形(その中心の緯度・経度と半径を指定)か、矩形(左下隅の緯度・経度と2辺を指定)で行われる(図2・17参照)。EGC受信機は一つ又は複数の地域を指定するか、受信機に位置情報を入力しておけば、それぞれの指定にしたがって、それらの放送を受信できる。各EGCチャンネルは一日当たり4.3メガバイトの情報を放送でき、メッセージには誤り訂正技術が組込まれている。
インマルサットの海岸地球局から送信されるEGC信号には、C1、C2、C3、C4、C5と5種類のアドレスが前置されている。C1は通信の優先度を表す1文字で、0:普通、1:安全、2:緊急、3:遭難通信である。C2は呼出サービスの種類を表す2文字で、この種類によって次のC3の内容や長さが指定される。C2=00は全船呼出しで、この場合のC3は2文字(00)である。C2=04は図2・17(c)のような矩形海域の緊急通信と航行警報で、C3は12文字で例えば12S124E15010は、12°S、124°Eから北へ15°、東へ10°の矩形海域が指定される。C2=13は図2・17(a)のようなNAVAREAあての沿岸警報で、C3は4文字X1、X2、B1、B2で、X1、X2はNAVAREAの番号(図2・16)、B1は送信局の識別符号、B2はナブテックスと同様なメッセージの種類の識別符号である。C2=14は図2・17(b)の円形海域指定の陸から船への遭難警報で、C3は10文字、例えば、56N034W010の最初の7桁で円の中心の緯度と経度を、終わりの3桁は円の半径(010は10°)を表している。C4は同じ情報を繰返して放送する回数とその時間を示す2文字の数字である。01、11、61〜67、70、71は3回までの繰返しを表し、01は1回限りの放送、11は1回放送の後、6分後に再放送(これをエコーという)、61〜67は順次1、2、3、4、12、24時間後に再放送、70と71はそれぞれ12時間と24時間置きの3回の放送を示している。そのほかの数字はメッセージの提供者が中止の申出まで繰返す放送で、1桁目の1〜5は倍数符号で、2桁目の示す時間の数字倍を示している。2桁目の2、4、6、8は、それぞれ1、6、12、24時間ごとの繰返しを、3、5、7、9は、それぞれのまえの数字のエコー付きを示している。したがって、C4=37は12×3=36時間ごとと、その6分後のエコーの放送を示している。C5は表示符号で、パリティの有無も示している。C5=00は普通の英数字印字での放送であり、C5=01は複数パリティ付きの片仮名印字の放送である。
図2・15 インマルサットの高機能グループ呼出(EGC)
図2・16 NAVAREAとインマルサットのカバレージ
(拡大画面:118KB)
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図2・17 高機能グループ呼出の海域指定の方法
(a)NAVAREA別
(b)円形海域
(c)矩形海域
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