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5・5・8 電磁両立性EMCの測定
 一般的なEMCの定義、規格及び測定法については第4章4・8項で説明してある。
 ここでは船舶に関係するEMC規格「IEC60945]に関連した測定法について補足説明をする。IEC60945は「航海及び無線連絡装置と設備−試験方法及び所要試験結果」を取り扱う国際EMC規格である。
 EMCの測定は
(A)機器から放射される「好ましくない電磁放射(妨害波)」に関する測定、と(B)妨害波に対して「電磁妨害の存在する環境で、機器、装置又はシステムが性能低下せずに動作することができる能力(イミュニティ)」に関する測定、に分けられる。
(A)妨害波放射に関する測定
 図5・35に試験機器から放射される電磁放射レベルの測定系を示す。回転台上に供試機器を乗せて回転しながら3〜10m離れた受信アンテナにより妨害波電界強度を測定する。アンテナのアンテナ系数AFは予め較正しておく。アンテナの高さを1〜4m、又は2〜6m上下させて妨害波レベルを測定する。放送電波など他からの混信を避けるため電波暗室内又は電波環境が良い野外のオープンサイトで測定する。
 
図5・35 妨害波レベルの測定系
 
図5・36 妨害波の許容レベル
 
 機器から3m離れた位置におけるIEC60945で規定される妨害波の許容値を図5・36に示す。図の横軸や測定周波数、縦軸は許容値を示す。下にあるほど厳しい許容値となる。150MHz帯は海上での通信機周波数があるため24(dBμ)と最も厳しい規制値とされている。
 妨害波は電波として放射される以外に電源や信号ケーブル等を経由して供試機器に影響を与える伝導による放射妨害がある。表5・6に伝導による放射妨害と電波幅射による放射妨害の測定条件を示す。
 
表5・6 妨害波測定の試験条件
 
(B)イミュニティ測定
 ある機器が妨害波を排除する能力がイミュニティである。表5・7にイミュニティ測定の項目を示す。
 
表5・7 イミュニティ測定項目
  携帯式 防護式 露出式 浸水式
伝導低周波妨害 * 10% 交流供給電圧 50Hz〜900Hz
10%〜1% 900Hz〜6kHz、1% 6kHz〜10kHz
10% 直流供給電圧 50Hz〜10kHz
交流と直流電源ポート、性能基準A
伝導無線周波妨害 * 3Vr.m.s.、e.m.f.10kHz〜80MHz、10Vr.m.s.、e.m.f指定のスポット周波数において 
交流と直流の電源ポート、信号と制御ポート、共通方式 性能基準A
放射妨害 10V/m80MHz〜1GHz
囲い型ポート
性能基準A
*
急速過渡
(バースト)
* 交流電源ポートの2kV差動
信号と制御ポートの1kV共通方式
性能基準B
迅速過渡
(サージ)
* 1kV Line/earth、0.5kB Line/Line
交流電源ポート
性能基準B
電源短期変動 * ±20% voltage for 1.5s、±10% frequency for 5s
交流電源ポート 性能基準B
電源故障 * 60秒遮断
交流と直流の電源ポート
性能基準C
電磁放電 6kV接点
8kV空中
性能基準B
*
*該当なし
 
 図5・37に放射電磁界イミュニティ測定系の一例を示す。供試機器の周囲の電界強度が一様となることが要求される。床からの反射を消すために電波吸収材を敷く。
 
図5・37 放射電磁界イミュニティ測定系
 
 機器に照射する電界強度は表5・8のようにレベルが規定されている。
 
表5・8 イミュニティ試験照射電界強度レベル
レベル 試験電界強度
V/m
1
2
3
X
1
3
10
特別
“X”はオープン試験レベル、本レベルは製造者仕様に示すこと。
 
 イミュニティ試験結果の評価はIEC60945により次のA、B及びCの基準で性能評価が行われる。
 
−性能基準A:EUTは試験中とその後において、その目的とするとおり動作を継続しなければならない。該当する装置の規格及び製造者が発行した技術仕様書に定められるとおり、性能劣化も機能の喪失も許されない。
−性能基準B:EUTは試験後において、その目的とするとおり動作を継続しなければならない。該当する装置の規格及び製造者が発行した技術仕様書に定められるとおり、性能劣化も機能の喪失も許されない。試験中においては、自力で回復できるか、または、制御装置の操作によって試験の最終時点に回復できる場合に限って許される。
−性能基準C:試練中においては、機能又は性能の一時的な劣化又は喪失は、該当する装置の規格及び製造者が発行した技術仕様書の中に定められるとおり、機能が自力で回復できるか、または、制御装置の操作によって試験の最終時点に回復できる場合に限って許される。







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