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第8章 点検整備と保守上の注意
 点検整備と保守上の注意事項については、各機器の取扱説明書に詳細にわたり記載してあるので、必要のある場合は当該書によることとし、ここでは共通と思われる要点について述べる。
 
8・1 一般的保守と点検
 レーダーの性能を維持し、最良の状態で使用し、故障を未然に防ぐためには、若干の手入れを行う必要がある。また、装置の動作状態を絶えず良好に保つように注意しなければならない。作業を開始する前に以下の枠内の注意事項を十分理解してから取り掛かること。
 
作業上の注意
1. 空中線部や送受信部の保守、点検中に電源を入れられると人命にかかわるる重大な危険があるので、本船配電盤のレーダーの電源スイッチとレーダー表示器の電源スイッチを断(OFF)にして、表示器操作パネルと空中線マスト下部に〔作業中〕という注意表示をすること。できる限りスキャナモーターのヒューズを抜く等の安全対策を処置しておくこと。
2. 保守内容とその順序を十分理解してから行うこと。
3. 調整方法に記載されていない調整器は絶対に回さないこと。
4. 変調回路、送受信部およびCRT等は生命にかかわる高電圧を使用しているので十分に注意すること。従って、高電圧の部分を取り扱うときは、「電源」スイッチを「断」にしたあとしばらく放置して、各部に蓄電されている電圧を完全に放電させること。特にCRTは高圧キャップを陽極から外し、アースリードを用いてCRTの陽極と高圧キャップ電極に蓄積された電荷を表示器筐体(アース)等に接地し、残留電荷を放電させること。
5. 高出力のレーダー送信波を近距離で浴びるのは人体に有害である。レーダー装置が動作中は空中線に近づかないこと。
6. マグネトロンの固定ボルトを緩めるときは、なるべく非磁性体の工具を使うこと。やむなく鉄製の工具を使う場合は、工具がマグネトロン本体にあたらないように注意して作業すること。
7. 各ねじ類の緩みに注意して増し締めし、室外部分は防水について十分に配慮すること。
 
(1)箱体、機内の清掃
 各ユニットの箱体のほこり、ごみ等はできるだけ乾いた布で清掃すること。特に通気口は綿ごみ等で目づまりを起こさないように電気掃除器等で吸い取り又は吹き飛ばしながら柔らかい筆等で清掃をする。特に端子盤や部品密度の高いところに綿ごみが付いたら入念に取り除き、汚れているところはアルコール等で拭い取る方がよい。また、高圧を使用しているブラウン管の周辺やマグネトロンの周辺は細かいごみが付きやすいので、入念に清掃する。
(2)プリント基板の点検
 プリント基板は動作点検のほかに、プリント基板面や部品のリード線等に腐食や破損がないかを点検する。
(3)ねじの増し締め
 端子盤のねじ、部品取付ねじ等にゆるみがないか点検し、必要があれば増し締めを行う。また、ヒューズホルダーに緩みがないか点検する。
(4)結線と接栓類の点検
 機内接続用電線、接栓及びユニット間の規格電線等を点検し、絶縁不良や断線の原因となるものはないか調べる。
(5)湿気の多い場合の点検
 高圧回路においては、ほこりが空気中の水分を吸収して、放電事故を起こすことがある。これを防止するにはほこりを取るのが第一であるが、空気中の湿気が高いと思われるときはレーダーに電源を入れ放しにして乾燥させるよう心掛けた方がよい。点検により水滴を見つけたり、部分的に水をかぶったときは乾いた布で十分に拭き取り、電気掃除器で空気を吹き付けて乾燥させ、各部を点検しながら通電する。
 また、定期的に実施する保守作業と点検間隔を以下の表8・1にまとめて示す。
 
表8・1 定期的に実施する保守作業と点検間隔
点検間隔 点検項目 点検および保守の方法 備考
3〜6ヵ月    空中線部取付ボルト・ナットの腐食及びゆるみ 空中線部の取付ボルト・ナットは潮風・雨にさらされるので腐食しやすく、また、振動によりゆるんだり折れたりすることがあるので点検する。 腐食が進む前にボルトナットを交換することが望ましい。ボルト・ナットを交換する際は防食シール剤を全体に塗布すること。
輻射面の汚れ 塩分、油、塗料等が輻射面に付着していないかどうか点検する。これらが付着していると、電波の減衰・反射が起こり感度を低下させる。柔らかい布に水を湿らせて軽く汚れを拭き取るようにする。
1. 輻射面はFRP製なのでガソリン、ベンジン、ケトンのような溶剤は使用しないこと。
2. 空中線は軽合金製なので付着した氷等を取り除くには、木槌またはプラスチックハンマーを使用する。金づちは使用してはならない。
空中線端子板のねじのゆるみ 空中線部筐体のカバーを外し内部に取り付けられている端子板のねじの締め付け具合を点検する。
空中線部カバーのパッキンを点検する。
 
指示部表面の汚れ ブラウン管の表面が汚れると画像が暗くなり感度低下の場合と同様の症状となる。ブラウン管の表面は日光、照明等による反射を抑えるため特殊な処理をしているので充分注意しながら柔らかい布で汚れを拭き取る。 汚れを拭き取る場合にはガソリン、シンナー等の使用はさけ、ポリケアー(帯電防止剤)等を使用するとよい。
6ヵ月〜1年  端子板のゆるみ、ソケット・コネクタ類の接触不良 各ユニット内の端子板のねじの締め付け具合、プリント基板のプラグとジャックの接触状態の良否を点検する。 接触不良が発生した場合には、接点復活剤の使用、研磨によって応急処理することもできるが、なるべく良品と交換することが望ましい。
ブラウン管高圧部付近 ブラウン管は高電圧が加わるので絶縁部にほこりが付着すると絶縁不良となることがある。 アノードキャップの金属部やリード線の絶縁皮膜が破れているときは危険なので、必ず交換する。
なお、不注意にアノードキャップを引き抜くとキャップ内のピンを壊すことがあるのでむやみに触れないこと。
6ヵ月〜1年 アンテナ駆動ギヤー アンテナ駆動ギヤーのグリース量をチェックする。 グリース切れの場合は補充する。


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