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船舶電気装備技術講座 〔電気艤装設計編〕 (中級)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導等
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


2.3 配電装置
2.3.1 配電方式
(1)標準配電電圧及び周波数
 配電電圧は表2.11に示すものを標準とする。
 
表2.11 配電電圧の標準
注(1) ただし、船舶設備規程によれば照明への供給電圧は探照灯、投光器、集魚灯を除き150V以下であることに注意しなければならない。
(2) 小型船舶とは総トン数20トン未満の船舶をいう。また、小型漁船とは総トン数20トン未満の漁船をいう。
 
 標準周波数は60Hzであるが、国によっては50Hzが採用されている。
 一般に船内電源としては動力用は440V、電灯用は100Vを採用しているが、これに対する発電機の定格電圧は450V又は445Vとし、船の大きさによって決定する。
 100Vは変圧器によって降圧されるが、変圧器二次側の電圧は、一次側のタップ(JEMでは450V、445V、440V)を切換えることにより調整出来る。
 外国船においては、その国の陸上配電電圧を基に決められているので、上記のほか、欧州系では動力用380V、米国系では電灯用120Vなど異なった電圧が採用される場合がある。
 欧州系では三相4線式が採用される場合があり、動力用は380Vとし、電灯用は変圧器を使用しないで中性線電圧を使用するので220Vとなる。この場合、一般には50Hzの周波数が採用されている。
(2)配電方式
 配電方式はその系統の使命と重要度ならびに経済性を重視し、次の諸点に留意して選定しなければならない。
(a)給電の持続が連続的であり、信頼度が高いこと。
(b)安全であること。
(c)操作が簡単容易であること。
(d)電路の故障時、他の健全な回路に悪影響を及ぼさずに、ただちに、故障回路を分離できること。
 配電方式は一般に船体帰路方式は認められず、絶縁式である。
 配電方式には定電圧方式と定電流方式があるが、後者はほとんど採用されない。また、分岐方式には樹枝状式と環状式があるが、前者が広く採用される。
(a)樹枝状配電方式
 図2.3に示すように母線から配電線が樹枝状に分布している方式であり、特徴としては次の諸点が挙げられる。
 
図2.3 樹枝状配電方式
 
(i)電線使用量が少ない。
(ii)保護装置の数が少ないので保守が容易である。
(iii)負荷の増設が簡単である。
(iv)設備費が安い。
 しかしながら、図2.3の例では、配線用遮断器がa、b、cと縦続接続されているが、この場合、aとb、bとcの保護協調は一般にとりにくいから、遮断器メーカーにこの点照会する必要があろう。
(b)環状配電方式
 環状配電方式は図2.4に示すように、母線を環状に配置し、遮断器や補助配電盤などを適当に配置して、これから給電する方式で信頼度が高いので大型船などで採用される。
 
図2.4 環状配電方式
 
 この方式の特徴としては、次の諸点が挙げられる。
(i)樹枝状配電方式に比べて信頼度が高い。
(ii)電圧変動や電力損失が少ない。
(iii)保守が複雑。
(iv)樹枝状配電方式に比べて設備費が高い。
(3)重要な設備(負荷)
 船の重要な設備とは一般に船の安全性および居住性に直接関係ある設備であり、これらの設備に対しては、本船に適用する規則により、配電、回路の保護などの面においても種々の要求があるので、この点充分注意して設計しなければならない。
 重要な設備の範囲は適用する規則により具体的には若干異るが、船舶設備規程で規定している重要な設備を次に示す。
(a)船舶設備規程(船舶検査心得174.3)
 「船舶の安全性又は居住性に直接関係のある電気機械及び電気器具」とは、次のような設備に使用するものをいう。
(1)船舶の推進に関係のある機関(機関規則心得附属書〔1〕「用語の定義」参照)
(2)セルモーター
(3)昇降設備
(4)端艇揚卸設備
(5)非常消化ポンプ
(6)水密戸開閉装置
(7)自動スプリンクラ装置
(8)高圧ガス圧縮機
(9)通風機(危険物ばら積船ポンプ室等、機関区域及び居住区域用)
(10)航海用具
(11)船内照明設備(集魚灯等業務用に用いられるものを除く。)
(12)無線電信装置(義務船舶局の場合に限る。)
(13)固定式イナート・ガス装置
(14)暖房機
(15)冷房機
(16)サニタリーポンプ
(17)飲料水ポンプ、造水機
(18)汚物処理機
(19)レンジ、電気炊飯器等の調理器具
(20)(1)〜(19)に揚げる設備に給電するための発電機、蓄電池及び変圧器
 船舶機関規則心得〔附属書(1)〕による船舶の推進に必要な又は関係のある補機は次のとおり規定されている。
 
24 第1種補機(船舶の推進に必要な補機)
 次のいずれかに該当する補機
(1)主機、主要な補助機関、推進軸系又は推進軸系に動力を伝達するための装置のための補機にあっては、次に揚げるもの
(i)潤滑油供給ポンプ
(ii)冷却水ポンプ、冷却油ポンプ及び循環ポンプ
(iii)燃料油供給ポンプ
(iv)復水ポンプ及び真空ポンプ
(v)燃料油清浄機及び潤滑油清浄機(主機の運転に必要なものに限る。)
(vi)制御用又は始動用の油圧ポンプ及び空気圧縮機
(2)主ボイラ又は主要な補助ボイラのための補機にあっては、次に掲げるもの
(i)給水ポンプ (ii)燃料ポンプ (iii)強制給排気送風機
(3)ビルジポンプ
(4)その他管海官庁が指示するもの
25 第2種補機(船舶の推進に関係のある補機)
 次のいずれかに該当する補機
(1)第1種捕機
(2)バラストポンプ及び消火ポンプ(非常用のものを除く。)
(3)操船補機(操舵装置等をいう。)、甲板補機(揚錨機、係船機等をいう。)及び荷役装置、冷蔵設備等に用いるもの
(4)通風機(機関室、ボイラ室、タンカーの貨物油ポンプ室等の取扱者の健康に障害を与えるガス又は火災の危険性を有するガスが発生するおそれのある場所に設置するものに限る。)
(5)その他管海官庁が指示するもの
 上記の各重要負荷への給電は主配電盤(又は非常配電盤など)から、それぞれ単独回路とすることが望ましい。もし、集合始動器盤などから分岐する場合は、1号機、2号機などの同一用途の負荷は、他の集合始動器盤から分岐することが望ましい。
 前にも述べたように、重要負荷への給電に対する各規則の要求は異なるが、例えばABSのように重要負荷への給電回路の保護協調に対して、後述の選択遮断方式を厳密に適用することが要求されるような場合には、現在の配線用遮断器(MCCB)の特性では一般に図5の樹枝状配電においては選択遮断の実現は困難なため、重要な負荷への給電は主配電盤(又は非常配電盤など)から単独回路とせざるを得ない場合がある。
 
(4)二重給電切換方式
 重要な負荷の一群又は個々の負荷に対して、それぞれ二重の給電回路を設け、一方の給電回路が故障の場合に他の回路に切換える方式を二重給電方式という。非常電源がある場合には、その非常母線に対しては、その電源部も対象に含めて自動切換が行われる。
 船舶設備規程によれば総トン数1,600トン以上の外洋航行船では、舵取電動機への給電回路は2組としなければならず、そのうちの1組の回路は非常用配電盤を経由して差し支えないことになっている。また総トン数が1,600トン未満の外洋航行路でも舵取装置の動力源が主、補ともに電力のみである場合は2回路での給電が必要である。また、航海灯への給電回路も二重とする必要がある。
 図2.5は、非常用発電機がある場合の非常母線に対する切換方式の一例を示す。
 
図2.5 二重給電切換方式







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