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2.4.4 始動器及び制御器
注:JEM1286:85(船用交流電動機用始動器及び制御器)を参照すること。
(1)構造及び性能
(a)始動器及び制御器の構造及び性能については、設備規程第280条から第284条までの規定による。
 
(制御器)
第280条 制御器は、これに使用する回路の電圧に適合したものであり、確実に電動機を起動し、及び停止し、並びに使用目的に応じて逆転し、又は速度を制御することができる性能を有するものであり、かつ、必要な安全装置を備えたものでなければならない。
第281条 制御器の損傷又は磨耗を生じ易い部分は、容易に取り換えることができる構造のものでなければならない。
第282条 起動段階をもつ起動器は、電動機運転中に過負荷のため自動的にしゃ断し、又は停電した場合に、正規の起動状態にもどるもの又は正規の起動状態にもどさない限り起動できないものでなければならない。
(準用)
第283条 第223条から第225条までの規定は、制御器について準用する。
(制御用抵抗)
第284条 制御用抵抗は、周囲の燃焼し易い物が火災を生じないように適当な保護を施したものでなければならない。
 
(b)始動器及び制御器の保護形式については2.2.2による。
(c)始動器及び制御器は火花(アーク)により付近に損傷のおそれのある場合は、これを防止する処置をする。
(d)始動器には電動機の過負荷保護装置を備える。ただし、操舵装置用のものを除く。
(e)0.4kW以上の電動機には、停電により電動機が停止したのち、その状態で再始動しないような手段を講じておくこと。ただし自動運転を行うもので、運転の安全性が十分確保されているもの、及び、操舵装置用のものを除く。
〔説明〕交流始動器について
(i)始動方式は、全電圧じか入始動と、減電圧始動とがある。発電機の出力から一概には定められないが、大体、発電機容量の約1/8以上の電動機を減電圧方式としている。
 減電圧方式には、始動補償器方式とY-Δ(スターデルタ)方式がある。
(ii)不足電圧保護装置については、不足電圧解放UVR(LVR)と、不足電圧保護UVP(LVP)とある。
U.V.P・・・停電などにより、電源が不足電圧、無電圧になり、運転中の電動機が停止したのち、電源が復旧しても、電動機は自動的に運転しないので、改めて手動により始動してやるもの。
U.V.R・・・前記と同様に電動機が停止したのち、電源が回復すると自動的に運転するもの。
 
電源状態 機器例
U.V.P 停電→復旧 自動運転を要しない補機
U.V.R 操舵機、重要補機の一部及び自動運転を要するもの
 
(iii)始動器は、0.4kW以下のものはナイフスイッチ(ヒューズ付)、それを超えるものは、電磁接触器を使用するのが普通である。
(iv)始動器用電流計を要するものの例を次に示す。
(イ)直接電気駆動の甲板補機
(ロ)操舵機
(ハ)油清浄機
(ニ)ターニングモータ
(ホ)発電機容量に対して比較的容量の大きい機器
〔説明〕不足電圧保護装置について
 交流始動器の不足電圧保護装置には、前述のとおりUVPとUVRがあるが、始動器の主回路の開閉機構は、0.4kW以下はモータブレーカ又は、ナイフスイッチ、それを超えるもの、すなわち0.75kW以上は、電磁接触器を使用するのが普通であるので、ナイフスイッチ形のものは、構造上UVRとなってしまうから、0.4kW以下でUVPを必要とする場合は、電磁接触器形とする必要がある。
(f)始動用抵抗器は、船の振動、動揺などに十分耐え、海水及び湿気に対して優れた耐食性をもち、かつ、界磁抵抗のように、一定の抵抗値を保つ必要がある場合には、その抵抗体に著しい変化の起こらないものを使用する。
(2)主要電動補機の制御装置
(a)燃料油装置のポンプ及び貨物油ポンプを電動機で駆動する場合には、設置してある場所、又はその付近が出火した場合、設置場所以外の容易に近づける場所から、電動機を停止できるように装置しておく必要がある。
(b)操舵装置電動機用始動器はUVR(LVR)とし、船橋から遠隔発停できなければならない。なお操舵装置については上記のほか各種の警報、表示が要求されるので注意のこと。
 詳細については、2.4.3項重要補機に記載の船舶設備規程(第140条〜第145条、第285条及び第285条の2)を参照のこと。
(c)揚貨装置用制御装置については、とくに下記((i)〜(iii))に留意する。
(i)揚貨装置用制御器は、手動、又は電磁式の可逆主回路制御方式のもので、もし、巻下しの条件に適合する負荷制御装置をもたない場合には、発電制動、又は回生制動を行なえるようにする。
 なお、貨物を中途で止め、又は機械を急停止するための電磁ブレーキを備える必要がある。
(ii)揚貨装置用制御器には、近接した位置に電路遮断器を備える必要がある。
(iii)揚貨装置用制御器には、過負荷防止のための安全装置を備えているか、又はこれに準ずる安全のための装置を講じておく必要がある。
(d)揚錨装置及び係船装置用制御装置は、手動、又は電磁式可逆主回路制御によるもので、なるべく自動停止性をもち、揚錨装置用の場合には、巻下しの場合、発電制動が行なわれるものが望ましい。
 なお、アンカーを中途で止め、又は機械を急停止するための電磁ブレーキを備える必要がある。
(e)通風装置等(ボイラ用送風装置を含む。)の制御装置については、下記による。なお2.4.3の(2)項参照
(i)機関区域に使用する電動通風装置(ボイラ用送風装置を含む。以下同じ。)は、機関区域の内外のいずれにおいても、これを停止できるものとする。
(ii)機関区域以外で使用する電動通風装置は、それぞれ使用する場所の外部から、これを停止できるものとする。ただし、船舶設備規程では旅客船以外の国際航海に従事しない船舶の電動通風装置は、調理室及び貨物区域に使用するものだけでよいと規定されている。
(iii)旅客船の電動通風装置のうち、機関区域、貨物区域、又は制御場所に使用する電動通風装置以外のものは、できるだけ離れた二つの場所のいずれからも、これをすべて停止できるものとする。
 ただし、国際航海に従事しない旅客船、管海官庁が承認したものは、この限りでない。







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