3.2.1 主電源装置
-1. 3.1.2(1)に該当するすべての電気設備に電力を供給するために十分な容量の主電源装置が設けられなければならない。この主電源装置は、少なくとも2組の発電装置より構成されたものでなければならない。
-2. 前-1.の発電装置の容量は、いずれか1組の発電装置が停止した場合においても、船舶の正常な稼働状態における推進及び安全を維持するために必要な電気設備へ給電できるものでなければならない。
また同時に、少なくとも調理、暖房、糧食用冷凍、機械通風、衛生水及び清水のための各装置を含む最低限の快適な居住状態を確保するものでなければならない。
-3. 主電源が船舶の推進及び操舵に必要な場合、主電源設備は、運転中のいずれか1台の発電機が停止した場合においても、船舶の安全を維持するために、推進及び操舵に必要な機器への給電を維持するか、又は速やかに電源を復旧できるように設備しなければならない。
-4. 主電源装置の構成は、推進機関又は推進軸系の回転数及び回転方向に係わりなく3.1.2(1)に該当する電気設備の運転を維持できるものでなければならない。
-5. 発電装置は、いずれか1台の発電機又はその原動力装置の稼働が停止した場合においても、残りの発電装置によりデッドシップ状態から主推進装置を始動させるために必要な電気設備を運転できるようなものでなければならない。この場合、非常発電機単独の容量又は他のいずれかの発電機との合計容量が、同時に3.3.2-2(1)から(4)の規定により要求される電気設備に対しても十分に電力を供給できる場合には、デッドシップ状態からの始動に非常電源装置を使用することができる。
(検査要領)
H3.2.1 主電源装置
-1. 規則H編3.2.1-1.の規定に定める2組の主発電装置のうちの1組として、主機に原動力を依存する発電装置(以下、軸発電装置という)を備える場合には、次によること。
(1)船舶の停止状態、クラッシュアスターン時を含むすべての操船状態及び荒天時を含むすべての航海状態において、軸発電装置の電圧変動及び周波数変動は次の表H3.2.1-1.の状態に維持されること。
(2)軸発電装置は、主発電装置を構成する他の発電装置を使用することなく主機を始動できる設備を有し、かつ、(1)に掲げるすべての操船状態及び航海状態において、規則H編3.2.1-2.に規定する発電容量を確保できること。
(3)運転中の発電装置のうちいずれか1台が停止した場合には、自動操作により45秒以内(ブラックアウト時に主機が停止しないことが条件となる)に他の主電源装置に切り換えられること。この場合、船舶の安全を維持するためにH3.2.1-5.による措置を講じること。
(4)主機の船橋制御装置を有する船舶にあっては船橋に軸発電装置の運転状態を表示する装置を設けること。
(5)船舶の速度制御(前進、停止、後進)に伴って軸発電装置を制御する必要がある場合には、当該制御は主機の制御に連動させると共に、主機の制御を行っている場所からも手動により行い得るものであること。この場合、制御に伴って給電が中断してはならない。
(6)軸発電装置は、船内負荷の選択遮断を考慮した上で、遮断機を作動させるために十分な短絡電流を供給できるものであること。
(7)主母線短絡に対して、軸発電装置の保護を行うこと。なお、軸発電装置は短絡事故の回復後、速やかに使用できるものであること。
-2. 規則H編3.2.1-1.に定める2組の主発電装置に加えて軸発電装置を備える場合には、次によること。
(1)あらかじめ計画された運転範囲において、軸発電装置の電圧変動及び周波数変動は次の表3.2.1-1.の状態に維持されること。
(2)あらかじめ計画された運転範囲において、軸発電装置は規則H編3.2.1-2.に定める発電容量を確保できること。
(3)軸発電装置が停止した場合及び周波数が(1)に掲げる値を超えた場合には、自動操作により45秒以内に主発電装置に切り換えられること。この場合、船舶の安全を維持するためにH3.2.1-5.による措置を講じること。
(4)主機の船橋制御装置を有する船舶にあっては、次によること。
(a)ブラックアウトを回避してH3.2.1-3.に掲げる機器の運転を継続するための措置を講じるか、又はそのための手順の確実に実行できる体制を確立しておくこと。
(b)船橋には、あらかじめ計画された運転範囲を明示し、かつ、軸発電装置の運転状態を表示する装置を設けること。
(5)軸発電装置は、船内負荷の選択遮断を考慮した上で、遮断機を作動させるために十分な短絡電流を供給できるものであること。
-3. 規則H編3.2.1-2.において、「船舶の正常な稼働状態における推進及び安全を維持するために必要な電気設備」とは、次の設備をいう。
(1)船舶の推進及び操舵のための電気設備であって、例えば次の用途に使用されるものをいう。
(a)操舵装置
(b)可変ピッチプロペラ変節ポンプ
(c)主機及び発電機付属機器(掃除空気送風機、燃料油供給ポンプ、燃料弁冷却ポンプ、潤滑油ポンプ、冷却水ポンプ等)
(d)ボイラ付属器(送風機、給水ポンプ、復水ポンプ、噴燃ポンプ等)
(e)推進用スラスタ(付属機器を含む)。また自動船位保持装置(DPS)用のスラスタは推進用スラスタとして取り扱う。
(f)電気推進用電気設備
(g)前(a)から(f)の用途に給電する発電装置
(f)前(a)から(f)の用途に使用される油圧ポンプ
(i)燃料油粘度調整装置
(j)前(a)から(i)の用途に使用される制御、監視及び安全装置
(2)船舶の安全を維持するための電気設備であって、例えば次の用途に使用されるものをいう。
(a)揚錨機
(b)燃料油移送ポンプ
(c)潤滑油移送ポンプ
(d)燃料油加熱器
(e)始動空気圧縮機
(f)ビルジポンプ、バラストポンプ、ヒーリングポンプ
(g)消化ポンプ
(f)機関室通風機
(i)危険区域の安全確保に必要な機器
(j)航海灯、航海装置、信号灯
(k)船内通信装置
(l)火災探知装置
(m)照明装置
(n)水密戸閉鎖装置
(o)前(a)から(n)の用途に給電する発電装置
(p)前(a)から(n)の用途に使用される油圧ポンプ
(q)前(a)から(p)の用途に使用される制御、監視及び安全装置
-4. 規則H編3.2.1-5.及び3.3.2-3.において、デッドシップ状態から主推進装置の運転に至る手段は、検査要領D1.3.1-3.による。
-5. 規則H編3.2.1-3.に規定される推進及び操舵に必要な機器への給電を維持するか、又は速やかに電源を復旧するための設備は次による。
(1)通常1台の発電機によって電力を供給する船舶にあっては、運転中の発電機の電力が喪失した場合に船舶の推進及び操舵を確保するのに十分な容量の予備発電機を自動的に始動して主配電盤に自動的に接続し、かつ、推進と操舵に必要なポンプ等の順次始動を含めた自動再始動によって、船舶の推進と操舵を可能とする装置を設けること。
(2)通常2台以上の発電機を平行運転して電力を供給する船舶にあっては、これらの発電機のうちの1台の発電機の電力が喪失した場合、残りの発電機が船舶の推進と操舵を可能とするように設備すること。(規則H編2.3.6参照。)
(3)その他本会が適当と認める装置又は設備。
表H3.2.1-1. 軸発電装置の電圧及び周波数の変動
変動の種類 |
変動 |
定常時 |
過渡時 |
電圧変動 |
±2.5% |
-15〜20%
(1.5秒以内に±3%) |
周波数変動 |
±5% |
±10%(5秒以内) |
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