高橋(史) ありがとうございました。予定の時刻になっておりますので、最後に一言ずつお話しいただいて、今日の皆様のお話を受けて、最後に上田知事からもメッセージをいただければと思います。お一言ずつお願い致します。では、鈴木先生からお願いします。
鈴木 はい。今日のテーマは「現場からの教育改革」ですけれども、その直接的狙いは、まさに教師です。いよいよ団塊の世代が退職しますと、また新たに教師の大量採用時代が来るということですけれども、そういう教師になろうとしている人間に対して、今、言われた親学という観点の研修をぜひしっかりやってもらいたい。そういう中で、親と対等に渡り合えるような教員ができてくるのだろうと思いますので、今後の在り方についての提言ということでお話を申し上げました。
高橋(史) ありがとうございました。それでは高橋さん、お願いします。
高橋(福) 私は学校法人の理事を三つやっていて、このあいだは本庄高校の諮問委員というので、学校の教室を見て歩きました。県でやっているのでしょう?商工会議所に二つ割り当てが来ましたので、会頭の私が本庄高校、副会頭が北高校と回っているのですが、一生懸命やっています。先生方は頑張っている。ただ、残念ながら、話の下手な人が多い。(笑い)いくらいい内容でも、話が下手では生徒は聞かないと思うのです。だから、先生は寄席でも行って、もっと話術の勉強をしてもらいたい。(笑い)そうでないと、生徒がかわいそうです。どうせ難しいことを教えているのだから。
ちょっと1、2分、言いますと、私が理事をしている東高校では、宇宙中継で代ゼミとか河合塾の一流の先生の数学や英語のあれを画面でやっているのです。時間が合わないのはビデオでやっています。ものすごくうまいです。「あんなのはどこにあるんだ」と思って。「高橋さん、見てくれ」というので見ましたら、1分間ぐらいは授業に全く関係ない、つまり落語で言うと枕の話をするのです。それで、さーっと本論に入っていく。その巧みさは一流の落語家だってかなわないです。私立学校は、そういう超一流の予備校の先生と競争しているのだから、どんどんうまくなる。本庄高校の校長先生は実に熱心なので、これを校長先生に言ったら、「いや、うちのほうでもやっています」と言っていました。でも、やっている量が違う。少ないのです。ですから、ぜひ寄席に行って勉強してもらいたいと思います。(笑い)
高橋(史) ありがとうございました。(拍手)では、長谷川先生お願いします。
長谷川 最後に、実は私自身、親であると同時に、教師を30年間やってきました。高橋社長には申し訳ないですが、私は学生たちをお客さんと思ったことは一度もないです。ただ、私がいつも心掛けているのは、自分自身がチンパンジーの赤ちゃんになったつもりで、自分が面白がって目をきらきらさせて、「哲学って、こんなに面白いんだよ」と言って引っ張っていくということです。これを30年間、一生懸命やってきたつもりです。それをやっていますと、今の寄席の話ではないですけれども、ちょっとつまらなそうな顔をしている子がいますと、そいつの目を輝かせてやろうと、おのずとファイトがわいてくるのです。それで、とにかく30年間やって参りました。私が考えるところ、多分、教師魂というのはどこに行っても、みんな一人一人、それだと思うのです。実は、私自身は、「そういう教師を評価できるものならしてみろ」という気持ちでおります。(拍手)
高橋(史) ありがとうございました。それでは上田知事、よろしくお願い致します。
上田 何か運の悪い人間みたいです。皆さんそれぞれ格好いいことを言ったあとに、うまくコメントができなければ、つらいですね。(笑い)
いくつか原理の部分と技術の部分の話をされたと思うのです。原理は、つまり教えるほうも学ぶほうだと。また、学んでいる人たちも教えているのです。
私は、国会議員時代は朝早く家を出て、国会に行ったり、駅頭に行ったりしていましたが、知事になってからは、朝は一緒に飯を食べる時間が多くなって、子供たちに生まれてもらって本当に良かったなと思っています。もし子供が生まれていなかったら、どうだったのかと思ったりしながら・・・。
結局、私は、すごい陰謀を考えていました。強制的に親を尊敬するようになるようにということで、小さい時から、おじいちゃんおばあちゃんをネタにしておりました。朝、起きたら「おじいちゃん、おばあちゃん、おはようございます」。もういないのです。写真と位牌だけです。「おじいちゃん、おばあちゃん、いただきます」、「おじいちゃん、おばあちゃん、おやすみなさい」と言って、われわれ親に権威がないもので、いかに親が偉いかということを位牌を通じて一生懸命・・・。(笑い)「おじいちゃん、おばあちゃん、ごめんなさい」と言いたいですが、とにかく、それをやっておりました。私と私の妻がおじいちゃんおばあちゃんを大事にする。お土産をもらったら、お供えする。給料の明細書を供える。そうすることで、いかに親が偉いかということを学ぶだろうと思って、陰謀を働いておりましたけれども、このごろ分かったのは、そんなことをしなくても、子供がいることにもっと感謝すれば、多分、こちらにも感謝したのだろうと。そういうことを思うようになってきました。
ちょうど娘が幼稚園の教師をしているのですが、毎日、帰ってきては何か作業をしています。行事があるたびに、いろいろなものを作っています。クリスマスがあれば、クリスマスの道具を作ったり。私は、それをずっと見ていまして、「ああ、良かったな」と。子供がこうして大きくなる時に、自分が何か一生懸命教えたかというと、そんなに教えた気はしていない。その割には育ってくれてありがとうと。父の日には、ちゃんとプレゼントをしてもらったり、こちらは子供の誕生日を忘れているのに、向こうは覚えている。だから、これは感謝しなければいけないのだなと。
先生のほうから先にあいさつしろというのは、多分、こういうことなのかなと。だから、教えるほうは学ぶ努力をする。子供に感謝をする。生徒に感謝をする。「給料をいただいてありがとう。君らのおかげで食える」という関係になれば、きっとうまくいくのかなと。
だから、本当にそういう気持ちになるようなシステムを一生懸命作っていけばいいのではないかと思って、私は「教育長、どうですか。思い切って予算を付けますよ。子供たちにむちゃくちゃ体験させたらどうですか。体験の機会がないでしょう」と。今度、埼玉の県立高校では体験プログラムをむちゃくちゃやろうと。むちゃくちゃやろうとしても、受け入れてくれないとできないわけです。また、教育委員会は少しへっぴり腰で、「知事部局で受け入れ先を探せ」という話だったので、それは拒否しました。そうしたら、自分たちで探すそうです。やはり探す過程がまた教師の学ぶ過程の一つだと思うのです。
自分が謙虚にしているわけではないですが、(笑い)そういうふうに謙虚になるしかない。そういうことをやっていけば、これはまたうまくいくのかなと。いろいろな原理があって、技術的なことがあります。原理がどこにあるかということをもう1回しっかり勉強する。そして、それこそ寄席に行き、技術を学ぶ。そういうことではないかなと。多分、高橋先生の師範塾というのは、魂の部分、心の部分の原理を学び、そのうえで技術もしっかり学ぶ。それぞれがそういうことに本気で取り組んでいかないと、大変なことになる。
どれもこれも、絶対的に「これが一番だ」とか「これが優先順位」というのはないような気が致します。高橋先生は現場をずっと回ってこられて、親学が根本治療だと思われました。私は現場を回っていませんから、そこまでには至っておりません。だから、とりあえず「プロである教師は、それでおまんまを食っているわけですから頑張ろうよ」というご提案を教育委員会のほうにさせていただいています。そして、また教育委員会や教育局のメンバーの皆さんが「そうか。しょうがないか。いろいろな問題はあるけれども、まずわれわれが頑張ってみよう」ということで、頑張っていただけることになっています。ただ、みんなそうですけれども、われわれは本当にタコつぼになるのです。昨日、私は埼玉県下のある高校へ行ってきました。校長先生、教頭先生、5、6人の先生方が迎えてくださって、教室を回る前にちょっといろいろな打ち合わせをしていましたけれども、1人の教頭先生がスリッパを履いていました。間違いなく客を迎える態度ではありません。自分がスリッパを履いていることを忘れているのです。やはり人を迎えるときには・・・。経済同友会の社長さんたちがいますけれども、知事室に表敬訪問されるときに、もし私がスリッパで迎えたら、「この知事は何なんだ」と言われますよね。気付いていないのです。この教頭先生は、相手が子供だから、多分なめているのです。この話を聞いたら明日は震えているでしょう。(笑い)どの高校かすぐ分かることですから、「失敗したな」と。でも、本当にそういうことだと思います。その仕事をしていると、タコつぼになっているのです。
おととし、県の2003年の主な事業の見直しをやっていたのです。その課では、やめようという話が5パーセント出ました。20本持っていったら、1本だけやめようという話です。ところが、ほかの課の連中を入れると、40パーセントはやめようという話になるのです。すぐにやめられるかどうかは別として。ほかの人の意見を聞くと、それだけ変わるわけです。そして、5パーセントと言った人たちが、それに納得しているわけです。では、なぜ自分たちで40を見つけきれなかったのか。そういう部分は、それぞれの職場にたくさんあると思います。だから、いかに幅広くいろいろな意見を聞くかと。
大体、高橋先生のことを批判している人は、高橋先生の話を聞いたことがない。(拍手)教科書も読んだことがないのです。面白いですね。私の所に「高橋先生を任用するな。委員にするな」と言う県会議員の方が4人まとめて来られました。「何で?」と言ったら、「戦争を賛美するような教科書にかかわった人だ」と言う。「どの部門が?」と聞いたら、「読んでいない」と言うのです。(笑い)「読んでいないで何で分かるの?」と言ったら困ってしまって、「人がそう言っている」と言う。「あなたたちは議員なんだから、『人がそう言っている』ではなくて自分で読みなさい」と申し上げました。事ほどさように世の中には勘違いが多いのです。まさに教師はリーダーです。率先垂範して人にリーダーシップを持っていかなければいけない人たちです。私は、世の中のリーダーたる者は、それぞれ幅広にいろいろな体験をする努力をしてもらわないと駄目だと思っています。それがとりあえずの結論です。(拍手)
高橋(史) ありがとうございました。皆さん、いかがだったでしょうか。この会場は9時にすべてを明け渡さなくてはいけません。時間の制約上、皆さんのご意見やご質問をいただく時間がございません。「俺にも一言しゃべらせろ」という目をしている方が何人もいらっしゃるようですが、(笑い)それは、また今度の機会にさせていただきたいと思います。今日はパネリストの先生方も、じゅうぶんにお話しいただけなかったかもしれませんが、このフォーラムで知事の率直な意見をお伺いすることができ、また意見交換をできましたことは画期的なことではなかったかと思います。
平成18年度も、こういうフォーラムを3回ほど予定しておりまして、親と教師の代表と知事が直接語っていただくような企画もしたいと思っております。
教育界の常識と一般界の常識は、ずれております。このずれを正すことが教育改革だと私は思っております。「1人からの教育改革、現場からの教育改革」を合言葉に致しまして、日本一の教育立県・埼玉の実現を目指して、埼玉から全国に熱いメッセージを送っていきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
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