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7.6 鋼船及びアルミ船での接着試験終了後のコメント
7.6.1 接着剤について
(1)接着剤全般について
 今回の試験から見て全般的に2液エポキシ樹脂系接着剤の評価が高かった。
(2)SGAについて
(a)母材・部材に対する基本的な接着性に不安がある。
(b)クリアランスに弱い(今回は特にクリアランスのある部位が多かった)
(c)硬化が早いので急いで塗布・貼り合わせの段取りが難しく作業に追われる。
(d)硬化が早いので急いで配線工事をする場合にはすぐれている。(今回の就航中の船舶での接着工事ように)
(e)計量・混合が簡単なので、準備(部材の手配・位置決め)と作業者手配(塗布する人、貼り付ける人、テープで固定する人)を手順よく行えば能率よく接着できる。
(f)SGAの場合母材の貼り付ける時滑って固定が難しく感じた。
(3)エポキシ樹脂系接着剤について
(a)計量・混合手間はあるが混合後は作業にゆとりがある。また、計量・混合・塗布作業を全て船外で行い、接着現場へは塗布される部材のみを持ち込めば作業能率が上がると思われる。
(b)均一に塗り広げて貼り合わせるため作業のバラツキが少ない。
(c)SGAほどクリアランスを問題としない。
(d)母材・部材に対する接着性が安定している。
(e)硬化に時間がかかるので、急いで配線工事を行う場合は不向きである。
(f)硬化時間が長いので、作業上現場向きのように思った。
 
7.6.2 接着工法の適用について
(1)建造中における接着工法の適用は効果的ではないと考えられる。
(2)建造中の場合、電気溶接・ガス溶接等との混在作業になるため、火気に充分気を付ける必要があると考えられる。
(3)接着工法の適用は補修作業及び増設作業において効果的であると考えられる。
(4)アルミ船の場合、電気溶接による工法の場合は裏面をサンダーなどで研磨する必要があり、接着工法が適していると考えられる。
(5)火気厳禁区域だけでなく、溶接作業の合間に接着作業を行えればいろいろな場所で可能であると考えられる。
(6)火気工事の少ないFRP船には接着工法は適していると考えられる。
(7)SGAの場合は問題ないが、2液エポキシ樹脂系接着剤の場合2液の混合比や混合の具合等、正しく行わないと接着力が満足にでないが、今回の試験では前年度に接着作業経験がある作業員が担当したので手際よく実施できた。
(8)接着工法は最初戸惑うが、直ぐに慣れるので作業上は問題ないと考えられる。
(9)接着工法は電気溶接工法と比較して接着力・作業性において遜色無いと考えられるが、接着剤の使用量・価格・使用期限・硬化時間等を調査して溶接工法とのコスト面での比較検討する必要があると考えられる。
(10)接着剤が熱に全く対応できないとの確認ができたので、船舶の艤装工事において、火気工事との混在作業は不可能である。
 
7.6.3 接着工法の作業上の問題点
(1)部材と母材との接触面合わせの精度を上げる必要がある。
(2)重量の重いフラットバーを、垂直隔壁や天井部の垂直面に接着させる場合、フラットバーを縦に接着する場合にはさほど問題とならないが、水平に接着させる場合、自重で部材がずれやすくガムテープでの固定を充分にする必要がある。
(3)エポキシ樹脂系接着剤を混合する際、使用量及び作業性を充分考慮して混合する量を決めないと接着剤のロスが大きくなる。
(4)SGAは混合器の中で混合されるが、硬化時間が短いの手際よく塗布し、貼り付けを行わないと混合器内で硬化して出なくなるので注意が必要である。
(5)作業中は火気に充分に注意する。
(6)部材への接着剤の適正に塗布するためには、経験による慣れが必要である。
(7)フラットバーを垂直壁に接着する時、フラットバーの長手方向を縦に接着する場合には、フラットバーの下方へのずれだけに注意すればいいが、長手方向を横にして接着する場合には、下方へのずれに加えて自重による回転での壁面からのはがれに注意し、しっかり固縛する必要がある。
 
7.6.4 耐熱試験について所見
(1)10月26日現在では、粉体塗装・高温焼き付けは不可能であった。
(2)10月27日の耐熱試験は乾燥炉による加熱の方法が不適切であったが、後日浜崎委員の協力を得て粉体塗装を行ったところ、接着状態が良好であったので、製品安全評価センターに依頼して引張り試験を行うこととした。その結果は他の環境試験とほぼ同等の数値が得られ、粉体塗装の可能性はあると推測される。
 
7.6.5 溶接熱による影響について
(1)接着面の裏面に溶接を行った場合、接着力はなくなる。
(2)接着作業は溶接作業が完了後に行うように配慮する必要がある。
 
7.6.6 部材の磁化について
(1)接着剤の電気抵抗が高いので、部材と母材が絶縁され、それに布設した電線を流れる電流により部材が磁化されないか心配で、貼り付けた部材と母材間の電気抵抗を測定して見た。
(2)部材と母材間の電気抵抗の測定結果
(a)エポキシ樹脂系接着剤
10枚中電気抵抗が1.0Ω以下の部材 6枚
10枚中電気抵抗が10MΩ以上の部材 4枚
(b)SGA接着剤
10枚中電気抵抗が1.0MΩ以下の部材 9枚
10枚中電気抵抗が10MΩ以上の部材 1枚
 この結果から1部の部材で電気的に絶縁されたものがある。これは貼り付けの時の問題と思われるが、部材と船体の電気的接続方法についての検討が必要であると考えられる。
(3)部材がアルミの場合及び部材が鋼材でもがい装電線を布設する場合には問題はないと考えられるが、部材が鋼材でがい装なし電線を布設した場合は部材が電気的に船体に接続される事がなく、磁化される恐れがある。
 
実船での接着作業後の経過(接着状態の確認)
1. 既存の鋼船(第2しまなみ)
(a)平成17年10月28日 1回目の確認 接着状態良好
(b)平成17年11月21日 2回目の確認 同上
(c)平成17年12月20日 3回目の確認 同上
(d)平成18年 1月20日 4回目の確認 同上
2. 建造中のアルミ船(ブルーバード)
(a)平成17年10月27日 1回目の確認 接着状態良好
(b)平成17年11月21日 2回目の確認 同上
(c)平成17年12月 5日 3回目の確認 同上(引き渡し前)
(d)平成18年 1月20日 4回目の確認 同上(本船に依頼)
3. 既存のアルミ船(ニューうおしま2)
(a)平成17年10月27日 1回目の確認 接着状態良好
(b)平成17年11月20日 2回目の確認 同上
(c)平成18年 1月20日 3回目の確認 同上(本船に依頼)
4. 環境暴露試験船(第一むかいしま)
(a)平成17年10月31日 1回目の確認 接着状態良好
(b)平成17年11月21日 2回目の確認 同上
(c)平成17年12月20日 3回目の確認 同上
(d)平成18年 1月20日 4回目の確認 同上


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