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7.7 既存のFRP船を用いての接着作業等
7.7.1 予備接着試験(10月5日 写真7.7.1 予備試験参照
(1)予備試験の実施場所
(有)浜崎電機工業所の工場内 島根県 松江市下東川津町243-1
(2)試験時間及び気象状況
13.30〜14.30 天候晴れ 気温24℃
(3)出席委員(敬称略)
北澤委員、浜崎委員、大塔委員、光原委員、事務局1名
(4)接着試験等の状況
 予備試験に使用した部材・母材は次の表の通りとした。
 
母材(2個) 部材(2個) 接着場所 使用接着剤
シンク鋼板 アルミ 垂直壁面 ダイアボンドNo2700H
シンク鋼板 アルミ 垂直壁面 SG-380カートリッジ
 
予備接着作業の手順
(a)アルミフラットバーとアルミ三角台を用いて、垂直に設置した母材(SS400)にエポキシ樹脂系接着剤とSGAを用いて作業を練習した。
(ダイヤボンドNO.2700H(エポキシ樹脂系接着剤)主材20gと硬化材20g混合とダイヤボンドSGA380カートリッジの接着の度合等を練習した。)
 接着剤は主剤と硬化剤を正確に計量し混合した。圧締には粘着テープを用いた。(この一連の作業には少し慣れが必要だと思った。)
(b)SGAを用いる接着作業は、アクリル主剤と硬化剤とに分けて充填したダブルカートリッジを簡易式の手動塗布ガンに装填し実施した。この塗布ガンのレバーを引くことにより、主剤と硬化剤が塗布ガンの先に取り付けた混合エレメント(ミキサー)の中に押し出され混合される。これを接着面に塗布し接着作業を行った。
 SGA接着剤は硬化が早いので短時間に作業を行う必要があるが、圧締に注意を払う必要がなく、楽に作業が実施できる。
 予備試験終了後、FRP漁船停泊中の恵曇港に移動した。
7.7.2 FRPでの接着作業の実施(平成17年10月5日 写真7.7.2〜写真7.7.6参照
(1)実FRP船接着試験に使用したFRP船名等
船名等 山丸、小型イカ釣り漁船
昭和53年建造FRP船、長さ×幅×深さ9.96×2.07×0.5
(2)FRP船での接着作業の実施場所
松江市鹿島町恵曇港
(3)試験時間及び気象状況
15.00〜17.00 天候晴れ 気温20℃
(4)出席委員(敬称略)
北澤委員、浜崎委員、大塔委員、光原委員、事務局1名
(5)接着試験等の状況
予備試験に使用した部材・母材は次の表の通りとした。
(6)既存のFRP漁船の接着作業の概要
FRP漁船の操船場の天井、機関部隔壁に次のように接着作業を実施した。
 
部材 母材 使用した接着剤
アルミフラットバー 操船場の天井下面 ダイアボンドNo2700HとSG-380
アルミ三角台 操船場の天井下面 ダイアボンドNo2700H
アルミ小型角台 操船場の天井下面 SG-380
アルミフラットバー 機関部隔壁前方暴露部 ダイアボンドNo2700HとSG-380
 
(a)接着剤はエポキシ樹脂系接着剤とSGAを用いた。
(b)接着部材はアルミフラットバー、アルミ三角台及びアルミ小型角台を使用した。
(c)接着場所は操船場の天井FRP板下面と機関部隔壁前方暴露部とした。
 フラットバーの機関部隔壁への接着作業では、接着面(2ヶ所)の平行性はよくでていたが接着下地であるFRP面がフラットでないため、サンディング仕上げでは面当たりを上手く取ることができず、フラットバーを若干曲げて密着性を確保せざるを得なかった。
 三角台は重量の割に接着面積が小さく、丸みがあるため接着面の片側が浮いた状態で接着されてしまった。接着部分の形状または天井への仮止めの工夫が必要であった。
(7)接着作業の現状確認
 翌日平成17年10月6日の午前中(9.00〜10.30)に前日実施した接着状況を確認した。山丸操船場の天井に取り付けた三角台の接着面の面積が小さく、デコボコがあったためその接着状況は接着面が浮いた状態で接着されていた。接着としては極めて不十分な状態であった。小型FRP船の場合その接着作業は接着部の形状等を考慮する必要がある。
 また、仮止めにも事前の検討(工夫)が必要である。
 他の部材の接着状況は極めて良好であった。人力で引っ張って剥がれる状況ではなかった。今後の環境による劣化試験にも耐えうるものと考えられる。
 
 作業終了後浜崎電機に於いて実験結果の詳細を把握し、次のようにまとめた。
(a)フラットバーのFRP壁面への接着は、エポキシ樹脂系接着剤、SGAともによい接着状況であった。
(b)天井に取り付けた三角台は、重量の割りには接着面積が少なく、片側が浮いた状態で接着され、剥離しそうであった。
(c)接着部分の形状が平面でない場合、面合わせを充分に、また、仮止め方法を工夫する必要がある。
(8)その他
 接着試験スケジュールになかったが、予備接着部材・母剤の粉体塗装試験を実施した。
 粉体塗装は室温24℃から約45分をかけて炉内温度を約200℃程度として実施した。その結果は、小物架台は異常なしであったが、フラットバー4本のうちの1本の片側が剥離していた。この剥離は母材が鋼、部材がアルミであるため、熱膨張率の違いによるものなのか今後の検討事項である。
 接着作業を適切に実施することができれば、30分程度の時間であればエポキシ樹脂系接着剤、SGAともに約200℃程度に耐えられることが分かった。また硬化した接着剤に塗装できることも判明した。このことは接着剤が今後、配電盤、コンソール盤等に使用可能であると考えられる。
 
7.7.3 FRP船での接着試験終了後のコメント
(1)2液接着剤を使用する最大の課題は、「配合比が正しいか」と「充分に混合したか」である。
(2)メーカーが混合についての表示や接着剤と硬化剤の色を変える等の工夫をする必要があるように思える。
(3)FRP船で接着作業を実施するためには、FRP面が平面でない場合が多く接着面の面合わせに手間取ることが予想される。
(4)接着作業は作業前の準備が大切である。接着面の表面処理、面合わせ、部材の位置決めと作業者(接着剤を塗る人・貼り付ける人・部材をテープで固定する人)の役割を決めておけば作業をスムースに実施することができる。
(5)200℃程度の粉体塗装の可能性があることがわかった。また、接着剤に粉体塗装ができることを知り得たことは大きな成果である。


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