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第7 実船での接着作業の実施
 鋼船、新造アルミ船及び既存アルミ船を用いての接着作業
 
7.1 予備接着試験(写真7.1.1〜7.1.6参照
7.1.1 実施年月日
平成17年10月26日
7.1.2 気象状況
天候 晴れ 気温 20℃ 湿度 60%
7.1.3 実施場所
山陽船舶電機(株)(広島県尾道市西御所町4-29)工場内
7.1.4 出席委員(敬称略)
磯部委員、藤岡委員、大塔委員、光原委員、事務局1名
7.1.5 接着作業実施協力者
山陽船舶電機株式会社 工務部 藤井孝典、柏原幸司
7.1.6 作業時間
事前の打ち合わせ時間 13.00〜13.30
接着作業時間 13.30〜14.00
7.1.7 接着作業等の状況
(1)磯部委員よりの説明(事前の打ち合わせ)
(a)エポシキ樹脂系接着剤について
(1)2液を混合して使用するための混合比率(1:1)及び混合の方法。
(2)2液を混合した後の硬化が始まる時間は30分位である。
(3)完全に硬化する時間(人が引っ張っても取れない)は24時間位である。
(4)接着剤を塗布する時は部材に均一に塗布すること。
(5)圧締する時は接着剤が少し滲み出る程度に押える(押え過ぎると接着剤が少くなり接着力が弱くなる。)。
(b)SGAについて
(1)2液の混合式ではあるが、注入形自動混合機を使えば、ノズルから出る接着剤を直接部材に塗布することが出来るので簡単である。
(2)ポットライフが短いので手際良く接着作業を行うこと。
(3)接着剤を塗布する時は部材に均一に塗布すること。
(4)圧締する時は接着剤が少し滲み出る程度に押える(押え過ぎると接着剤が少くなり接着力が弱くなる。)。
(2)接着作業の状況
 山陽船舶電機(株)工場内において磯部委員の指導により、黒皮付き鋼材のフラットバーを黒皮付き鋼材の母材にエポキシ樹脂系接着剤で1枚、SGAで1枚、計2枚の接着作業を実施した。
 次に黒皮剥離鋼材のフラットバーを黒皮剥離鋼材の母材にエポシキ樹脂系接着剤で1枚、SGAで1枚、計2枚の接着作業を実施した。
 引続きアルミ材のフラットバーをアルミ材の母材にエポキシ樹脂系接着剤で1枚、SGAで1枚、計2枚の接着作業を実施した。
 最後に溶接熱による接着面への影響の調査に使用するために、黒皮付き鋼材のフラットバーを黒皮付き鋼材の母材にエポキシ樹脂系接着剤で1枚、黒皮剥離鋼材のフラットバーをSGAで黒皮剥離鋼材の母材に1枚、計2枚の接着作業を実施した。
7.1.8 作業終了後の協議事項等
 粉体塗装・焼付け塗装等を行う場合、被塗装品を160〜200℃前後まで温める必要があり、接着剤がそれに耐え得るか確認しておく必要があるので、予備試験で接着した接着済み部材・母材(6部材)を耐熱試験に使用することとした。
 また、残りの2本を溶接熱の影響を調査するために使用することとした。
 
表7.1 予備試験の接着作業の概要
母材 部材 接着場所 使用接着剤 数量 備考
黒皮付きの鋼材 黒皮付きの鋼材 垂直壁面 エポキシ 1 耐熱試験に使用
SGA 1
黒皮剥離の鋼材 黒皮剥離の鋼材
エポキシ 1
SGA 1
アルミ材 アルミ材
エポキシ 1
SGA 1
黒皮付きの鋼材 黒皮付きの鋼材
エポキシ 1 溶接熱試験に使用
黒皮剥離の鋼材 黒皮剥離の鋼材
SGA 1
 
7.2 既存の鋼船での接着試験(写真7.2.1〜7.2.8参照
7.2.1 実施月日
平成17年10月27日
7.2.2 気象状況
天候 晴れ 気温 21℃ 湿度 60%
7.2.3 船舶の概要
船名 第二しまなみ
船舶の用途 旅客フェリー(港内渡船)
航行区域 平水区域
船舶の総トン数 97.00トン
7.2.4 作業場所
しまなみフェリー株式会社(広島県尾道市向東町彦の上)向島側桟橋
7.2.5 出席委員(敬称略)
磯部委員、藤岡委員、光原委員、事務局1名
7.2.6 接着作業実施協力者
山陽船舶電機株式会社工務部 藤井孝則
7.2.7 作業時間
山陽船舶電機株式会社 出発 10.00
本船到着          10.10
作業開始          10.15
機関室内での作業      10.15〜10.30
暴露部での作業       10.30〜10.45
本船出発          10.50
山陽船舶電機株式会社 帰着 11.00
7.2.8 接着作業の状況
(1)最初に平成16年度に実施した接着部材の接着状態を点検した。
 平成16年度の接着作業はすべてエポシキ樹脂系接着剤を使用している。
 フラットバーには荷重として電線約600g、三角台には荷重として防水形ベル約1,700gを掛けて、約1年が経過しているが接着状態はすべて良好であった。
(2)機関室内での接着作業
 最初に黒皮剥離鋼材のフラットバーを黒皮剥離した機関室の垂直壁面にエポキシ樹脂系接着剤で1枚、SGAで1枚、計2枚の接着作業を実施した。
 次に黒皮付き鋼材のフラットバーを黒皮付きの機関室天井下面にエポキシ樹脂系接着剤で1枚、SGAで1枚、計2枚の接着作業を実施した。
 最後に黒皮剥離鋼材の三角台を黒皮剥離の機関室の垂直壁面にエポキシ樹脂系接着剤で1枚、SGAで1枚、計2枚の接着作業を実施した。
(3)船橋(暴露)甲板での接着作業
 暴露甲板の右舷舷灯垂直隔板(黒皮剥離)に横向きに黒皮剥離鋼材のフラットバーをエポキシ樹脂系接着剤で1枚、SGAで1枚、計2枚の接着作業を実施した。次に左舷舷灯垂直隔板(黒皮付き)に横向きに黒皮付き鋼材のフラットバーをエポキシ樹脂系接着剤で1枚、SGAで1枚、計2枚の接着作業を実施した。
7.2.9 作業終了後の協議事項等
 平成16年度の接着作業の現状が良好であることを確認した。
 接着後一年を経過しているが、接着状況は全て良好で接着工法に自信をもてた。
 機関室内での作業は順調に行われた。
 暴露甲板での作業は部材の選定ミス(重量が重い、部材の接着面合わせの精度が悪い)や取り付け位置が横向きの為に自重で部材が下がり気味となり、圧締をやり直し、テープでの固定を強化しなければならない等の不具合が有り、接着力に自信がもてないので再度挑戦することとした。
 「第二しまなみ」は運行回数が少ないため、試験船を運行回数の多い「第一むかいしま」に変更することとし、試験用部材を作成することとした。
 山陽船舶電機(株)にて、黒皮剥離鋼材を母材にして、黒皮剥離鋼材のフラットバーをエポキシ樹脂系接着剤で1枚、SGAで1枚、計2枚の接着作業を実施した。
 次に黒皮付き鋼材を母材にして、黒皮付きフラットバーをエポキシ樹脂系接着剤で1枚、SGAで1枚、計2枚の接着作業を実施した。
 この試験板を後日「第一むかいしま」に固定して経過を観察することとした。
7.2.10 部材の比較
機関室で使用した部材 t=3.2 x H=50 x W=50 x L=500 重量 約 500g
暴露部で使用した部材 t=6.0 x H=50 x W=50 x L=500 重量 約 950g
 
表7.2 鋼船での接着作業の概要
船体 部材 接着場所 使用接着剤 数量 備考
鋼材 鋼材の電路 機関室垂直壁面 エポキシ 1 黒皮剥離
SGA 1
機関室天井下面 エポキシ 1 黒皮付き
SGA 1
鋼材の三角台 機関室垂直壁面 エポキシ 1 黒皮剥離
SGA 1
鋼材の電路 暴露甲板(横向き) エポキシ 1
SGA 1
エポキシ 1 黒皮付き
SGA 1
 
7.3 建造中のアルミ船での接着試験(写真 7.3.1 〜 7.3.5参照
7.3.1 実施月日
平成17年10月26日
7.3.2 気象状況
天候 晴れ 気温 20℃ 湿度 60%
7.3.3 作業場所
広島県福山市沼隈町常石 常石林業建設株式会社 常石工場
7.3.4 船舶の概要
船番(船名) CE-50(サンダーバード)
船舶の用途 高速旅客船
航行区域 平水区域
総トン数 19.00トン
7.3.4 出席委員(敬称略)
磯部委員、藤岡委員、大塔委員、光原委員、事務局1名
7.3.5 接着作業実施協力者
山陽船舶電機(株)工務部 藤井孝則、松本信義
7.3.6 作業時間
山陽船舶電機株式会社 出発 14.00
常石林業建設株式会社 到着 15.00
作業開始 15.05
作業終了 15.30
常石林業建設株式会社 出発 15.35
山陽船舶電機株式会社 帰着 16.30
7.3.7 接着作業の状況
 最初にアルミ材のフラットバーを暴露甲板のフレーム(横向き)にエポキシ樹脂系接着剤で2枚、SGAで1枚、計3枚の接着作業を実施した。
 次にアルミ材のフラットバーを暴露甲板の垂直隔壁面にエポキシ樹脂系接着剤で1枚、SGAで1枚、計2枚の接着作業を実施した。
 最後にアルミ材の三角台を暴露甲板の垂直隔壁面に、エポキシ樹脂系接着剤で2枚の接着作業を実施した。
 三角台のSGAでの接着作業は中止することとした。
7.3.8 作業終了後の協議事項等
 建造中の船舶であり電気溶接の作業も行われていて、それとの比較検討も出来る貴重な経験であった。
 建造中の船舶であり、火気に注意しながらの作業となったがアルミ船の場合ガス溶接の使用が少ないため比較的安心して作業ができた。
 
表7.3 建造中のアルミ船の接着作業の概要
船体 部材 接着場所 使用接着剤 数量 備考
アルミ材 アルミの電路 フレーム エポキシ 1
SGA 1
垂直隔壁面 エポキシ 1
SGA 1
アルミの三角台 エポキシ 1


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