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写真6.70 供試品15破断面
 
写真6.71 供試品16破断面
 
写真6.72 供試品17破断面
 
写真6.73 供試品18破断面
 
6.6 引張り試験結果の評価
6.6.1 全般の考察
(1)前年度(平成16年度)同様エポキシ樹脂系接着剤で良好な試験結果が得られた。また、今年度(平成17年度)新たに試験に加えたSGAとエポキシ樹脂系接着剤との比較では、エポキシ樹脂系接着剤(No.2700H)の方がSGA(SG380カートリッジ)よりも安定した接着が得られた。
 この試験結果は、エポキシ樹脂系接着剤に比べSGAが、引張り荷重+割裂荷重+はく離荷重の様な複合の外力に弱いと言う事を示しているが、一般的には同等かむしろSGAの方が性能的に上との評価もあり、このあたりは被着材やその表面、接着剤配合、他種々条件によって一概には言えない面がある。
 今回の試験に関してはエポキシ樹脂系接着剤が優れていたことである。
(2)前述した様に、SGAの場合コーミング以外は低レベルの接着力であったが、その作業性は捨難く、接着部位に実際にかかる荷重の種類や程度、環境条件などについて議論をした上での評価が必要と思われる。
(3)今回の試験では、前年度(平成16年度)に比べ破壊モードの違いやバラツキの多さが認められたが、要因として以下が挙げられる。
(a)今回の試験は垂直面施工であった。
(b)引張り荷重の掛け方が前年度(平成16年度)と違ったため複合(引張り、割裂、はく離)の外力が掛かった。
(c)接着剤のダレ防止の影響(濡れが悪くなった?)
(4)各環境試験による著しい接着力低下は認められず、逆に常態時よりも接着力が向上したものもあった。これは環境試験時の熱などにより接着界面の養生が進み、密着力が向上した為と思われる。
(5)バラツキや破壊モードの違いの原因が材料表面状態の可能性があるため母材、部材とも表面処理を再考する必要がある。
(a)アルミ表面の酸化皮膜の除去→サンディング処理
(b)SS鋼板の表面黒皮の除去→サンディング処理
(c)FRPはサンディング処理が必須(本試験でもサンディング処理)
6.6.2 各接着部位の評価
(1)フラットバーの接着
(a)アルミについてはエポキシ樹脂系接着剤、SGAとも部材からの界面はく離が多く強度的にも弱いため良好な接着とは言えない。アルミ表面のサンディング処理無しでは接着に不安がある。
 環境試験では著しい強度低下は認められず、むしろエポキシ樹脂系接着剤で冷熱サイクル試験後や日照試験後に強度アップが認められた。これは前述の理由によるものと思われる。但し、SGAの場合この傾向はなく、理由は良く分からない。接着力が弱く基本的に良好な接着が得られていないためかも知れない。
 天井面で接着したフラットバーについては、特に変わった挙動は見られず、垂直面施工と同傾向であった。
(b)SS鋼板についてはエポキシ樹脂系接着剤が接着良好であったが、SGAは強度的に低く不安がある。但し、何れの場合も部材表面の黒皮破壊が多かった中で、SGAの場合だけ何故黒皮破壊強度が弱かったのか原因が良く分からない。
 環境試験では何れも著しい強度低下は認められず強度は安定していた。また、アルミで見受けられた強度アップも特になかった。これは破壊モードが黒皮破壊であることに起因していると思われる。
(c)SUSについてもSS鋼板同様、エポキシ樹脂系接着剤は凝集破壊が多く接着良好であったが、SGAの場合は弱い強度での部材もしくは母材からの界面はく離が殆どで良好な接着とは言えない。
 環境試験後ではSS鋼板同様著しい強度低下はなく接着は安定していた。
(d)FRPについては、何れの場合も片方のアルミ部材面からのはく離が多く良く判断できないが、サンディング処理で特に問題ないと思われる。
 環境試験における著しい強度低下も強度アップも認められなかった。
(2)L型フラットバーの接着
(a)アルミについてはフラットバーの接着と同傾向であった。
(b)FRPについては数値のバラツキが大きいため判断が難しいが、エポキシ樹脂系接着剤はかなりのFRP破壊も伴っており、サンディング処理で特に問題ないと思われる。SGAの場合はFRP面からのはく離が一部見受けられたためやや不安が残る。
(3)三角台の接着
 何れも比較的良好な接着が得られていた。アルミのフラットバーと接着部は同じ形態でありながらフラットバーよりも接着が良好であったのは、接着形態は同じでも全体形状からくる引張り試験時の荷重の掛かり方が違ったため(複合の外力が少なかった)と思われる。数値的にも大きく、破壊モードも接着剤の凝集破壊が多くなっていた。
(4)コーミングの接着
 アルミ、FRPに対しエポキシ樹脂系接着剤、SGA何れも良好な接着が得られていた。今回の接着部位の中で最もバラツキが少なく安定した接着が得られており、FRPもサンディング処理面は破壊が多かった。これは引張り試験時の荷重の掛かり方が純粋な引張りの力に近かったためと思われる。


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