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3. 大学側の新しい取り組み方の検討
a. 第16回献体実務担当者研究会記録
平成10年11月27日(篤志献体40号23-25pp)
 
b. 第18回献体実務担当者研究会=公開シンポジウム
平成12年11月17日(篤志献体43号20-28pp)
平成12年度日本財団助成事業「篤志献体思想の普及啓発」
 
c. 第21回献体実務担当者研究会=公開シンポジウム
平成15年11月21日(篤志献体46号56-63pp)
平成15年度日本財団助成事業「篤志献体思想の普及啓発」
 
d. 第22回献体実務担当者研究会=公開シンポジウム
平成16年11月26日(篤志献体47号64-70pp)
平成16年度日本財団助成事業「篤志献体思想の普及啓発」
 
e. 第27回団体部会研修会
平成14年3月27日(篤志献体45号44-46pp)
 
f. 第28回団体部会研修会
平成15年3月30日(篤志献体46号50-55pp)
 
g. 第29回団体部会・大学部会合同研修会
平成16年3月26日(篤志献体47号54-63pp)
 
第16回献体実務担当者研修会
日時:平成10年11月27日(金)午後2時〜4時
場所:東京歯科大学水道橋校舎。2階 血脇ホール
出席者:73大学から136名
司会:井出吉信教授、後藤 昇教授
主題:「人体解剖実習の現況と法律的問題点」
1)医学部解剖学教室におけるコメディカル教育の現況
2)コメディカル解剖学教育の将来像
3)解剖学教育における法律的問題点
話題提供者:
1)順天堂大学医学部解剖学 坂井建雄教授
2)名古屋大学医学部保健学科理学療法顎専攻 小林邦彦教授
3)弁護士、医師、昭和大学医学部客員教授、東京医科大学非常勤講師、学校法人東邦大学顧問 加藤済仁先生
 
 第16回研修会は東京歯科大学解剖学井出吉信教授の司会の言葉、続いて、この1年間にご逝去された篤志解剖全国連合会会員に対して黙祷を捧げられた。開催大学として東京歯科大学の水道橋病院金子譲病院長の挨拶、つづいて外崎 昭会長の挨拶で始められた。
 今回の話題は「人体解剖実習の現況と法律的問題点」と題して、解剖学教育の現況、教育の将来像を専門の立場から坂井建雄教授、小林邦彦教授が述べられ、法律的のことは、ご専門の立場から加藤済仁弁護士にお願いをいたして、研修会は進行された。昭和大学医学部後藤 昇教授の閉会の言葉で終了した。
 懇親会は会場を移して、水道橋グリーンホテルで80余名の出席で行われた。
  
医学部解剖学教室におけるコメディカル教育の現況
順天堂大学医学部解剖学
坂井 建雄
 
 人体解剖、死んだ人間の身体にメスを入れて切り刻むこと、その経験はけっして生やさしいものではありません。その尋常一様ではないことを、日本だけでも毎年9,000人近い若者たちが体験しています。日本の大学の医学部には7,000人ほどの人たちが、そして歯学部には2,000人ほどの人たちが、毎年入学しています。そして1年間か2年間の一般教育の課程を終えて、2年生か3年生の頃に人体解剖実習をします。
 私も二十数年前に医学部に入学し、3年生になって人体解剖実習を経験しました。私はその後、臨床医にはならず、学生に解剖学を教える身になりました。毎年のように、医学生たちがおそるおそる遺体に出会い、四苦八苦しながらメスとピンセットをふるい、身体の中に広がる世界に分け入っていく、その様子を見守り続けてきました。人体解剖実習の体験を通して、彼らは一回りも二回りも逞しくなり、基礎医学と臨床医学の勉強を続けて、医師あるいは医学者となって育っていきます。
 人体解剖実習は、人生に新しい光を投げかけてくれるすばらしい体験です。しかしその体験を享受できるのは、残念ながら、医学生や歯科学生というごく限られた人たちです。医療に従事する職業は、これ以外にも、看護婦、理学療法士、薬剤師、臨床検査技師、臨床工学士など数々ありますが、彼らは実際に自分の手で人体を解剖する機会はほとんどありません。辛うじて、人体解剖実習を行っている医学部や歯学部に頼んで、実習中の遺体を一度か二度、見学させて貰うくらいです。そのわずかの経験ですらも、なかなか得難い貴重なものなのです。
 医学部学生や看護学校の学生の教育に携わる一般教育あるいは基礎医学の教員の多くは、現在、非医学部出身者になっています。学生の教育に携わる人たちにも解剖実習を体験してもらいたい、そう思って、順天堂大学の解剖学教室では学内の教職員のために、2週間で人体解剖実習を体験する解剖実習セミナーを、2年間に1度ほどの割合で開催しています。毎年20人ほどの参加者と20人ほどの見学者があり、好評を博しています。
 これから医療情報の開示やインフォームドコンセントを前提に医療が行われる、つまり個人の健康管理についても自己責任による自己決定の原則が広がろうとする時代が始まります。解剖実習の体験を通して得られる人体についての実感、ボディーイメージなしには、医師との意志の疎通も難しくなります。解剖実習という体験を医療関係者が独占するのではなく、社会で共有する、そういう時代が近づいているように思います。
 
コメディカル解剖学教育の将来像
名古屋大学医学部保健学科
小林 邦彦
 
 人体解剖は解剖学の基礎であるだけでなく近代医学や近代自然科学の基礎である。わが国では現在、超高齢社会の到来、疾病構造の変化、医学と医療技術の高度化にともない、生命の質を重視した多職種によるチーム医療が求められ、医療技術者養成の充実が社会的に求められている。名古屋大学主催の人体解剖トレーニングセミナーに医療技術関係の受講者が増えているように、医療技術者にも医学の基礎として人体内部を自分の目や手で確認・学習したいという要求が高まっている。たとえば理学療法士・作業療法士など直接患者の身体に触れることのある職種では、静的な人体構造のみならず、筋・腱・靭帯などに直接触れその強靭さや力の伝わり方を知ることは必須といえる。また人体解剖実習は、学生にとっては単に人体構造の三次元的な理解を助けるだけでなく、医療人としての自覚や生命尊厳の意識を高めることになる。
 人体解剖実習に関する法的問題については、「死体解剖保存法」に示された人体解剖の条件(医学の研究・教育を目的とし、解剖学教員と厚生大臣の認定した有資格者により、故人の意志と遺族の承諾を得た遺体を、医学部の特定の解剖実習室で、遺体の尊厳を守り礼意を失わない)を厳密に満たせば、現在でも医療技術者養成校の学生の実習は可能であり(拙著、解剖学雑誌73(3)275-280、1998)、すでにいくつかの大学・短大などで実習が行われ成果を上げている。しかしなお、財政的裏付けや指導者の不足など、解決すべき課題も多く、このことが現時点では医・歯学部の方々に本来の業務以外の負担をお願いすることになっている。日本解剖学会や文部省、厚生省など関係諸機関が医療人養成における人体解剖実習の重要性を理解され、制度的な整備を進められることにより、医療技術者養成校の学生あるいは医療人自身がもっと充実した条件のもとで人体解剖実習を実施できるようになることが、当面のコメディカル解剖学教育の将来像である。
 
解剖学教育の法的問題点
弁護士  加藤 済仁
 
1. 場所的問題
法10条・2条1項2号:大学医学部(医科大学)
2. 解剖を行う人の問題
a. 資格者
(1)法2条1項2号:大学医学部の教授・助教授
(2)法2条1項1号
b. 資格者の解剖の補助者
健政発325:死体解剖資格の認定について第一
健政発693:病理解剖指針について2(4)
3. 解剖実習を行う人の問題
a. 法の立法趣旨
法1条・献体法1条:医学の教育
b. 医発519:死体解剖保存法の施行に関する件
 法10条「大学」は、場所的観念であり、従って必ずしも大学自身の教育又は研究のためでなくてもよい。
4. 標本の保存展示の問題
a. 保存について
法18条:保存場所を指定していない
健政発693:病理解剖指針について2(7)
b. 展示について
法18条:医学の教育のため


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