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 それをチェックリストで出したものがこれです。これは、うつとか、キレるとか、そういうことを対象にしたのではなくて、セロトニン神経ということからするとチェックリストができるということです。セロトニン神経が弱ると何が起こるかというと、朝起きてもなかなか頭が冴えないとか、姿勢が悪い、しゃがみ込んじゃう、顔つきがとろんとして生気がない。こういうのは全部、セロトニン神経が弱った症状として言えます。
 
セルフチェック
 
 それから、かむ力が弱い。これは歯医者さんのお話で、確かにかむ力が弱くなりましたと言われます。それから、朝、不定愁訴的な、頭が痛い、腹が痛い、いろいろ訴える。それから、ちょっとした痛みをおおげさに騒ぐ。これも言えます。それから、些細なことに気にかかって、なかなか受け流せない。それから舞い上がってしまう。
 この10番目の、ゲーム漬けの生活をしている。これは何かというと、セロトニン神経が弱る生活習慣としての要因になります。体を動かさない。セロトニン神経活性化に必要な普通のことです。体を動かす。それから、かむ、呼吸をしっかりする。こういうゲーム漬けの生活をしていますと、まず出ないです。体を動かさない。かなり壮絶な生活をしている。もちろん、いかにも息を詰めてゲームに浸ってるわけですから、それが何時間も続けばセロトニン神経はどんどん落ちていく。それは私が想像しても充分に出てきます。食べてしまうというのは、これは食のコントロールです。依存症もドーパミン神経です。それから、すぐキレてしまう。
 一番問題は、動物を虐待してしまう。セロトニン神経が弱るとこういういろんな症状が出てきますけれども、最大に弱ると、その神経を全部壊しちゃう。動物実験でそれが出来る。あれを薬物で全部壊すのです。ラットにそういう動物の処理をしますと、ラットがマウスを食べちゃうのです。過激な行動に歯止めが利かない。そういうことをしてない動物はどうするかというと、ちょっと種類が違いますけれども、ちょっかいを出す。ラットの方が体が大きいですから、それでちょっとちょっかいを出したらおしまいなのです。ところが、セロトニン神経を壊しているラットは、攻撃をし続けて、もういいだろうというところで止まらないのです。最終的には食べちゃう。それぐらい過激な行動に歯止めが利かない。
 こういうふうにセロトニン神経が弱っていろいろな症状がある中に、行動的に過激なことがもし出てきたら、例えば動物を虐待してるとか、それはかなり弱っているサインだと僕は思います。ですから、とんでもない事件を起こすというのがありますけども、よく聞いてみると、その前に動物を虐待していたとか、いろいろ言われることもあると思います。それは実はセロトニン神経が弱っている、かなり弱ってきているという、かなりしっかりとした症状なのです。
 もちろん覚醒を演出する神経が働かないわけですから、睡眠も不十分に睡眠不足いう問題もあります。そういうことからして、セロトニンのチェックリストを考えると、キレる子供の症状にもけっこう合うでしょう、うつにもよく合うでしょう、パニック障害にも合うでしょうということになります。
 ポイントは、どうやって鍛えるかというと、単純です。むしろどうやって弱るのかというと、引きこもり、閉じこもりを3カ月やったら、大体どんどん弱ってきます。3カ月、約100日というのが非常に重要な日数です。これはあとでお話しします。で、生活がともかく、動かない。しっかりかまない。呼吸も忘れちゃっている。そういう生活を大体それぐらいすると、逆にセロトニン神経が弱ってくる。弱ってくると、今言ったいろんな症状が出てくる。それから過激な行動が出てくる。ということになれば、何が起こってもおかしくない。
 
 
 それが、セロトニン神経を研究している私の立場からすると推測できるものです。ですから、よく問題が起こったときに、いろんなことを見ると、例えばずっと閉じこもりになっちゃった。そして、部屋を見てみたら、パソコンだけ置いてあってあとはもうすさまじい状態。セロトニン神経のほうからすると、その状態になってから最後の動物虐待の状態が起こりますよというのが、僕の推測です。だから、僕に言わせると、親がそれを許しているとすると、共犯であるというふうに僕は思えるのです。そこまで言うとマスコミが何言うか分からないですけど。セロトニン神経という立場からすると、そこまでに必ずいくはずですよ。
 それから、過激な行動が出てきたときは、かなり弱っていますよということが言えると思います。ですから、とにかくその状態をなるべく続けさせないようにしないと、セロトニン神経の立場からしたら問題だと思いますということになります。治すのはどうすればいいかというと、動けばいいのです。何でもいいんです。リズムの運動をすればいいのです。縄跳びでも何でもいい。よくあるウォーキング、ジョギング、これはいいです。水泳でもいいです。
 動かせばいいんだけれども、私たちの周りを考えますと、実はリズムの運動だらけなのです。子供のハイハイ、これもリズムの運動です。自閉症の治療はわざわざハイハイさせると良くなります。それはリズムの運動なのです。それから、走ったり、チューインガムをかんだり、踊ったり、水泳をする、座禅をする。こんな難しいことじゃなくても、私たち、特に子供の環境にはリズムの運動だらけです。花いちもんめでもいいです。縄跳びでもいいです。かけっこでもいいです。
 それをたった1日30分やれば、セロトニン神経は弱らないです。30分です。もちろん、ゲームをやっちゃいけないとか、引きこもりでずっとゲーム浸けという、それは別です。最低1日30分繰り返してごらんなさい。そうしたら、セロトニン神経はそこそこ弱りませんよということになります。
 次の試みはフラダンスです。これは60から80歳の女の人たちで、フラダンスが確実にセロトニン神経を活性化します。この人たちは約6カ月フラダンスをやってそのあとのセロトニンを測ったんですけども、フラダンスをやったあとのセロトニンのレベルはみんな増えます。ですから、こうじゃなくちゃいけないということは、リズム運動は何もないです。水泳が好きだったら水泳、踊りが好きだったら踊り。
 そして最近面白いのは、このドラムサークル。これは板橋の音楽の先生です。ドラムをたたかせる。私はいろんな雑誌に書いているのですが、「日経ヘルス」にそういうことを書いていたら、それを見て私にメールをくれた先生です。小学校の音楽の先生ですが、教育にドラムを使う。ドラムをみんなにたたかせるのです。
 このポイントは何かというと、教えないのです。ドラムをたたくということを音楽で教えるのではなくて、ドラムをたたくという楽しみだけをやらせる。教えるのは何かというと、けがしないたたき方だけを教える。そして、1人の子供が、この子ですけれども、リズムだけこうやっているのです。あとは順番に自分のリズムを出す。そして、そのリズムをみんな30人ぐらいの子供がただ一緒にたたくだけです。Aくんが終わると、ただ次に移っていくだけです。大体15分ぐらいです。
 中にはやはり問題児が入っています。多動症的な子供もいますし、自閉症っぽい子もいる。そうすると、たたくリズムが全然違うのです。多動症的な子というのはもうすごい過激な音で、みんながびっくりするような音を出すんだけれども、それをみんなが一緒にたたいてあげるのです。それをただ繰り返すだけなのです。それから自閉症っぽい子の場合ですと、もう音が全然受け付けられないものですから、たたくのすらやらない。耳を覆っていたい、そんな状況になるのですが、そのときも一緒に、「ああ、この子は音を出さないのがリズムかな」というぐらいの気持ちで回してあげていると、だんだん良くなる。
 
◎ いがいがしていた気持ちが落ち着く
◎ すっきりする
◎ 気分が悪くて保健室に行こうと思っていたけれど、元気が出た
◎ ストレス発散
◎ 初めて「合う」という心地よさを知った
 
 これは子供の気持ちを表しているものですが、いらいらした気分がすっきりした、気分が悪くて保健室にいく、ストレス発散。ポイントは、もう一つは、この「合うという心地良さを知った」。みんなで一緒にやる。たたくというリズムを合わせることで、人の気持ちがこう、分かるのです。今、実はそっちのほうの研究に入っているのですけれども、人と人との心地良さ、共感。呼吸を合わせる、気を合わせるという心地良さ。息を合わせる、他人の呼吸が分かるということが実は心地良さにつながるのです。私は呼吸法で体のことを言っていますが、実は他人の呼吸が分かると脳の中が変わるのです。それを今やっているんですけども、共感のところがそうなんです。ドラムをたたくのも恐らくそういうことです。
 ここからかなり飛躍しちゃいますけれども、私たちがコミュニケーションするときには、今はともかく、コンピューターで言葉でコミュニケーションするときもありますし、それから携帯電話、言葉だけでコミュニケーションするわけです。相手がいないです。その先に人がいるのに、人の呼吸が見えないコミュニケーションを取っている。それは恐らくこの状態がないのです。
 私たちはおみこしを担ぎますよね。みんなでおみこし担ぐ。あれ、「わっしょい、わっしょい」と何やっているかというと、相手の呼吸を感じているわけです。「わっしょい」のないおみこしというのは、やはり意味がないです。相手の呼吸に合わせる。それから、今、Jリーグなんかではみんな応援しますよね。みんなで歌い続けますよね。あれもやはり同じです。みんなで歌い続ける、呼吸を合わせる部分があるんじゃないかな。その方面の研究をしています。前頭前野の共感。ここが動き出すと、先程言いましたようにセロトニン神経が動いて、いろんな心が動き出すのです。
 最後は、継続は力なりと。リズムの良さは分かった、何でもいいからともかくやらせればいいんだろうと。けれども、そのやらせるときに、どれぐらいの期間どういうふうにやるのがいいのか。それがこの赤印で書いた所です。継続していると赤印の所が変わってしまうのです。要するに、セロトニン神経の構造が変わってしまうのです。ニュアンスの構造が変わるのです。セロトニン神経というのは、自分で、自分がどれぐらい活動しているかというのを自己チェックします。今度、自分に返ってきます。その自己チェックをしているところのレベルが変わってしまうのです。
 
 
 座禅をする前、初めて数カ月というと、ここが変わってきます。これは自己チェックをしているところの受容体、オートレセプターと言うのですが、この数が変わってしまうのです。遺伝子が関係しますから、刺激を数週間か数カ月し続けていると、遺伝子がオンに、ないしはオフに行って、それによって受容体の数が変わってくるのです。ということは、セロトニン神経の構造が変わってくれるのです。逆に言うと、数週間、数カ月、悪い生活をしていると、それでセロトニン神経は悪い方向にシフトします。
 要するに、セロトニン神経というのは、生まれたときはみんな同じように出ているのです。それがある程度どんどん変わってしまうわけです。生後の生活習慣が悪ければどんどん弱ってきますし、一生懸命活性化することをやっていくとそれがいいレベルになっていく。先程、臨界期の話がありましたけれども、セロトニン神経の発達に関係があるのは、生後3年ぐらいまでの間がけっこう重要です。そこのところをどういうふうに過ごしていくかによってセロトニン神経の活動にかなり影響してきます。
 ポイントは、ですから、弱っても何でもいいからリズム性の運動をやってごらんなさいと。やり方としては、最低5分、30分ぐらい。そして、一生懸命ひたすらに続ける。大抵あるレベルに達すると流しちゃうんですけど、流したらまたちょっとレベルを上げなさい。そのレベルをちょっとずつ上げながらずっと続けていくと、セロトニン神経は弱りません。ということです。私の準備したのはそれぐらいです。以上です。(拍手)







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