日本財団 図書館


大塚 工藤さん、宜しくお願い致します。
 
工藤 国土交通省の酒田港湾事務所企画調整課でやっております工藤と言います。せっかくですので、今年やりました活動を少し紹介させていただきたいと思います。実際にやったのは、2校さんの4年生の生徒さんだったのですが、基本的には生徒さんの意思で自分で勉強したいものを勉強していただくと言う基本的な流れはあったのですが、それも、動物、生き物、植物、土、そういう物をすべて含みまして、循環しているんだよ、ということを最終的に気付いてもらいたいということで、浜辺に流れ着いているゴミ・・・それもゴミと言ってしまえば、ゴミなんですが、拾う子供たちが宝物だという気持ちで拾えば、このリサイクル、循環型社会が動き出している、という点を含めますと、宝物になり得るものたちだ、ということで、子供たちに「ゴミ拾い」という名目ではなくて「宝捜し」、ということで、活動をしていただきました。子供たちも素直に宝物だということで、素直に拾っておりましたので、また引き続き、来年度も総合学習の予定はしておりますので、より子供たちに気付きを与えられるようにやって行きたいと思っています。
 
大塚 ありがとうございました。
 
猪澤 教育についてですが、僕はキーは母親です。沖縄もそうですが、母親が堕落しています。堕落というのはなにかといいますと、便利に済ませ過ぎるのですね。たとえば、買い物ひとつ。今の時期にどういうものを食べさせれば、子供たちにいいかということは、やはり、地元で獲れた魚、命のある魚を、ちょっと魚市場まで行けば、安く買えるのですが、スーパーに行くと、地元でとれた魚が3倍ぐらいするのですね。その横に南米産の魚が安く売られているのですね。母親の選択は、スーパーに行って手軽に買えるもので、安く買えるもの。南米産の魚を今、沖縄は食べています。(笑)どんどんどんどん、短命化しているんですね。学校の先生にお願いしたいのは、母親に対する影響力を持っているのは、学校の先生です。父親は無いと思います(笑)。というのは、父親が失敗モデルになりつつあるので、学歴とか、最後の最後で失敗モデルっぽくなっているのです。もう少し前の高度成長時代は、父親はもう少し自信を持って、「学歴だよ」と。「受験勉強ガンバレ。偏差値上げろ!俺みたいになれ!」と、言えたのですが、今は、たぶんそれを堂々と言える父親は余程の揺るぎ無い立場の方だと思うのですが、たいがいの方々は自信をなくしてきているので、では、母親が「お父さんみたいになったらだめよ」というのは、子供にとったら、道が迷ってしまいます。母親は「学力、学力」と言いますが、先生は「学力」という言葉はよく使われるし、世間でも「学力」。では、「学力」って一体何なのだ、と言ったときに、今のところ偏差値とか、知識とかそういう方面のことですね。でも、これからの世界そんなものが、果たして必要かと言えば、先ほど使った言葉で言えば、LOHAS(Life Style of Health and Sustainability)ですね。健康と環境の持続性を重んじるライフスタイル、というのが、ロハスということで、欧米ではロハスというライフスタイルが、日本の場合はエコ・ライフ、スロー・ライフというと、なかなか身近に感じられなくて、日本人の特性としては、欧米で流行ったものは、ちょっと掘るとまだまだ流行る傾向があるので、例えば、母親にこれからロハスな生き方をして行かないといけないから、そういうことをしっかり学んでいかないといけない、食べるものは気をつけないといけない、ゴミの出るものは買わないようにする、とか、母親に影響力を持っているのは、たぶん、学校の先生だと思うのです。ですから、是非、母親を学校の先生が教育してもらって、母親がしっかりしてくれば、いいのではないかと思います。
 
森野 教育の問題との関連でいきますと、地域の教育力が大きいと思いますし、母親の影響力がでましたが、日本の社会がどうして、こうなってしまったのか、というとやはり私は三世代同居しなくなったということが、大きいと思います。下津さんの御報告でも、高齢者の持っているノウハウや知恵を人々が活かさなくなった。私が若い頃、口を酸っぱくして言われたのは、「親父から学ぶな、じいさんから学べ」といわれました。子供は親父に対しては、実に批判的な目を持っています。そして、大概反抗するものです。うん、それでいけ、そして、沢山の知恵を実は教えてくれて、子供の見方になってくれたのは、じいさんでした。じいさんやばあさんから見れば、子供の親は単なる至らない子供なんです。そうやって、じいさんやばあさんから沢山のことを教わりました。で、日本人というのは、そういうのを自ら捨ててしまいましたね。そうすると、家の中では親と子は対立関係に多くの場合、突き落とされます。そうなったときに、双方を救済する役回りのひとがいなくなってしまった。家庭の中で、争いが起きると今度はさらにそれを仲裁して中和させる調停役が昔の日本社会には地域にいました。本当に困ったときには、相談に乗ってくれる御隠居もいました。しかし、落語で私達が聞くような人間関係というのは何処を見ても、いなくなってしまったんですね。つまり、地域が人を育てていないんですね。やはり、それを取戻す必要があるかな、と。ですから、多くの子供や大人は世の中を舐め切ってしまうような姿勢で生活を送っている人が多いです。それは、自分を傷つけています。畏怖する気持ちも何処かで消えてしまいました。沖縄では、神は海からきます。ですから、巫女は必ず海から神を迎えます。海は畏怖するものだったんですね。沖縄のかっての賢者であった、琉球の哲学者、蔡温(サイオン)という人は、日本で初めて林業について、発言した人です。沖縄の人が、日本で最初に林業について発言しているのですよ。その人が言っているのは、「森を痛めすぎて、手を入れ過ぎてはいけない。しかし、全く手を入れなくてもいけない。」
 両方とも森の気を殺す。つまり森も人間に気を与えてくれるものだったし、川が流れて海も気を与えてくれて、神がやってくるものだったのですね。そういうものというのは、その土地土地の文化で伝承されていたはずで、それは、その老人が、じいさんが孫に語って、孫が何か言ったときに、ひとこと、昔は言いましたね。「お前が言っていることは、それは、通らないよ。」とか。なんで、通らないのかは自分で考えるわけです。で、通らないのはどこに通らないかというと、世間に通らない訳です。それは、そういう形で、世の中が持っている人を育てて行く力がかつてはあった。鯉江さんの臨海学校もそうだと思います。これは、林業の方面でも行われています。つまり、手入れをしなくなった山林をフリースクールのようなことをやっている学校の人が借りて、指導者を置いて、トム・ソーヤの冒険の森にしようとか、そういうような取り組みを始めているところもあります。そういう意味で言いますと、この海ゴミへの取り組みも、ある意味でいうと、ある壮大な目標に向かった歩みが始まっているのかなという感じがしております。
 
大塚 ありがとうございました。海ゴミという切り口からいろいろな話がでてきたと思いますし、まだまだお話は続けたいのですが、時間の制約もありますので、これから、このネットワーク、この活動をどう広げていったらいいか、また、SOFに対して、どのような形でお付き合いを頂けると嬉しいかということを含めて、あと少しずつご発言をお願いします。
 
小山 実は、私ひとつのネットワークから昨年、退会させていただきました。皆で手をつないで、助け合っていろんな情報をもらって、そこに行って、という少しずつ自分達の活動にプラスになるようなネットワークだったら、良かったのですが、上から、こうしなければならない、というネットワークだったものですから、それは、もう必要ないな、自由にさて、来年、こうしたらいいだろうか、というような考える力を奪ってしまうような、ネットワークはいらないな、と考えています。
 
大塚 そうだと思います。先ほども、口は出さずに、自分達がどのようにやっていけるか、自分達のやっていきたいことが自由にやれる、というネットワークであってほしい、ということですね。
 
小山 全く、前例のない活動をやっているものですから、自分達で考えてやってきたい、と思っています。ただ、いいということは、少しずつ採り入れていきたい、と思います。
 
大塚 お互いのネットワークはしたい。
 
小山 そうです。人とのネットワークはいいのですが、上から押さえつけられるネットーワークは本物ではないな、と考えています。
 
鯉江 私も、空港の仕事にも長年関らせて頂いて、2月に完成した。財団さんとのこういうプロジェクトにも3年間参加させていただいて、それなりのものが皆さんのおかげで出来たな、と。で、来年、もし、シップ&オーシャン財団さんと何らかの関りが持てるようであれば、空港もあるし、ウミガメもくるし、海浜植物もある。都市近郊のこれからのライフスタイルですね、自然とうまく関りながら、どう持続可能な暮らしをするか、と。で、僕の場合は結局、教育ではなくて、遊びなんですよね。ところが、ここまで30年もやってきますと、とことんいくぞ、と。もう陸と貯金通帳は見ない、と。海と空を出来るだけ見るようにする、と。というところに固守するものですからね。ただ、その情報をなんらかの形で、ビジュアル的にも出して行きたいな、と。リアルタイムに近いような状態でね。あとは、われわれの活動をネットワーク化したいな、と。広げることではなく、そこを蜜にして、出来るだけ長い時間、海を見る。海の変化。自分が長年関ってきた仕事は、日本の自然海岸ができる仕組みを研究してきたんです。それは、川から流れてくる砂が蓄積する。そこに海浜植物が、育つ。そこで、長年かけて、自然の海岸が元に戻って行く。人間の自然治癒力というようなものを植物と砂が持っているのですね。そういうようなことも、一杯あるので、財団さんとのネットワークによって、広げていきたいのかな、というようなことが、一杯あります。
 
下津 どういう視点で、ものを見て行くかということが、一番大切だと思うのですが、私は、今回東京の方で、いろんな全国の人達にお集まり頂いて、また、会場の皆さんとも、共に、こういう環境の問題を解決していくために、語り合えるということは、とても有難いと思いますし、そういうことが、最終的に自分達の活動は何なのか、と思ったときに、いろいろ、社会の持っている問題、それが、解決されて、自分達が理想に思っている社会に近づけることだと思うのですね。それと、子供たち、次の世代の人達にどういうものを贈れるかということがやるべきこと、その間にいろんなプロセスがあって、今地域の小さなことから、たとえば、日本中の人がこれを考えよう、とか、アジアの人も考えよう、とかそういうことも同時作業でやって行かなければならない、そうしないと、本当に社会の問題などは多分解決しない、と思っています。ですから、出来る限り多くの人達と連携しながら、ネットワークしていきたい、というそういう考えから、来ております。ですから、例えば、SOFの方に、今後お願いとしては、出来るだけ多様な人達が集まる場を、SOFの方でやっていただきたい、また、人作りの分野でご協力、支援を頂けたらありがたい。やはり、動かして行くのは人である、というように思っていますので、そういう人作りが大切だなあと思っています。
 
大塚 有難うございました。猪澤さん、どうぞ。
 
猪澤 自費で来ていますので、好きなことを言わせていただきます。
 
大塚 勿論です。自費で来るというのは、そこがいいところですね。(笑)
 
猪澤 海辺工作教室のモデルですが、導入モデルとしては、我々素人ですから、すごく有難かったです。しかし、今後、広がりを考えて行くと、お金は貰っていませんが、海辺の工作教室に関しては支援してもらっています。それは、モノと指導者を支援してもらっている。でも、これが広がりが出てくると、全部をSOFがそれをやるのか、というと、もうそこで、限界が来るわけです。それは、あくまで、僕らが未熟な部分を指導してもらった、導入モデルとしてはOKなのですが、どこかで、テイクオフして行かなければならない。という流れの中で行くと、逆に僕らはお金を貰っていないですから、はっきり言って、SOFに拘束される必要性はないわけですよ、結論から言うとですね。SOFがもたもたしていると、例えば、今言った、環境社会とか、自然再生とか、ロハスとか、そういうキーワードを並べて行くと、そういうことをやりたい企業は沢山あります。ビジネスモデルとしてです。航空会社もそのひとつでしょう。かと言って、そこに行くとゆがんでいく可能性も当然あるわけですよね、向うはビジネスですから。僕は、SOFはそう言う意味で、すごくいいポジション取りをされているので、むしろ日本財団の方も一杯いらっしゃると思うのですが、今日お話聞いていて、海守は「活動」的なイメージを受けちゃったんですが、その海守よりSOFの方は、「運動」の方に一歩足を踏み入れているんですね。そういう意味では、日本財団グループの中で、SOFの先行している資源、リソースを生かして頂いて、例えば、この環境チケット1枚でも、やはり、シンクタンク的に考えれば色んなことが出てくると思うのですが、是非、これをきっかけに2005年度は皆に求心力を持たせる・・・、自発的に色んなことをやるのですが、これ便利だよね、これがあるから、まとまりがあるよね、という、そういうものを今やっぱりSOFに是非作ってもらいたい。
 
大塚 安心して全国共通に使えるチケットですね。それで、問題のないものを考えてほしい、ということですね。
 
猪澤 そうです。あんまり、企業の利益に拘束されないで、僕らに一番無いものは何かというと、与信力なんですね。地域でいくら頑張っていても、そんな与信力や担保力なんかがあるわけないじゃないですか。少々、評価する人はいたとしても・・・。でも、やっぱり、与信力、担保力のあるところの人が、このチケット1枚バックアップしているだけで、「僕らこういう運動しているけれど、これに参加しない?」と言ったときに、「自分で考えたんだけど、というか、全国でこういう動きがあるんだけど、どうせやるなら、これに一緒に参加しようよ」と言った方が、ね。
 
大塚 SOFの信用を貸していただきたい。
 
猪澤 はい。ということで、凄い、好き勝手なことを言っていますが、アクション、実践をしないと、何ごとも始まらない。海の工作教室を実践したから、今日の場があって、これはまた、続いて行くと思いますが、そろそろ2005年は次のステージに手を打っていただけると、僕らもついて行きます。でも、手を打っていただけないと、多分ついていけないと思います。
 
大塚 ありがとうございました。
 
森野 ネットワークというのは、作るものではなく、出来るものですね。出来ると言うときは知らないもの同志が知り合いになります。そう言うときに、ちょっとしたきっかけがあると、随分と違います。たとえば、この環境チケットですが、知らない人間でも例えば、環境チケットが入って、「えっ、環境チケット持っているの?」というようになると、知らない人間同志が、作る関係は急に信用のあるものに、また親しみのあるものになります。だから、そういう意味でいいますと、猪澤さんがいわれるように、全国的なネットワークができていくようなサポート、それは、情報の提供であったりしますが、そういう役割をシップ&オーシャン財団さんは、多いにされると社会に対する貢献になるのではないかと思います。そういう意味で、情報や連絡などに対するサポートを、今までのスタンスのとおりで、なさっていかれれば、みんな感謝し、嬉しいのではないか、と思います。そうして、その中で、人々の取り組みはどんどん先に行く取り組みもでてくるでしょうし、足場を固める、取り組みも出てくるでしょう。いろいろな進展の具合があります。わが国は自然にしておさまる、という国です。そういう日本人が作り上げて来た住みやすい、健全な日本社会にどんどん近づいて行くといいな、と。その時は海もきれいだし、山もきれいだし、川もきれいだし。おそらく自然は、沢山の非常にいいものをわが国の人間に与えてくれるだろう。そして、そういうことを作り上げて行けば行くほど、地球全体にも貢献していけるようになるのではないかな、と思っております。
 
大塚 有難う御座いました。今日は、本当に自然に常に接していらっしゃる方、裸足で砂浜を歩いていらっしゃる方々からお話を伺えることできました。本当にてらいのない、ストレートで、しかも、真摯な御意見が沢山出たと思います。まとめてしまうのが、勿体無いほど、沢山のいい御意見がでました。SOFに対しての期待もいくつかでました。今日は素晴らしいパネラーの方たちに恵まれて、私のつたない司会でもなんとか終えることができました。この辺で、パネルディスカッションを終わりにしたいと思います。
 
菅原 パネラーの皆様、ありがとうございました。以上を持ちまして、すべてのプログラムを終了致します。先ほどまとめていただきましたように、私共シップ&オーシャン財団はまだまだやって行かなければならないことも多いと思います。本日の会議が特に地域で活動されているおられる方々に少しでもお役に立てれば、幸いでございます。本日ご参加の皆様が、またどこかでお会いできること楽しみにして、閉会にさせていただきます。


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