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第6学年総合的な学習「海を探る」
中央区立月島第三小学校教諭 杉本 茂雄
〈はじめに〉
 昨年度、シップアンドオーシャン財団(SOF)主催のワークショップに参加し、様々な角度から海のことについて学ぶことができました。研修を終えて、子どもたちにこの研修で得られた成果を、何らかの形で伝えることができないか考えました。なぜならば、大型客船や帆船が寄港し、南極観測船「しらせ」が出航する埠頭がある晴海を学区域とする本校の立地条件からして、今まで以上に海を子どもたちにとって、より身近な存在にしたかったからです。それに、一昨年度東京湾の学習をした際、海に絞り込まなかったので、子どもたちは様々な角度から東京湾を調べたため、海の学習が十分ではなかったとも考えました。
 しかし、新たに海の学習を行うには、海を様々な視点からとらえるための現地学習と、子どもたちの学習内容や疑問に的確な指導助言ができる専門家のサポートがぜひとも必要です。そこで自分のアイデアをSOFの酒井さんに伝えたところ、人だけでなく物についてもご協力いただけるとの快諾をいただきました。そこで、細部について打ち合わせを行い、共同で進めることになりました。
 
〈活動計画〉
1. 単元名「海を探る」(28時間扱い)
2. ねらい
・生命の営みの源である海の大切さを知る。
・海について詳しく調べる。
・自分たちが海とどのように関わることができるか考え、行動できる。
・海について調べたことをまとめ発表できる。
3. 活動の概要
・オリエンテーション          1時間
・現地学習事前指導           2時間
・現地学習「干潟の観察」(木更津盤洲) 6時間
・現地学習「磯の観察」(横須賀観音崎) 6時間
・現地学習のまとめと課題作り      2時間
・課題別調べ学習            8時間
・発表会                2時間
・まとめ                1時間
 
4. 活動内容
(1)オリエンテーション
・学習についての全体計画を知る。
・現地学習の楽しさや海の不思議さを話し、学習への興味・関心を喚起する。
・現地学習の8つのグループに分ける。
(2)現地学習事前指導
・SOFスタッフと子どもたちとの顔合わせ
・講師から海の話を聞く。
・数種類の食塩水から、海水の塩分濃度と同じものを選ぶクイズを行う。
・いろいろな方法で、水に空気を溶かす実験を行う。
・現地学習で使用する測量器具を使って、測量方法を教わる。
・学校公開日に合わせ、保護者にも学習内容を知らせる。
(3)盤洲・・・干潟の観察
・中型バス2台で現地へ
(大型バス通行不能のため)
・保護者がボランティアとして参加
・アサリを使った海水の浄化実験をする。
・3つに分かれ測量をし、記録する。
・測量したポイント数カ所を選び観察する。
(表面や地中の様子や生物)
・自由に干潟全体の観察をする。
(4)観音崎・・・磯の観察
・大型バス1台で現地へ
(車中にて講師から観察上の注意)
・保護者がボランティアとして参加
・3つに分かれ測量をし、記録する。
・測量したポイント数カ所を選び観察する。
(海中の様子や生物)
・カニを使った水中酸素消費量の実験をする。
・自由に磯の観察をする。
・班ごとにミニチュア水族館を作る。
・観音崎自然博物館を見学する。
(5)現地学習のまとめと課題作り
・干潟と磯の様子の違いをワークシートにまとめる。
・海について調べることを決める。
(グループ、個人どちらでも可)
(6)課題別調べ学習
・区の図書館で参考図書を探し借りてくる。
・インターネットで調べる。
・講師への質問を書く。
・質問を基に講師と相談し、課題にあった図書を用意する。
・講師に質問する。(1回来校)
・調べたことをまとめる。
・発表原稿を作り、発表練習をする。
(7)発表会
・前後半に分け、ポスターセッション形式の発表会を行う。(事前に分けておく)
・メッセージカードを使い、発表に対する感想を必ず書いて渡す。
・土曜参観日に合わせ、保護者にも学習の成果を披露する。
・発表終了後、自己評価を行う。
(8)まとめ
・自己評価を発表する。
・SOFスタッフの感想を聞く。
・講師の講評を聞く。
 
〈活動の様子〉
1. 現地学習事前指導
 学校公開に合わせ事前指導を行いました。現地学習をサポートしてくれるSOFのスタッフが全員来校し、子どもたちに海のすばらしさをアピールしてくれました。特に、水に空気を溶かす実験はクイズをしながら実験していったので、子どもたちの中で盛り上がりました。
 測量方法の実習は、少し内容が難しかったので、子どもたちは何のために行っているのか、あまりよく理解できなかったようです。
2. 現地学習
(1)盤洲干潟
 
 
 子どもたちにとっては初めての干潟だったので、見るものすべてが珍しかったようです。見た目何もないような干潟の表面をよく見るとマメコブシガニがいたり、掘ってみるとスナモグリなどの生物が出てきたりして、とても喜んでいました。また、ボランティアとして参加した保護者の方も、初めての干潟の観察をして、その不思議さにびっくりしていました。
 当日は風が強かったのでたくさん砂がとんできて、子どもたちはとても痛がっていました。実踏も風が強かったので、天気の悪いときなど寒さ対策も必要です。
(2)観音崎
 いろいろな海の様子を知るという観点から干潟と磯を選んだわけですが、子どもたちは水がある磯の方がより楽しかったようです。ズボンがびしょぬれになったのにもかかわらず、かまわず海に入っていました。特にアメフラシが気に入ったようで、外敵から身を守るために出す紫色の液にびっくりしていました。
 午後から雨が降ってきたので、早めに観音崎自然博物館に移動しました。タコに触れることができたので、子どもたちはその感触に歓声を上げていました。また、海とは直接関係ありませんが、ミヤコタナゴの復活プロジェクトのビデオを熱心に見ていました。
3. 課題別調べ学習
 現地学習を受けて、子どもたちがテーマを決めました。
○テーマ一覧
・干潟の生物 ・スナモグリの特徴(2名)
・マメコブシガニ ・磯の生物(2名)
・ウミウシ(2名) ・ヒトデ(2名)
・アメフラシの生態
・海の生物(9名) ・シーラカンス
・毒がある動物(4名) ・海の汚れ(4名)
・海藻(4名) ・酸素をつくる生き物(2名)
・カニの特徴(4名) ・世界のエビ
・ピンチになった時、体から液体を出す生き物
・海の中にいるめずらしい生物
・身をかくす生き物(2名)
・海の塩はどこからきたのか(2名)
・海にいるめずらしい生物
 現地学習を生かしたテーマをと考えていたのですが、海ということで子どもたちの興味は大きく広がったようです。講師の福島先生が専門ということがわかったためでしょうか、それとも神秘的なイメージがあったのでしょうか、深海に人気が集まりました。
 テーマが決まったところで、子どもたちにどんなことを調べたいのか書かせ、そのメモを福島先生に見てもらい、アドバイスを受け参考図書を借りました。子どもたちも、自分で図書を購入したり、近くの図書館から借りてきたりしていました。
 まとめの後半で1回SOFのスタッフに学校に来てもらい、直接指導してもらいました。専門的なことを尋ねることができ、子どもたちの学習が深まりました。
 まとめの方法も、どうしたら聞いている人たちに伝えることができるか工夫していました。
4. 発表会
 ポスターセッション方式は2回目なので、子どもたちはどうすれば効果的な発表ができるか心得ています。学校公開日に行ったので、保護者の方たちは子どもたちの研究が専門的なので驚いていました。また、メッセージカードを使い発表を聞いた人は必ず感想を伝えることになっていたので、書かれている一言一言が子どもたちにとっては大きな励みになったようです。
5. まとめ
 自己評価をし発表してから、SOFのスタッフの方人一人に感想を言ってもらってから、講師の福島先生の講評を聞きました。自己評価の資料として、メッセージカードが役に立っていました。
 
〈成果と課題〉
○海洋学者を講師として招くことができたので、子どもたちの疑問にすぐ答えることができただけでなく、学習が深まりました。
○専門家による指導を受けることができたので、子どもたち全員が、海を好きになってくれました。将来の夢は海洋学者という子もいます。
○現地学習では、指導者の数を確保できたので、きめ細やかな指導を行うことができました。
○保護者の負担なしで、十分な現地学習を行うことができました。
○現地学習は潮の具合や天候に左右されるので、その対策をきちんと立てておく必要があります。また、移動時間を考え、学校の実情にあった場の設定をする必要があります。
 
〈編集後記〉
 今回、初めて教員以外の方の実践報告を掲載しました。今後、外部機関との連携が増えてくると思います。ぜひ実践記録をお寄せください。
 なお、一緒に送りましたアンケートヘのご協力よろしくお願いします。 (杉本)
 

 
         


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