日本財団 図書館


資料
「シップ・アンド・オーシャン財団の取り組み」
日本教育新聞、2004.7.16
 
「<<実践報告>>協働のススメ〜教員と海の研究者が二人三脚で進めた海の学習〜」
東京都小中学校環境教育研究会会報 東京の青い空 第29号
東京都小中学校環境教育研究会、2004.7.20
 
「第6学年総合的な学習「海を探る」」杉本 茂雄(中央区立月島第三小学校 教諭)
東京都小中学校環境教育研究会会報 東京の青い空 第29号、2004.7.20
 
「ワークショップ「海に学ぼう」を通して」
文化環境研究所ジャーナル、http://www.bunkanken.com/
文化環境研究所、2004.8.3
 
「千葉県教職員組合 君津支部 第54次教育研究集会 環境部会 講師講評」2004.9.25
 
「海洋教育の普及に向けた実践的取り組みから探る教員と外部機関の有機的な連携」
第18回海洋工学シンポジウム−海に親しむ− 発表抄録集
(社)日本造船学会 海洋工学委員会、2005.1.27-28
 
「総合的な学習の時間への支援 東京都中央区立月島第三小学校との事例」
沿岸域学会誌、Vol.17、No.2、特集「沿岸域と教育(第1弾)」
日本沿岸域学会、2004.12.30
 
活動写真
 
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シップ・アンド・オーシャン財団の取り組み
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東京都小中学校環境教育研究会
2004年7月20日
《実践報告》
協働のススメ
〜教員と海の研究者が二人三脚で進めた海の学習〜
財団法人シップ・アンド・オーシャン財団海洋政策研究所 酒井英次
 我々は教育支援の初心者である。まして、学習計画を学校と一緒に組み立てるなんて、これまでに行ったこともない。そんな我々が中央区立月島第三小学校の総合的な学習の時間に参加したのは、今年の4月末から6月初めのことである。この2ヶ月を振り返り、教育の支援は“する側”と“される側”の連携があってこそ実を結ぶものだということを実感している。だから“協働のススメ”なのだ。
 私たちが目指したのは、既存のプログラムや教材を授業の中で活用して貰うといった、一方通行の支援ではない。1学期の総合的な学習の時間25時間の枠を、学校と我々で一緒に組み立て、進めてみようというスタンスである。具体的には、身近な東京湾について調べながら、海の大切さを知り、自分たちと海の関わりを考えて行動できる力を養うようなプログラムを創り上げるという協働作業である。このような場は、教育支援を行おうする外部機関にとって問題の本質を知ることのできる絶好の機会になる。学習内容の詳細は杉本教諭の報告をご覧頂くとして、ここでは学校と外部機関との連携という視点から、今回のケースを紹介させて頂く。
 海の業界には、もっと子ども達に海のことを知ってもらいたい、という共通の願いがある。そのため、教育支援の際には「学校でもっと海のことを教えるべきだ!」などという一方的な思いをつい抱いてしまいがちだ。自己弁護になってしまうが、これはある程度仕方ないと言えるだろう。なぜなら我々は得意な分野のことしか伝えられないし、そもそも我々が行う教育支援という行為自体も、業界への理解促進のための手段という位置付けで予算が組まれているからである。しかし、そのような一方的な姿勢で作成された副読本や教材、プログラムといったものが、どうやら学校のニーズに合致しないようだということに最近ようやく気付いてきた。よく考えてみればごく当たり前のことである。
 これまでの取り組みは、学校側(利用者側)の視点が加味されない、言い換えればマーケティングが十分に行われていなかったことに問題があったのだ。このような反省を踏まえ、今回は学校のことを理解することからスタートした。正直なところ、我々は学校教育の現場を知らない。教員にして見ればごく当たり前のことでも、我々には「へぇ!」なのである。例えば、学校の1日の流れや1年の暦の流れから、何を外部機関に望んでいるのか、どういう考えで学校教育を進めているのか、授業のシステムはどうなっているのか、地域によってどのような違いがあるか、意志決定の仕組みはどうなっているか、等々挙げればきりがない。しかし学校との協働作業を通して、我々にも、“なるほど学校とはこういう論理で動いているのか”、という点が徐々に見えてきた。一方で、今回は学校側も我々のことをよく理解してくださったようだ。双方の考えにギャップが無い関係を築けたので、意志疎通は至ってスムーズだった。
 我々は、今回の支援にあたって以下の基本理念を掲げた。
(1)フィールドに出て実物に触れながら楽しく学べる機会を提供すること。
(2)濡れる汚れるを前提に、自分の感覚をフルに働かせて感じてもらうこと。
(3)海の大切さを理念ではなく実感として気付いてもらい、持続可能という考え方についての理解を深めること。
の3点である。これに、学校から提示された「学習のねらい」を照らし合わせ、それを充たす学習メニューをディスカッションしながら決めていった。学習期間は4月末から6月第2週までの約2ヶ月で集中的に行うこととし、その間にオリエンテーション、海のフィールド実習2回(磯と干潟)、調べ学習、発表会が組み込まれ、さらにフィールド実習では7つのメニューを用意したから、その準備は大変だった。しかし、楽しそうに学習活動を行っている子ども達の姿を見ていると、そんな苦労は忘れてしまう。まして2ヶ月も学習を共にすればお互い打ち解け、成果の検証など堅苦しいこと抜きに子ども達の反応に一喜一憂しているから面白い。
 一連の学習を振り返れば、っまらないと途中でサジを投げた子どももなく、事故もなく、予定した内容は全て行うことができたので、学校側の評価はさておき、とりあえずは及第点と自己採点している。我々は教育の専門家ではないので、提供した内容が学習にどう役だったかは評価する術を持っていない。これについては継続して担当教諭と議論する必要があろう。また今後検討すべきこととして、今回のように対象校を絞って質の高いサポートを行うのが良いか、省力化とコスト削減を図りなるべく多くの学校に対応するのが良いか、という課題がある。今回は初めての試みだったので、2回のフィールド実習、研究者(講師)とスタッフの確保、教材の準備などフル体制で対応したが、毎回これ程のマンパワーと費用を割くのは困難である。しかし、すでに中身が固まっているカリキュラムの中の1時間だけを任されるよりも、手間はかかるが全体へのサポートの方がやり甲斐が感じられるのも事実である。それゆえ支援内容の質と継続性の確保とのバランスは大変頭を悩ませる課題である。
 今回の活動を通して、学校が望んでいることに応えるためには、海を教えることができるだけではなく、海を学ぶことで○○の力を養うことができる、という視点が必要であることを再認識させられた。これは学校側のニーズと協力機関側のシーズとが相容れるように調整するプロセスに、いかに時間を割くかがポイントであろう。このような連携を進めていく中で、外部機関のサポートの意義がより明確になれば支援活動も活性化し、学校だけでは実現できないような学習機会の門戸も広がってくると思う。そのためにも、手間はかかっても地道に連携関係を構築する協働のアプローチが求められるのではなかろうか。
 今回は、我々もいろいろ勉強させていただいた場であったため、支援というよりもギブ・アンド・テイクの関係であった。何よりもこのような場を与えて頂いた関祐二校長、休日や夜遅くまで我々にお付き合い頂き、我々と二人三脚の取り組みを進めて頂いた杉本茂雄教諭と壼坂憲司教諭に、この場を借りて心から御礼申し上げたい。


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