日本財団 図書館


3-3 APEC第3回統合的海洋管理フォーラム
(1)APEC統合的海洋管理フォーラム(IOMF: Integrated Oceans Management Forum)の概要
 APECはアジア太平洋地域の持続的発展に向けた地域協力の枠組みであり、その中に海洋資源保全作業部会(MRCWG: Marine Resource Conservation Working Group)が位置づけられている。このMRCWGの活動の一環としてIOMF 1が2000年、バンクーバーにおいて開催され、APEC地域における統合的海洋管理のための諸問題について討議された。2002年、キャンベラで行われた第2回フォーラム(IOMF 2)では、主にAPECにおける統合的海洋管理のためのワーキンググループや委員会の設立について検討され、今回行われる標記フォーラムはその第3回目として開催された。本フォーラムでは、APEC各国の関係機関が直面している統合的海洋および沿岸管理について、環境的・経済的側面からの情報交換と討論を行うことが主な目的である。特にAPEC地域における地方組織や民間セクターなど、各主体間の活動や参画について具体的な実例をもとに議論された。
 
(2)これまでの取り組み
 IOMFにおいてこれまで取り上げられたテーマは表−の通りである。
 
表− APEC:IOMFにおける主なテーマ
会合 開催期間 主なテーマ
IOMF 1 2000.12.12-15 APEC地域における統合的海洋管理のための諸問題について
IOMF 2 2002.06.03-07 APECにおける統合的海洋管理のためのワーキンググループや委員会等の組織設立について
IOMF 3 2004.10.18-20 統合的海洋および沿岸管理におけるAPEC地域の地方組織や民間セクターなど各主体間の活動について
 
(3)IOMF 3の概要
 2004年10月18日(月)は「APECにおける海洋関連部門の経済価値について」というテーマでRound Table Discussionが行われた。海洋に関わる経済活動および経済的価値の評価について、APECエコノミーをはじめとする各地域活動主体の現況について報告があり、相互の情報交換が行われた。本会議の主旨とは、海洋関連部門についての経済価値を評価するにあたり、現状の経済データのフレームワークおよび集計方法を再検討すること、また、オーストラリア、カナダ、米国など参加エコノミーの活動を参考に討議することである。各エコノミーが共通で有している課題として、「政策決定に資する情報やデータが省庁間や各部門で十分に行き渡らない」「各エコノミー間でデータの整備方針が統一されておらず、データが存在しているにもかかわらず経済的評価が困難である」「各部門の信頼できる統計が利用できるかどうかはエコノミー間によって異なっている」「違法かつ不明瞭な経済活動が明らかに存在しているが、それらが国民経済計算には考慮されていない」などが挙げられた。
 2004年10月19日(火)はフォーラム・セッション1として「地域における統合的海洋管理の実施に関する諸問題」、また、セッション2「各地域機関は統合的海洋管理に関してどのようにAPECエコノミーへ貢献できるか?」というテーマで議論された。
 セッション1における重要な論点として、海洋管理に関してはそれぞれの地域独自のアプローチが必要であり、APECは地域におけるコーディネータの役割を担い、例えば海洋汚染に関する行動計画や指針を与えることが望まれるという提言があった。すなわち、APECにおける持続可能な統合的海洋管理戦略の策定が必要である。なかでも、生態系や社会的、文化的側面、また、各機関による環境サービスに関する経済的価値評価についても重要視するべきであるとされた。
 セッション2ではUNEP、ASEAN、PEMSEAなどにおける実際の活動事例が報告された。それぞれの地域、プロジェクトにおける計画推進体制や協力体制などについて議論が行われた。国際的機関やNGOをはじめとする各機関および主体間の現状について報告があり、APECとの関係も見据えた統合的海洋管理の実現に向け、各主体が今後どのようにあるべきかについて検討された。例えばASEANはAPECと非常に似通った立場であり、それぞれが関係機関に対して持続可能な政策立案、コーディネータ機能などが望まれる。また、PEMSEAは関係政府や地域の経済主体、調査研究機関などの協力体制を構築している。APECにおいては持続可能性および統合的海洋管理に関しての啓蒙や調査および各項目設定などについてNGOなど関係各機関がそれぞれサポートすることが必要である。
 10月20日(水)はセッション3が開催され、「持続的な海洋管理と保護に関してAPECはどのように貢献できるか?」というテーマについて議論された。本セッションでは水産貿易、サーモン漁の持続性、海運や海港などの事例が報告され、それぞれの観点から環境保全や統合海洋管理、持続可能な海洋に関して検討された。そのなかでAPECは地域コミュニティやエコノミーに対して、それらが有する地域的課題について指導・解決を促し持続可能性を促進することができる重要な役割を担う位置にあり、そのためにはさまざまな成功事例などの各種情報を収集し調整機能を発揮しなければならない。その意味で比較的任意の立場であっても、APECの調整によってフォーラムや議論の場が設定されることも有益である。また海事関連分野においては、特に発展途上のエコノミーに対する技術援助や協力は重要であり、APECの活動のひとつとしても必要なものであろう。APECは国際的でローカルな立場で区切られている海洋を統合的に捉えなければならず、戦略的な指針や方向性を練った上で各地域のプロジェクトを地域的な視点から効果的に推進することが必要である。
 
(4)まとめ
 今回、海洋部門の経済価値評価というテーマでRound Table Discussionが開催された。この会議ではAPECにおける主なエコノミーの海洋部門の経済評価について、その現状と課題が報告された。経済的評価はもとより、海洋関連分野からの視点での経済指標やデータ分類などが、国レベルであっても未整備であることが明らかになった。今後は基本的な海洋関連データの定義や利活用しやすい形式での蓄積が急務である。
 また、本フォーラムの3つのセッションでは統合的海洋管理についての諸問題、APEC各エコノミーおよび地域機関の位置づけや役割などについて、具体的な事例報告とともに検討された。各エコノミーおよび地域機関それぞれが地域独自の海洋環境、社会背景、経済状況を考慮した上で統合的海洋管理へアプローチすることが必要であり、APECはそれらに対するコーディネーション機能、指導的立場をよく発揮して持続的発展に貢献するべきであることが提言された。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION