皆さんはアンゴラという国をご存知でしょうか。アフリカの南部西側、大西洋に接した長い海岸線を有する国で、面積は日本の三・三倍、人口約一、五〇〇万人弱の国です。一九七五年十一月十一日に旧宗主国ポルトガルから独立して以来、二〇〇二年四月の停戦合意まで二十七年間に及ぶ内戦を経験し、石油、ダイヤモンド等の豊富な天然資源に恵まれているにもかかわらず国は疲弊し続けてきました。世界保健機関（WHO）はこの内戦によりアンゴラの医療施設の六十五％が破壊され、二〇〇一年には生まれた子供の四人に一人が五歳未満で死亡していると報告しています。これは五歳未満死亡率としては世界でもっとも高い値と言えます。

　

　

　WHOは、公衆衛生上のハンセン病の制圧を、人口一万人あたり患者一人以下となったときに達成と定めています。いまだにこの目標を達成していない国がインドを筆頭に世界に七カ国ありますが、アフリカでは、モザンビーク、マダガスカル、タンザニア、そしてアンゴラが含まれます。アンゴラ政府は二〇〇二年末のハンセン病患者数は人口一万人当たり三・五四人と報告していますが、実際の患者数はこれを超えると専門家は考えています。私は昨年の七月二十九日から八月二日の五日間、WHOハンセン病制圧特別大使としてアンゴラを訪問しました。

　私は首都ルアンダから空路約一時間半程、国の中心部のビエ県を訪問しました。ここは内戦の最も激しかった県の一つであると同時に、最もハンセン病患者の多い県の一つでもあり、二〇〇二年末の患者数は人口一万人当たり五・八三人と報告されています。私たちは県の中心都市クイトから更に八十キロほど離れたカマクパという町の病院を訪問しましたが、途中舗装されていない土の道には大きな穴が幾つもあいていて、車での移動は困難を極めました。周辺の畑には数多くの地雷が埋められたままで農作業が出来ないと聞いた時、停戦から日が浅いこの地で生きる農民の苦悩を思い知らされました。病院は予想通り設備・人材ともに乏しく仕事の困難さが想像されましたが、そんな中で海外の若いボランティア医師が現地スタッフと共に頑張っている様子に勇気付けられたものです。

　治療薬MDTの出現でハンセン病は治る病気となり、関係者の努力により患者数がアンゴラでも徐々に減少し始めています。しかし、病気が治っても社会の偏見と差別にさらされる状況に変化はなく、仕事や教育の機会がない等の問題は、病気の治療を進めていく中で同時に解決してゆく必要のある問題です。ハンセン病の制圧を達成できないのはアフリカ大陸で四カ国ですが、実は達成が終わった多くの国々がこの社会問題を抱えています。私は、皆さまにご協力をいただいている募金活動を通じて、社会問題としてのハンセン病を理解していただき、偏見・別の無い社会の実現に向けて共に考え、行動していきたいと考えています。

　

　現在、開発途上国におけるハンセン病回復者自立支援事業における「（財）日本吟剣詩舞振興会」を通じてご寄付いただいた額は、二、六九五、四三九円（三月末日現在）となっております。

　ハンセン病回復者自立支援募金は、本誌最終頁に貼付の「専用振込用紙」をご利用いただき、最寄の郵便局からお振込ください。送金手数料はかかりません。皆さまの温かいご支援をお願いします。